
前半戦終了、僅差のトップ争い
2026年ダカール・ラリーは前半戦の山場となるステージ6を迎えた。ハイルからリヤドへ向かう総距離920km、SS(競技区間)331kmのこのステージは、カシム地方の広大な砂丘地帯を通過する難関だ。
トップ争いは激化の一途をたどっている。モンスターエナジー・ホンダのリッキー・ブラベックが今大会初のステージ優勝を飾り、総合首位のダニエル・サンダース(レッドブルKTM)に肉薄。サンダースはスピード違反による6分のペナルティを受けたこともあり、両者のタイム差はわずか45秒という緊迫した状態で休息日を迎えることとなった。
「自分は最後尾だと思っていた」
藤原にとって、このステージ6は精神的にも肉体的にも限界を試される一日となった。一昨日のステージ5で喫した激しい転倒により、鎖骨周辺に深刻なダメージを負っている。路面のギャップを越えるたびに走る激痛は、レースペースを維持することを不可能にしていた。
「もう信じられないくらいゆっくり走ってるんです。自分的には、本当にゆったりしたツーリングみたいなペースで。自分が最後のライダーだと思って走っていました」

藤原はステージ5のレポートで語っているとおり、順位やタイムを追うことはせず、当初の目的通り「完走」することだけに集中するモードへと移行。しかし、ビバークに戻ってみれば意外な事実が判明する。
「案外、後ろに結構いるんですよね、ライダーが。それがもう驚きで。『まだいるん?』みたいなぐらい、後ろにいました」
なぜ、ツーリングほどのペースで走る藤原が順位を落とさずに済んだのか。その要因は、この日のコース特性と藤原のバックボーンにあった。全編が砂丘(Dune)というコースコンディションの中、多くのライダーが砂にタイヤを取られ、スタックにより体力を消耗し、時間を浪費していたのだ。
「僕の目の前でもスタックしてタイヤが半分以上埋まっているライダーもいましたし、よく見る光景ですよね。でも僕はノースタックでした。ずっとデューンでしたけど、スッと抜けてこれました」
ここで活きたのが、藤原のルーツであるトライアルの技術だ。

「ラリーとトライアルって関係なさそうに見えますが、実はトライアル的なテクニックが使えるんですよ。半クラッチでむちゃくちゃ回転を上げて、砂を掻いて走るんじゃなくて、うまく半クラを使って『ふわっ』と砂の上を走っていくんです。トライアルでも一気にクラッチを繋いだら滑って掘ってしまうので、半クラで逃がしながらトラクションを掛けていく。ラリーでもそれは使えます」
トライアルライダーの繊細なトラクションを感じるスキル。派手さはないが、確実に前へ進むこの技術が、負傷した身体を救った。
砂丘地帯には、当然ながら上りもあれば下りもある。特にこの日の下り坂は、風紋によって洗濯板のように固く波打っており、それが延々と続いていた。
「下りが嫌すぎて……ボコボコなんですよ。しかも砂の下りって、ブレーキをかけても止まらないんです、流れていくから。流されながら、そのボコボコの衝撃を全部身体で受け止めなきゃいけない。鎖骨に響いて、もう『痛い、痛い』って言いながら走ってました」
痛み止めを服用し、なんとか意識を保ちながら走り続ける。そんな極限状態の中で目にする光景は、どこか現実感を欠いていた。
「砂丘のど真ん中に、普通に観客がいるんですよ。ラクダもいるし。これまではハイペースで景色をみる余裕なんてなかったんですが、ステージ6はとにかくゆっくり走った。わざわざ観客の近くまで行って、砂煙をバーっと上げて走ったりするほど余裕を持って走ったんです。」

ドクターの制止を振り切って
フィニッシュ後のメディカルチェックでは、医師から厳しい言葉を投げかけられた。
「『本当に痛くないのか?』『やめたほうがいいんじゃないか?』と言われました。でも、『痛いけど大丈夫だ』と言って続けさせてもらいました。ダカールのドクターも、なんでこの状態で走れてるのか意味がわからないという顔をしていましたね」
ステージ6を終え、藤原は総合47位(Rally 2クラス37位)につけている。怪我の状態を考えれば驚異的な粘りと言えるだろう。
「本当に、自分なりにとことん遅く走りました。トイレ休憩も3回くらいしたし、それ以外にも3〜4回止まって休憩しました。それでもこの順位にいられるということは、周りも相当苦労しているということなんでしょうね」

幸い、悩まされていた咳と鼻水の風邪症状は、薬の効果もあり回復傾向にあるという。
インタビューはステージ6の翌日リヤドでの休息日に収録した。ここで前半戦の疲労とダメージをどこまで癒やせているかが、後半戦の鍵となる。
■ダカール・ラリー2026 リザルト(ステージ6終了時点)
Overall Ranking(総合順位)
- D. SANDERS (KTM)
- R. BRABEC (HONDA) +0:45
- L. BENAVIDES (KTM) +10:15
- T. SCHAREINA (HONDA) +11:56
- I. CORNEJO (HERO) +29:50
… - S. FUJIWARA (HONDA)
Stage 6 Result
Stage Rank: 82
Class Rank (Rally 2): 71

