泥好きライダーのための超ハイグリップタイヤは公道不可のスペシャル品!

これまではリアタイヤしか発売されていなかったIRCのハードエンデューロ専用タイヤ「iX-09W GEKKOTA」に、ついにフロントタイヤが登場。滑りやすいガレ場、岩盤などでも強力なグリップ性能を発揮するスペシャルタイヤだが、公道走行は不可となっている。

画像1: 泥好きライダーのための超ハイグリップタイヤは公道不可のスペシャル品!

この「GEKKOTA(ゲコタ)」はエンデューロ用のコンペディションタイヤ。エンデューロではたいていの場合、様々な路面状況がコースの中にあるのだが、それを一本のタイヤでまかなわなければならない。特にハードエンデューロと呼ばれる過酷なレースでは、ヌタヌタの泥道、ツルツルの硬質粘土とかフカフカのサンド、岩場やウッズの丸太越え、ステアケースなど過酷な路面状況のすべてが含まれていたりする。同じエンデューロでも、モトクロスコースを使うレースとはかなり違う。

画像2: 泥好きライダーのための超ハイグリップタイヤは公道不可のスペシャル品!

ゲコタはそんな路面で特にすばらしい走破性、トラクションを生むのが魅力。ハードエンデューロを好むライダーには絶大なる人気を得てきた。ただ、これまではリヤタイヤのみのリリース。多くのライダーはフロントにトライアルタイヤを組み合わせるなどしてバランスを取っていたのだ。だが今回、そんなゲコタのフロントタイヤが登場した。

サイズは80/100-21のワンサイズ。リヤも110/100-18だけだから、それに合わせた軽〜中量クラスのモデルだけを狙った設定だ。そもそもこのゲコタが革新的なグリップ力を発揮するのは、トライアルタイヤに使用されている極めて柔軟なラバーを、シーランド比の大きなタイヤに使用したことだ。トレッドにあるブロックを指で簡単に捩じれるほど柔らかい。サイドウォールやトレッド面の剛性はトライアルタイヤよりはずっとコシのあるものだが、それでもラバーはまるっきりトライアルタイヤのそれだ。

画像3: 泥好きライダーのための超ハイグリップタイヤは公道不可のスペシャル品!

ビードストッパー装着ホイールを前提としているのは明らかで、0.7〜1.0㎏ー㎝で走った時のグリップ力はタダモノではない。空気圧が高い時や硬い路面ではブロックが捩じれているのを感じるが、ソレ以外の路面では全てタイヤ全体で路面の起伏に絡み付くような感触でグリップする。ブロックで路面を噛むというより、まとわり付く感じだ。

だからタイヤを空転させずにV字溝から車体を脱出させたり、滑り落ちずに斜めに乗り越えたりできるからすばらしい。前後輪のバランスはさすがに最高だ。また丸太を越えるようなときにフロントタイヤは、トライアルタイヤのようにふるまうので弾かれたりしない。

画像4: 泥好きライダーのための超ハイグリップタイヤは公道不可のスペシャル品!

丸いゴロ石が浮いている坂を登るようなときにはそれこそブロックのひとつひとつが石に絡み付き、急勾配での最発進や低速での登坂を容易にしてる。また、低速での下りなどでもハンドルが取られ難く、落ち着きがいい。

画像5: 泥好きライダーのための超ハイグリップタイヤは公道不可のスペシャル品!

まるでイイことだらけのタイヤのようだが、ウィークポイントもある。それはライフの短さ。とくにリアは、無理に硬い路面で速度を上げて走るとブロックのカドがすぐに無くなる。そのまま走り続けると、根元にクラックが入るかもしれない。レースや練習走行では回転方向を換えながら使い切る事もできるだろうが、決してライフの長いタイヤではない。ただ、リヤに比べれば、フロントはかなり持つ。同社の公道用トライアルタイヤの「ツーリスト」に近いライフがあるかもしれない。

現在のハードエンデューロの世界において「極悪路用」として間違いない実力を持った、要注目のタイヤだ。

(写真:南孝幸 テスター:宮崎 敬一郎)

画像6: 泥好きライダーのための超ハイグリップタイヤは公道不可のスペシャル品!

※今回の記事は、オートバイ2016年に掲載された記事を加筆修正したものです。

オートバイ 2016年7月号 [雑誌]

モーターマガジン社 (2016-06-01)

This article is a sponsored article by
''.