独創のCP3エンジンとスリムな車体が生み出すイキのいい走りで、デビューと同時に大ヒットモデルとなったヤマハのMT-09。その走りをもっと上質にブラッシュアップしてくれるのが、ワイズギアとKYBが共同開発した、このスペシャルサスペンション。乗れば誰でも違いが分かる、というこのサスペンションを早速試乗チェックしてみよう!
走りだせばすぐに分かる威力バツグンのサスペンション
MT-09は大人気のスポーツバイクだ。スロットルひとひねりで簡単にパワーリフトするような強烈な瞬発力を発揮するエンジン、軽快でキビキビフットワークするハンドリングなどが大きな魅力だが、それでいて扱いやすく、ストリートから峠道、ツーリングと使い方を選ばないバイクだ。
ただこのMT、デビュー当初から好き嫌いが分かれる項目に足回りがある。街中での扱いやすさや、低中速域での快適さを重視した非常にソフトなサスで、アクションをするときにリズムがとりやすかったり、軽快な身のこなしに貢献もしているが、スポーティな走りでリーンしているときは、大きめの段差や波状のギャップが苦手。簡単に跳ねる傾向があるのだ。このままでも、かなりハイレベルなスポーツライディングまでこなせるが、もっと外乱に強い足回りを求める声も多いのだ。
そこで、今回ワイズギアがKYBと共同開発したのがこの前後サスペンション。フロント減衰は伸び側と圧側ユニットを左右で分け、スプリングを左右に装備(ノーマルは片側)。それにインナーチューブを、硬くて滑りのいいDLCメッキ処理とした。リアの構造はほぼ同じだが、内部の細かなパーツが違い、より念入りなセッティングが施されている。前後サスとも少しだけ強いバネに換装されており、減衰が調整でき、その調整幅も広く細やかである。また、フリクションは3割ほども少なくなっている。
ルックスでは、フォークはブラックを基調とし、リアショックはスプリングをオレンジとしている。控えめと言えば控えめだが、走ったときの違いは歴然。MT本来の魅力はしっかりとキープし、程よく大きめのピッチングを残すことで、イージーな操作で実現するフットワークの軽さを阻害してない。しかし、スタビリティは格段に向上している。
今回の試乗コースには、STDのMT-09では、バンクしたまま乗り越えると必ずラインをアウトに大きく変えてしまう段差や、飛ばしているとスロットルを開けていられなくなる波状のギャップが連続するところがある。こういったところでの走破性の違いが歴然としているのだ。
前述の段差でもラインを変えず、衝撃を一発で収束させ、ギャップの部分ではさらにスロットルを開けられる。MT-09のオーナーならわかってもらえるような例を出したつもりだが、本来の魅力は、そんな走りができる足回りが生む、日頃からの安心感。スタビリティのよさが生む信頼性だ。
スポーツライディングだけでなく、ツーリングや街乗りでも威力抜群。乗り心地のよさは一切スポイルせず、むしろいい。プライスも控えめで、誰でも扱えるセッティング表付き。フロントだけやリアだけを購入、装着した場合のデータも付く。いたれりつくせりの魅力的なサスだと言っていいだろう。
(宮崎 敬一郎)
開発者に聞く
このサスペンションは、MT-09の走りを高めることで、MT-09のファンをもっと広げよう、という趣旨で開発がスタートしました。多くのユーザーの方がMT-09をツーリングに使われていることや、積載アイテムが多いのに、ノーマルサスの調整機構が限られていることを踏まえ、MT-09の走りを全体的に底上げするようなサスを目指しました。具体的には、ギャップに対する吸収性を高めながら、スタビリティを高め、接地感を逃さない設定としています。価格設定も思い切ったものにしましたし、前後いずれかのみのご購入でも楽しんでいただけるよう、推奨セッティングデータもご用意しました。ぜひ楽しんで下さい。
◆商品概要
Y'S GEAR KYB SPECIAL SUSPENSION for MT-09
(ワイズギア KYB スペシャルサスペンション for MT-09)
価格:19万9800円(Front)/8万6184円(Rear)
発売:2015年11月25日
写真:赤松 孝、柴田直行 ※記事はオートバイ2016年1月号より