で、今回は新谷かおるさんなワケです。
えー、表紙だけみるとバイク関係ないだろ! という感じですね。
すまんねぇ、短編集だから仕方ないんだよ。
新谷さんといえば、エリア88とかファントム無頼とかのように、
メカと人間の係わりから生まれる物語がメインなワケです。
バイク物では、80年代バイクブーム真っ盛りの時期、
4耐・8耐や世界耐久選手権など、耐久レースをメインに描かれた
「ふたり鷹」が代表作ですな。あと長編作品としては、
セローに乗って全国を旅するツーリングライダーが主人公の
「左のオクロック」とか。両方とも面白いんですけど、
これらに先行して描かれたバイク物の短編もなかなか興味深くて…
中でも結構好きなのは、
この「ソニック・デザーター」収録の「サンダーボルト」って話。
70年代後半のアメリカはボンネビルで、
ヤマハTZ750エンジン2丁掛けなんてとんでもない
怪物マシンで2輪世界速度記録に挑む男の話。
40ページという短編の中、レギュレーションや計測方法、
単純なようで奥の深いボンネビルでの最高速アタックの様子を
きっちり折り込みながら、“燃える”話を展開してくれるんですよ!
「おれは世界最速の男になるんだ」と悪天候を押して走る主人公・ジョーに、
新谷さんのお師匠で、自身もアシスタントとして参加されていたであろう、
松本零士大先生の作品「衝撃降下90度」の主人公、
手足を失いながらレシプロ機での音速突破を目指した狂気のパイロット、
“台場”の影を見た…というのは勝手な思い込みか。
ちなみに、新谷さんの短編集って「ソニック・デザーター」以外に、
「銀色の照星」とか「シリーズ1/1000sec」とか「ダブル・ニッケル」とか、
何冊か出てるんだけど、バイク物はバラバラに収録されてる。
マッハ乗りが出てくる「ハイウエイ・スター」とかも面白いんだけど、
何とかバイク物だけで1冊になんないかなぁ。