レポート:黒石研仁(スマートモビリティJP編集部)
※この記事はウェブサイト「スマートモビリティJP」で2025年6月28日に公開されたものを一部編集し転載しています。
\記事を読む前に知っておきたい!/
歩道を走行できる「移動用小型車」の解説記事
特定小型原付の解説記事
倒れない電動キックボードという安心感
ストリーモ社はホンダの新事業創出プログラム「IGNITION」で生まれたベンチャー企業で、3輪構造により“倒れない電動キックボード”「ストリーモ(Striemo)」の開発を手がけている。
一般的な電動キックボードは、立ち乗りで重心位置が高いため低速域で走行するにあたってはバランスを取るのが難しい一方、ストリーモでは3輪構造と独自開発のバランスアシストシステムを組み合わせたことで走行安定性を向上。超低速域から高速走行まで、どの速度域でもふらつきを抑え、電動キックボードの弱点のひとつといわれる不安定性が克服されている、というわけだ。

ストリーモは3輪電動キックボード。バランスアシストシステムにより、ふらつかずに走行できる。
現在は、16歳以上が免許不要で乗れる特定小型原付モデル「S01JTA」を販売しているものの、歩行者扱いで歩道走行できる移動用小型車モデル「S01JW」も今後発売を予定しているという。今回は、この移動用小型車モデルに試乗する機会を得たので、さっそくレビューしてみよう。
「自分専用の動く歩道」にふさわしい乗り心地を実現(最高速度は6km/h)
3輪の電動キックボード、ストリーモの開発コンセプトは「自分専用の動く歩道」。車体前半部分(ハンドルポスト)は乗り手の姿勢に応じて左右に倒れながらバランスが維持され、車体後半部分のステップボードは常に地面と平行に保たれる仕組み「バランスアシストシステム」が搭載されている。
簡単に言うと、車体前半は左右にねじれることで横揺れを吸収し、車体後半は動かずに地面と平行を保つということである。

ステップボードは幅広タイプであるため、足を前後にずらさなくても乗車可能だ。
サスペンション非搭載の電動キックボードは、段差を乗り越えるときに車体のふらつきが発生して不安定な挙動を示すことが多い。ところがストリーモでは、サスペンション非搭載にもかかわらず車体のふらつきはすぐに収まり安定していた。(筆者注:今回試乗したのは最高速度6km/hの「移動用小型車」モデル。一般的な電動キックボードと同じ「特定小型原付」モデルは最高速度20km/hであるため、段差乗り越え時の印象は異なるかもしれない)
こうした安定性の高さや機動力、歩行者との親和性の高さなどを背景に、ビジネス用途でも利用が拡大しているようだ。たとえば、大阪・関西万博では消防向けの防災巡回車両として、5台(+予備機1台)が導入され、装備を着用したままスムーズに移動・巡回できる車両として期待されているという。
万博、しかも消防の業務用車両として導入されていることでもお分かりのとおり、車体の安定性については電動キックボード中トップクラスといっても過言ではないだろう。

広大な大阪・関西万博の会場内の消防向け巡回業務用として導入されたストリーモ特別仕様車。
また、一般的な電動キックボードは、安全のために足でひと蹴りして発進・加速しなければならないモデルがほとんどだが、ストリーモは電動バイクと同様にスロットルレバーをひねるとすぐに加速するタイプ。信号待ちのたびにいちいち発進操作をしなくても移動できる点は地味ながら嬉しいポイントだ。
助走不要・・・つまりキック不要で乗れるという意味では、電動キックボードという表現が合っているのか疑問に思う部分もある。
運転感覚は、地面に立ったままスルスルっと移動していくようなイメージで「動く歩道」を体現しており、ステップ高の15cm分だけ目線が高くなった「歩行者」として、疲れずに移動できる独特な体験を味わえる。小回り性能も優秀で、リバース(後進)機能と3輪で倒れにくい特性との相乗効果により、低速域での狭路通過や切り返し、駐車などの細かい操縦はとてもやりやすく感じられた。

低速でも安定しているので、狭いスペースでも安全にゆっくりと通過できる。
ハンドルポストを折りたたむとコンパクトに収納可能で、持ち手もついているため、持ち上げずスーツケースのように引っ張って運べるようになっている。車両重量が24kgとそこそこ重量級であることから、持ち運びするなら積極的に利用したい機能である。さらに、オプションでリアキャリアも用意されており、かごを取り付けると最大15kgまでの荷物を積載できるので、普段づかいでも便利に利用できるだろう。(折りたたむ際はかごを取り外す必要がある)

折りたたんだ状態では、持ち手をつかんでスーツケースのように引き歩きすると楽に持ち運べる。
バッテリーは取り外し充電・車載充電に対応する2WAY仕様。3.5時間でフル充電、航続距離30kmを実現するため、最高速6km/hであることを考えれば電欠の心配は少ないと言えそうだ。
【おすすめの試乗記事】お値段はびっくり65万円!1人乗り原付ミニカーの実用性を検証してみた
【おすすめの試乗記事】110万円の国産原付ミニカー「mibot」に乗って感じたこと
【おすすめの試乗記事】「半分クルマ、半分バイク」な電動トゥクトゥクに乗ってみた!