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youtu.beイタリアのモーターサイクルメーカーTM Motoは、ISDEイタリアの会場で2026年モデルのラインナップを発表しました。今回のアップデートでは、全モデル共通の改良に加え、排気量ごとに特化した変更が施されています。また、2025年モデルでEN(エンデューロ)に設定されていた競技志向の「CORSE(コルセ)」エディションが、MX(モトクロス)モデルにも設定。また、標準の「クオンタムグレー」外装カラーに加え、ホワイト、レッド、ピンク、ブラックも選択可能となり、新車ファクトリーオプションが拡充されました。
プレゼンテーションでは、多くの欧州メーカーがコスト最適化のために生産拠点を国外へ移した過去15年を振り返りつつ、TM Motoが一貫してイタリア・ペーザロでの自社生産を続けてきた歴史が強調されました。

「多くの企業が効率化を図る中で、TMはまだペーザロに拠点を置き、すべてのバイクを完全にイタリアで製造しています。TMのバイクを買うということは、単にシャシーとエンジン、ホイールが組み合わされたバイクを手に入れるというだけでなく、エンデューロが持つ魂が具現化されたものを買うということなのです」
この哲学は、職人が手作業でシリンダーを加工し、自社工場内の工作機械が部品を削り出す音の中に息づいていると語られました。また、発表会に出席したイタリアモーターサイクル連盟(FMI)会長からも、「他とは一線を画す特別なものを作り上げる。これこそがイタリア製品の真骨頂と言えるでしょう」という言葉が寄せられ、同社の姿勢がイタリアのバイク文化において特別な意味を持つことが示されました。なお、同社ではいわゆるライン工による生産を採用しておらず、2025年の今も1台のマシンを1人の職人が責任をもって組み上げる手法でオートバイを生産しています。
ファクトリーのフィードバックを受けた2026モデルのアップデート
2026年モデルでは、全モデルに共通する改良が数多く見られます。まずシャシー関連では、全モデルでラジエーターガードの形状が見直されました。これは空気の流れを改善し、エンジンの冷却効率を高めることを目的としています。足回りでは、ファクトリーチームがレースで使用するものと同様の内部システムを持つリアショックアブソーバーが新たに採用されました。リバウンドスプリングを追加したこの新しいセッティングにより、滑らかさと快適性、そしてトラクション性能の向上が図られています。ライダーの操作性向上のため、わだちなどでのコントロール性を高める新デザインのフットレストも採用されました。

エンジンと駆動系にも大きな改良が加えられました。特に注目すべきは、MX全モデルとEN CORSEモデルに搭載された新設計のクラッチです。ベルビルスプリングとスチール製プレッシャープレートを特徴とし、より繊細な操作性と過酷な条件下での高い信頼性を両立させています。

排気量ごとに見ていくと、2ストロークモデルではそれぞれ特性に合わせたアップデートが行われています。85ccではCDIマッピングとパワーバルブのセッティング変更でレスポンスとトルクを向上。125ccではエキゾーストバルブシステムが強化され、インジェクション仕様のMXモデルには新たに「ローンチコントロール」が搭載されました。250ccと300ccでは排気システムを新設計し、よりリニアなエンジンレスポンスとトルク向上を実現。低速域の扱いやすさを改善するためシリンダーにも改良が加えられています。
4ストロークモデルでも細やかな改良が見られます。250Fiと300Fiでは2ストロークモデル同様に耐久性を高めたクラッチバスケットとハブを採用したほか、電動スタートのギア比を見直して始動性を改善。特に250Fiではスロットルボディのインテークトランペットが変更され、リニアな出力特性を獲得しました。450Fiは、EN/SMR/SMKモデルに6速ギアボックスが標準装備となったほか、ECUの更新により全体のパフォーマンスが引き上げられています。
競技に特化した「CORSE」エディションMXの登場
そして2026年モデルのハイライトとして、競技での使用を想定した「CORSE」エディションがMXモデルに設定されました。このエディションにはスタンダードモデルとは一線を画す専用装備が多数与えられています。まず目を引くのが、ブロンズアルマイトが施されたCNC削り出しのパーツ群です。耐衝撃性に優れたクラッチカバーやイグニッションカバー、トリプルクランプ、マスターシリンダーキャップなど、TMの社内で一つあたり数時間をかけて精密に加工されたパーツが装着されています。


性能面でも、より高い制動力を発揮する専用の前後ブレーキディスクや、軽量なアルミ製センターと高耐久なスチール製アウターリングを組み合わせたバイマテリアルリアスプロケット、耐摩耗性に優れたUHMW(超高分子量ポリエチレン)素材のリアチェーンガイドなどを標準で装備。エンデューロモデルには、過酷な状況下での水温上昇を抑えるラジエーターファンも備わります。これらの装備により、「CORSE」エディションは箱出しの状態で最高レベルのレースに参戦できるポテンシャルを持っています。


すでに日本のTM Moto総輸入元であるうえさか貿易でもリリースを発表済みです。