佐々木譲さん、という作家をご存知の人は多いと思います。
今年「廃墟に乞う」で第142回直木賞を受賞したことも記憶に新しい、
ミステリや冒険小説の世界では押しも押されぬビッグネームです。
しかし1979年に書かれたそのデビュー作は、なんとモトクロスがテーマの
レース小説「鉄騎兵、跳んだ」だったんですよ。
私、佐々木譲さんは個人的に好きな作家の一人で、
「ベルリン飛行指令」「エトロフ発緊急電」「ストックホルムの密使」の“第二次大戦三部作”、
幕末・明治期の北海道が舞台の「五稜郭残党伝」「北辰群盗録」といった
歴史冒険小説なんかも手に汗握りながら読んできました。
で、過去何回か、ある時はバイク好きの友人に、ある時は本好きの知り合いから、
「鉄騎兵、跳んだ」への絶賛を何度も聞かされれば、これはもう
本好きでバイク好きでレース好きな私としては読むしかないんですが、
86年に徳間文庫から出たのを最後に絶版になってまして。
これがホントに入手困難で、古本屋をグルグル回って十数年、
見つけることができずに今日に至った訳です。
しかし、つい先日、書店の新刊売り場に「鉄騎兵、跳んだ」が並んでる!
文春文庫から復刊されたんですよ、直木賞効果かぁ!
もちろん狂喜乱舞しつつ即購入、貪るように読みましたよ。
「鉄騎兵、跳んだ」は短編小説で、全5編を収録したこの本には
他にも「246グランプリ」「パッシング・ポイント」というバイクをテーマにした
気になる作品も収録されているんだけど、やはり「鉄騎兵、跳んだ」は別格。
70年代末の関東選手権、ジュニア125ccクラスを走るライダー・貞二が主人公。
プロライダーを目指していた貞二が、才能溢れる若いライバル・根本の登場で、
自分の限界に気づかされるが、誇りを取り戻すため引退をかけてレースに挑む…
という、シンプルだけどぐいぐい引き込まれるストーリー構成に加え、
読んでいて興奮してしまうほどに巧みなレース描写が加わって、
読み終わるのが惜しくなるくらいの衝撃的な面白さ。
これまで読んだバイク、自動車、自転車、宇宙船などなど
ありとあらゆるレース小説中、間違いなく3本の指には入るかな…
本なんか読まないよ、という人も騙されたと思って読みましょう。
かなり真剣にお勧めです!
余談ですが80年に「鉄騎兵、跳んだ」は、にっかつで映画化されてます。
しかもメガホンを取ったのは日活末期の傑作「人斬り五郎」シリーズの小澤啓一監督!
おお、コレは凄いかもと思ったら、貞二を演じたのはなんと若き日の石田純一。
佐々木譲×小澤啓一×石田純一って、う〜ん、想像がつかない。
でも見てみたいんで、これもDVDになんないもんかねぇ。