速報を流した通り、2016年の鈴鹿8耐は、ヤマハファクトリーレーシングの2連覇、最多周回数記録の更新、2年連続ポールtoウィンという形で終わりました。
さぁ鈴鹿から帰ろう、と思ったのですが、どうにもこうにも大渋滞(笑)。メディアセンターから駐車場へ行くにも大渋滞なので、ここはひとつ、記者魂を発揮して8耐を振り返ってみましょう。
もちろん、レースにはたくさんの視点やドラマがありますから、ここではまず優勝争いに絞って、長ーい原稿を書いてみましょう(笑)。
ちなみに今年はお客さん、カナリ入ってましたね。鈴鹿サーキットの発表によると
木曜日:1万人 金曜日:1万1500人
土曜日:3万3500人 日曜日6万9000人
4日間合計12万4000人!
うおぉぉ、すげぇぇ、って、まぁ、主催者発表ですから。
その4日間を通じて、雨もまったく降りませんでした。土曜まではほどほどの暑さで「あれ、今年は意外とラクだね」なんて関係者とかメディアとかで言い合ってたのに、きょう日曜にズバッと晴れました。気温は32.1℃、路面温度は58℃まで上がったそうです。気温、路面の照り返しがあるからもっとあったように感じましたね。
決勝レースは、スタートでチームカガヤマの清成龍一がスーパーダッシュを見せてホールショットを獲ると、そのままずっとレースをリードするシーンで始まりました。清成はダンロップタイヤを履くGSX-R1000で、言っちゃあなんですが、ダンロップタイヤはこの10年、鈴鹿8耐で優勝できていないこともあって、どうしても不利な印象があるんです。
なのに、この清成のスーパーダッシュ! 清成のリードは、18周目のシケインでヤマハファクトリーレーシングの中須賀克行にかわされるまで続くことになります。
しかし、ここまでの時間帯で、早くもひとつめの波乱が起こります。なんと、優勝候補の一角に挙げられていたTSRホンダのドミニク・エガーターが、7周目のMCシケインで転倒! わずか15分ほどで、去年の2位のチームが大きく後退してしまいます。
中須賀がトップに立ってからの時間帯は、ジリジリと清成を引き離し、そこに後方からハルクプロホンダの高橋巧が迫ってきます。高橋は、今シーズンの全日本ロードレースでもCBR1000RRの2016年仕様(=オーリンズサスペンション+ニッシンブレーキ)をうまく仕上げ切れておらず、この8耐でも勢いは今ひとつ。けれど、決勝になると上がってくるのはさすが! 一発のタイムは出なくても、ロングランできる車体にキッチリ仕上げていたのです。
ほどなく、各チーム1回目のピットイン。ここでは、昨年のこの時間帯のように、どこかのチームがメいっぱい引っ張っての燃費走行、という局面はありませんでした。
しかし、2番手を走っていたチームカガヤマが、タイヤ交換に手間取り大きくタイムロス。リアスタンドのステーが破損したようで、そのためフロントもうまく上がり切らず、あわやピットレーンでマシンが倒れてしまいそうになりながら、なんとか前後タイヤ交換を済ませました。これで6番手あたりまで順位を下げてしまったんです、もったいない。
2スティント目には、中須賀からマシンを受け取ったアレックス・ロウズが快走。実はロウズ、昨日までの予選やフリー走行では、危なっかしいほどアグレッシブな乗り方をすることがあって、私はこのチームのキーマンになる、と考えていました。
けれどロウズは、昨日までとうって変わって、コンスタントに8~9割の力で走るような、実に耐久向きの走り方を披露。これは驚きでした!
2番手につけたのは、2スティント目でするすると順位を上げたハルクプロのマイケル・ファン・デル・マーク。3番手にはヨシムラのジョシュ・ブルックスがつけますが、ブルックスはタイヤチョイスをミスし、ペースを上げることができません。2スティント目の始めごろには13秒ほどだった差が周回ごとに開き、わずか10周で25秒あたりまで広がってしまいました。ここも、今日のレースのポイントのひとつですね。
この時間帯には、チームカガヤマにもうひとつアクシデントが発生。加賀山の走行中、フロントタイヤがスローパンクチャーしたようで、S字でストップ。ぺこぺこになったフロントタイヤで、東ショートカットでピットへ戻ることとなります。開始2時間で、去年の2位と3位のチームが大きく後退してしまうなんて! これで、ヤマハを追うチームは、ハルクプロ、ヨシムラスズキとチームグリーンだけとなり、2回目のピットストップを終える頃には、ヤマハ、ホンダ、カワサキ、スズキの順で4台だけが同一周回。よほどのアクシデントがなければ、優勝の行方もこの4チームに絞られたも同然、となったのです。
しかし、そんな展開になりはじめた3スティント目の終盤、今度はハルクプロに災難が降りかかります。ライダー後退を目前に控えたニッキー・ヘイデンが、なんと60周過ぎにストップ! なんとマシントラブルに見舞われ、そのままゼッケン634がコースインすることはありませんでした。
レースはこのまま、#21ヤマハファクトリー、#87チームグリーン、#12ヨシムラスズキの順で周回を重ね、ざっくり言うとこのままの順でフィニッシュ! いや、ざっくりすぎますが、展開はヤマハファクトリーが毎周少しずつ2番手以下を引き離し、2番手と3番手が間隔を詰めたり広げたり。途中、3時間目ごろと5時間目ごろには、レオン・ハスラムと芳賀紀行の名勝負がありました! しかし、徐々にチームグリーンがヨシムラを引き離し、このハスラムvs芳賀の対決でハスラムが先行したことが、チームグリーンの2位獲得につながったと思います。
最後は2番手にほぼ1周近くの差をつけて、ヤマハファクトリーが2連覇を達成! 雨も降らず、セーフティカーの介入が1度もなく、フルコンディションで218周を達成し、2011年にTSRホンダの秋吉&伊藤&清成が作った217周という最多周回記録を塗り替えての完全勝利となりました。
2位に2009年以来のカワサキ勢の表彰台となるチームグリーン、3位に入ったヨシムラは2年ぶりの表彰台を獲得。エースの津田拓也は、これで3度目の表彰台です。
ヤマハの横綱相撲、カワサキの予想を上回る躍進、そしてノントラブルながら力負けを喫したヨシムラ--。8耐が終わった今から、2017年の鈴鹿8耐へ向けてのカウントダウンが始まるのです。大きな事故や大きな怪我がなかった、クリーンな鈴鹿8耐でした!
■2016年鈴鹿8時間ロードレース 公式リザルト
優勝 ヤマハファクトリーレーシング YZF-R1 218周
2位 チームグリーン ZX-10R 218周
3位 ヨシムラスズキ シェルアドバンス GSX-R1000 217周
4位 YARTヤマハ オフィシャルEWC YZF-R1 214周
5位 MotoMapサプライ GSX-R1000 214周
6位 チームカガヤマ GSX-R1000 213周
7位 EVA トリックスター ZX-10R 213周
8位 ホンダ チームアジア CBR1000RR 212周
9位 ミストレーサwith ATS CBR1000RR 212周
10位 au&Teluruコハラレーシング CBR1000RR 212周
<文責/中村浩史>
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