日本、オーストラリア、マレーシアと続いた終盤のMotoGP3連戦も終わりました。秋晴れの日本から極寒のオーストラリア、そこから灼熱のマレーシアと、だれがこんなムチャなカレンダー考えてんの?ってスケジュール、ライダーをはじめ、GP関係者ってホントに大変ですね……。
そのマレーシア、勝ったのはドゥカティのアンドレア・ドビツィオーゾでした! GP新記録というシーズン9人目のウィナーはドビだ、ってずっと言われていましたが、ついにやりました。
思えば今シーズン、いよいよドゥカティがケーシー・ストーナー以来6年ぶりの優勝を飾るかもしれない、といわれてもうシーズン終盤。開幕戦では2位と上々の滑り出しをみせながら、第2戦アルゼンチンでは、よりによってチームメイトのアンドレア・イアンノーネに当てられて転倒(しかも最終ラップの最終コーナー!)、第3戦アメリカズでは、今度はダニ・ペドロサに当てられて転倒。マシントラブルもあったし、転倒もあった、本当にアンラッキーなシーズンになってしまいました。
そうこうしているうちに、ドゥカティの6年ぶりの優勝はイアンノーネにさらわれ、不運は続くよドビ……と思われながら、ひたむきに、心折れずにがんばりました。マシンもどんどん戦闘力を上げ、これまでの「直線番長」的な扱いから、デスモセディチ=晴れでも雨でも速いマシン、という声も聞かれるようになりました。そして、ついにその時がやって来たんです!
雨でも強いデスモセディチ!
3連戦の最終戦となったマレーシアGPは、ウィーク初日から雨に翻弄されたレースとなりました。初日は豪雨のためにmoto2の走行が中止されたり、MotoGPの走行も途中で中止されたり、予選はようやくできたものの、路面を貼り替えたセパンサーキットに誰もが手を焼くなか、決勝レースを迎えることになったのです。その中でも、ドビはポールポジションを獲得、シーズン中盤ぐらいからささやかれている「ドゥカティドライでもウェットでも速い説」を実証してみせました。
決勝日も、moto3クラス終了直後に豪雨となり、moto2はウェット、そしてMotoGPクラスもマシンがグリッドに着いたとたん豪雨となってスタートディレイ、やや止んでのウェットレースへ。これはレース中に路面が乾くほどじゃないな、っていうコンディションでのレースとなりました。
ポールポジションのドビは好スタートを見せ、序盤からいい位置でレースをスタート。このレースから復帰したイアンノーネが休んでる間のフラストレーションを晴らすような快走を見せてバレンティーノ・ロッシを抑える中、ドビはやや後方からトップ争いを伺います。いい位置、いい位置。トップ2に離されない位置で周回を重ねていたドビは、レース終盤にペースを上げると、イアンノーネをパス、ロッシを追い詰める中、ついにロッシがブレーキングミスでオーバーランしたところを狙いすましてパスし、トップに浮上。ここから残り5周の走りが素晴らしかった!
追いすがるロッシも途中であきらめたかのようなペースでぐいぐいロッシを引き離し、ついに2009年のイギリスGP以来、7年ぶりの優勝を飾ったのです! そして、あの雨の走りは実は、本人も自覚していたパフォーマンスだったんです。
「ドライだと、勝つ可能性は低いと思うよ、ほぼ不可能。でも雨が降ったらチャンスはあるかな」
実は、前戦オーストラリアで勝ったカル・クラッチローと同じく、もてぎではドビツィオーゾにもインタビューできていたんです! その時に『今シーズン9人目のウィナーになる、って言われてるけど、どーお?』って水を向けた時の答えがコレでした。
今シーズン、タイヤとエレクトロニクスのレギュレーションが変わり、シーズン序盤から苦戦が続いていた、というドビ。特にタイヤの特性の違い、タイヤ特性のシーズン中の変更が、デスモセディチのパフォーマンスを発揮することを妨げていたみたいなんです。
「今年は、シーズンオフと序盤はいいフィーリングだったんだ。開幕戦は2位になれたし、そのあとの数戦はアクシデントやトラブルで結果を出せなかったけどね。パフォーマンスが安定しなかったのは、ウチはエレクトロニクスよりもタイヤの変更が大きかったかな。ようやく新しいタイヤに慣れたと思ったら、違うタイヤが持ち込まれたりね」
誰にぶつけられてさ、とかマシントラブルでさ、なんて泣き言を言わないドビ。ファクトリーライダーである以上、常に優勝争いをしなきゃ、それはいい結果じゃない、ていう考えのようです。それでも、ずっとトップグループに迫りまくったシーズンでした。
ほんの少し、がいくつかある。その積み重ね
「そうだね、トップチームに接近できているのはポジティブなことだと思う。あと少し、何かが足りない、それはいろんな要素がすこーしずつ足りない、その積み重ねがライバルとの差になっているんだ。でもその差は確実に詰まっていると思う」
そんな中でも、デスモセディチはライバルメーカーが恐れるほどのパフォーマンスを見せ始め、ついにイアンノーネが初優勝を挙げるのだ。
「ウチの強みは、やはりアクセラレーション。ブレーキングもアドバンテージだと思うんだけど、あとはコーナリング(=Change Directionと言ってました)。ここを一生懸命向上させているんだ。2015年から16年に関しては、実はマシンは大きな変更がなくて、小さな変更を積み重ねてる段階。もうビッグチェンジしなくても優勝を狙える位置に来ていると思う」
実は、いつかケビン・シュワンツさんと話している時に、GPで一番のブレーキングの名手は、って聞いたことがあったんです。すると、ケビンは「ドビツィオーゾ!」って即答。マルケスが10連勝してた2014年かな、そのマルケスでもロッシでもなく、ドビがいちばんだ、と。トップスピードが抜きん出ているマシンで、ブレーキングの名手だけに、もてぎはチャンスなんじゃないの?っていうのが、ドビへのインタビューの締めになりました。
「もてぎは僕の好きなコースのひとつなんだ。マシンのキャラクターにも合ってると思う。ただし、ストップ&ゴーなだけじゃなくて、ターニング(開けていくコーナー、みたいなニュアンス)も多いから、そこが難しい。ドライだとタイヤも合せるのが難しいから、雨だったらね……」
と、雨も多い日本GPに含みを持たせたんだけど、もてぎではドライのレースで2位表彰台(でもコレはロッシとロレンソが転んでの順位)、フィリップアイランドでは4位、そしてセパンでの優勝!となるわけです。雨だったら行けるかも、って予感があったんでしょうね。それほどセパンのラスト5周は、ロッシも手を焼くほどのスーパーラップでした!
さぁ、GPもこれで最終戦を残すのみ。MotoGPは、もてぎでチャンピオンを決めたマルケスが『残りは思いっきり行くよ』と宣言して、2戦連続転倒リタイヤ。これね、もちろんもてぎでタイトルを決めたからの捨て身のアタックだったんだろうけど、もし、もしね、もてぎでロッシが転んでなくて2位かなんかでフィニッシュしていたら、どうなってたんだろう……って思うんですよね。以下、あくまでも妄想ですよ?無駄だけど計算してみました。
もてぎ マルケス優勝 ロッシ2位(←コレが妄想)
フィリップ マルケス転倒 ロッシ2位
セパン マルケス転倒 ロッシ2位
なんてことになってたら、最終戦を残し両者のポイントは、マルケス278P、276P! その差2Pで最終戦へ! だったんだね……ま、言っても詮ないけど、もんんんのすごく盛り上がる最終戦になったでしょうねー! バレンシアの大騒ぎが目に浮かぶようだなぁ……。
さて、その最終戦「MOTUL バレンシアGP」は11月13日に開催されます。大変革のシーズンの大トリを飾るのは――?