この週末は、全日本ロードレース第6戦「もてぎ2&4レース」が行なわれました。4輪のスーパーフォーミュラとの併催で、開幕戦がJSB1000だけの開催だけだったのに対し、このもてぎ大会J-GP2クラスだけの開催。酷暑のなか、台風通過で荒天が心配されていたんだけれど、土曜の公式予選は快晴のち豪雨、ほぼ曇りと雨で湿度むんむんのなか、なんとかドライコンディションで行なわれ、日曜も雨予報がスカッと外れて、爽やかな晴天のなか、決勝レースが行なわれました。
レースは、予選でフロントローを獲得した生形秀之(エスパルスドリームRT)、浦本修充(チームカガヤマ)、関口太郎(ミストレーサ・ハルクプロ)の3人がレースをリード。スタートから浦本が前に出て、関口、生形が続く展開。すぐに関口がトップに立つと、生形と浦本が背後につけ、後方から予選4番手の水野涼(ムサシRTハルクプロ)もトップ集団に加わって4台の先頭集団が形成されます。
ここから水野が先頭に立ったり、関口が盛り返したりで、レース折り返しあたりで生形がトップに浮上。今日は路面温度50度越えで22周と長丁場。生形がここまで前に出なかったのは、この長い距離を持たせるレースをしていたからでしょう。
そこからは、生形-関口-水野-浦本の順で、間隔が縮んだり開いたり。最終的には、何度もスリップに入られ、並びかけられても、生形が関口の追撃を許さず、逃げ切って生形が優勝! 2位は最終ラップに関口をかわした水野、3位に関口、4位は先頭集団にピタリ追走していたものの、最後まで届かなかった浦本が入りました。
2010年のJ-GP2クラス創立からエントリーしてきた生形は、ここまでのランキングで言うと、10年:3位、11年:3位、12年:2位、13年:2位、14年:2位、15年:2位と、見事にチャンピオンと縁遠いキャリアを続けてきました。
そして優勝に関して言えば、2013年6月の第4戦筑波大会以来、なんと3年2ヵ月ぶり! コンスタントに上位でフィニッシュするけれど、悪く言えば勝ちきれない--そんな生形の歓喜の優勝。今シーズンも、開幕戦筑波では事前テストで転倒して6/2位でシーズンインし、続くもてぎでトップ争いをしながらのトラブル、菅生ではトップを走っていて失格(スタート3分前までにグリッドからスタッフ退去がなかった)と、アンラッキーにもほどがあるレースをしてきた生形。もてぎ-菅生-もてぎと3レース連続ポールポジションを獲ったように、今シーズンはいつにも増してスピードを見せていただけに、やっと来たか、の優勝でした。
「長かったです、ここまで。冗談で勝ったら泣いちゃうかも、なんて言っていたら、本当に涙が出てきた、うれしかったですね。たくさんの人に支えてもらって、勝つことがその恩返しになるので、しばらく勝てていなかった分、応援してくれた皆さんに報告したい。レースは、(関口)太郎くんも(水野)凉もいいペースで走っていて、スピードもあって厳しかったけど、最後はうまくコントロールできたかな、と思います。3連続ポールで、やっと勝てた。もてぎの前から『残り3レース全部勝つ』って言ってたので、まずひとつ実行できた。これを続けていきたいですね」と生形。(MFJ SUPERBIKEより)
生形秀之というライダーと知り合って、もう15年になります。ホンダでGP125を走っていて、カワサキでST600、そして「エスパルスドリームレーシング」を立ち上げた後、J-GP2にスイッチしたのが2010年。125を走っている頃から「表彰台に立ったらお祝いはフルーツ盛りが欲しい」って、なかなか贈る機会は来なかったけれど(笑)、世界GPにもワイルドカード参戦したし、鈴鹿8耐にも出た。何かを変えようと、登録名を「オガタヒデユキ」ってカタカナ表記にしたこともあったね、オガちゃん。迷ってたんだな、あの頃は(笑)。
寡黙で穏やか、闘志はずっと内に秘めていて、無口でクール。レース中は闘志むき出しだけれど、ファイトを前面に走るタイプではない。毎年のように最終戦でチャンピオンを逃して、それでも「来年こそやりますよ」って、静かにニヤッと前を向く。毎年くれる年賀状には、いつも「今年こそ」って記してあります。
そこがもどかしかったし、けれど、それが「人間オガタ」のよさで、そこがたくさんのファンを惹きつける。
来年の2月にはとうとう40歳。6月の菅生大会、失格騒ぎの混乱が収まったあと「残り、全部勝ちます」といったあの言葉には、今シーズンだけで終わる約束じゃないはずです。9月の岡山、11月の鈴鹿、そして2017年も勝ち続けて、40歳の初チャンピオンなんて面白い。オガちゃんだから、それが可能なんじゃないか、って思えるなぁ。
J-GP2クラスは、ここまで4連勝を飾っていた浦本が今シーズン初敗北! ランキングは変わらず浦本(118P)-関口(94P)の1-2に、3番手に水野(68P)が、4番手に生形(65P)が上がってきました。オートポリス大会が中止になったことで、残り2戦。シーズン3人目のウィナーが出るのか、それとも--?
写真/赤松 孝