2025年6月12日、ストリーモ社は3輪立ち乗りタイプの移動用小型車を公開し、今後の展望を発表した。本記事では、シニアカーと同じ最高速度6km/hの移動用小型車モデルに試乗した感想、および将来の可能性について考察してみたいと思う。
レポート:黒石研仁(スマートモビリティJP編集部)
※この記事はウェブサイト「スマートモビリティJP」で2025年6月28日に公開されたものを一部編集し転載しています。

【結論】ストリーモには、立ち乗りを求めるニッチなシニア層に向けた「社会的な側面での存在意義」がある

ストリーモはすでに特定小型原付モデル「S01JTA」を販売中で、今回試乗した移動用小型車モデル「S01JW」は主にシニア向けの移動ツールとして設定されている。

画像: 左が特定小型原付モデル「S01JTA」で、右が今回試乗した移動用小型車モデル「S01JW」。リアキャリアにカゴやボックスを搭載するとお買い物カーとして便利に使える。

左が特定小型原付モデル「S01JTA」で、右が今回試乗した移動用小型車モデル「S01JW」。リアキャリアにカゴやボックスを搭載するとお買い物カーとして便利に使える。

特定小型原付の歩道モードと移動用小型車の違い:移動用小型車はすべての歩道を走行可能で、ショッピングモールや電車にも乗れる可能性あり

ちなみに、特定小型原付についても「16歳以上が免許不要で運転可能で、歩道走行モード搭載車両(特例特定小型原付)であれば普通自転車が通行可能な歩道を走行できる」ことになっている。一見すると移動用小型車特例特定小型原付の下位互換であると認識してしまいそうになるが、移動用小型車には「すべての歩道を走行できる」という地味ながら大きなアドバンテージがある。

特定小型原付では、周囲のクルマとの速度差や幅寄せというプレッシャーと戦いながら運転しなければならず、歩道に逃げたくなっても普通自転車が通行できない歩道には上がれないというデメリットがある。

一方で、移動用小型車であればどの歩道も走行可能なので、速度は遅くても安全に移動したい、あるいは自分の運転スキルが不安でゆっくり移動したい場合などでは、移動用小型車が有力候補となるわけなのである。

また、速度やサイズなどの車体要件がシニアカーとほぼ同じであるため、シニアカー鉄道やショッピングモールなど公共の施設に乗ったまま入場できる可能性があるのも大きなメリットといえるだろう。もっとも、すべての施設が無条件に認めているわけではないので、事前に施設に確認して、入場OKかどうかの確認は必要だ。

移動用小型車特例特定小型原付
(特定小型原付の歩道モード搭載車両)
区分歩行者扱い車両扱い
最高速度6km/h6km/h(車道は20km/h)
歩道走行すべての歩道を通行可能一部の歩道
(普通自転車が通行可能な場所&歩道モード)
公共施設に入れるか
(事前に施設へ確認しよう)
×
(車両扱いなので乗ったまま入場できない)
車道走行×
(歩道がない場合は、車道右側)
免許不要不要
年齢制限なし満16歳以上
ヘルメット不要努力義務
車両サイズ全長:120cm以下
全幅:70cm以下
全高:120cm以下(ヘッドサポートを除く)
全長:190cm以下
全幅:60cm以下
全高:規定なし

シニアカーと移動用小型車の違い:移動用小型車は座り乗り・立ち乗り両方OK

シニア向けモビリティといえば免許不要で乗れる電動車椅子、いわゆるシニアカーは座り乗り専用のモビリティとしてよく知られているが、ストリーモの移動用小型車モデルはサドルのオプション設定がない純粋な立ち乗り仕様である点が最大の違いである。

では、座り乗りタイプのシニアカーに対して、立ち乗り型のストリーモが持つメリットとは一体なんなのだろうか。

考察のヒントとなるのは、ストリーモの開発コンセプト「動く歩道」だ。地面と水平に立ったまま移動できるという特長は、立つ←→座るという動作が難しい、とくに腰痛を抱えている人に対して従来にはなかった移動の選択肢を与えることにつながるだろう。座位よりも立位の方が腰への負担が少ないため、身体への負担を最小限に抑えて移動できるモビリティとして期待できるというわけだ。

画像: 立ち乗りの低速モビリティゆえに歩行者に混じっても違和感は少ない。むしろ違和感がなさすぎて歩行者は避けてくれないため、人通りの多い場所では歩行者と接触しないような運転スキルが求められる。

立ち乗りの低速モビリティゆえに歩行者に混じっても違和感は少ない。むしろ違和感がなさすぎて歩行者は避けてくれないため、人通りの多い場所では歩行者と接触しないような運転スキルが求められる。

もっとも、一般的には座り乗りのニーズの方が高く、立ち乗りに特化した移動手段を求めるユーザーは少数派かもしれない。しかし「立ち乗りのシニア向けモビリティ」という選択肢を提供することには、交通弱者の移動の自由化を支えるという社会的な意義の面で、単なるビジネスだけではない価値があると言えるのではないだろうか。

また車両価格についても、電動キックボードとしてみると高額に感じるが、シニアカーとして捉えれば標準的な価格となる(※特定小型原付モデルで30万円、移動用小型車モデルは未発売車種につき非公開)。とはいえ、試乗なしでいきなり購入できるような価格ではないため、今後は取り扱い店舗と試乗可能な場所を増やして、実際に体験できる場を提供する必要があるはずだ。

画像: 移動用小型車にはステッカーが車体に貼り付けられる。

移動用小型車にはステッカーが車体に貼り付けられる。

なお、ストリーモには、最高速度20km/hの「特定小型原付」モデルと、最高速度6km/hで歩道走行限定の「移動用小型車」の2種類がラインナップされるが、モデル間のコンバージョンはできないという。

つまり、たとえば免許返納後の家族用として移動用小型車モデルを購入し、のちに使わなくなった際、特定小型原付仕様にチェンジしてもらって自分の通勤手段として使うといったことはできないということである。どちらのモデルがニーズに合っているかをよく考えてから購入を検討しよう。

斬新な立ち乗り型シニアカー「ストリーモ」が、高齢者の移動の自由化にどこまで貢献できるのか、今後の展開にも注目していきたい。

【主要諸元 ストリーモ S01JTA(※特定小型原付モデル)】

全長×全幅×全高1090×500×1180mm
(折りたたみ時)565×500×1090mm
重量24kg
耐荷重120kg
ブレーキディスクブレーキ(前輪)
ドラムブレーキ×2(後輪)
歩道走行モード対応あり
バッテリーリチウムイオン(36V・13Ah)
定格出力430W
最高出力非公開
登坂性能21%
航続距離30km
充電時間3.5時間
タイヤサイズ10インチ
防水性能IPX5
本体価格30万円

ストリーモ取扱店舗・施設一覧表(2025年6月時点)

都道府県店舗・施設名取扱車種展示試乗販売レンタル
東京都コネクトすみだ[まち処]S01JTA
(特定小型原付)
×××
eモビリティパーク東京多摩×
ナップスららぽーと立川立飛店×
神奈川県SQUARE Mobility×××
三重県伊勢神宮参道ステーション×××
鳥取県SANDBOX TOTTORIS01JW
(移動用小型車)
×××

This article is a sponsored article by
''.