まとめ:斎藤ハルコ/写真:高柳 健
※神社境内での撮影は、特別な許可を得ています。
※この記事は、月刊『オートバイ』2025年5月号に掲載したものを一部編集して公開しています。
アオキシン×佐々木優太 開運ツーリングトーク

「カス虎は26年連載しても、まだまだ描ききれていないんです」(アオキシン)
「最近『現代の御師(おし)です』と名乗ることが増えました」(佐々木優太)
編集部もおぼえていない!? カス虎連載スタートのきっかけ
アオキシン(以下アオキ) 僕はオートバイ編集部の皆さんから「優太さんの神社話は面白いですよ。すごいですよ」って聞いてたんですよ。確かに実際にソムリエしていただいたら、予想以上に勉強になりましたし、面白かったです。神主さんは神社の管理人さんみたいな立場だってことも初めて知りましたし、神社は行けば力をもらえる受動的な場所ではなく、自分から能動的に働きかける場所で、人が集まって盛り上がるほど、神様の力も増していくものなんだとか、目からウロコの話がたくさんありました。もちろん今まで誌面で優太さんの活動は知っていましたけど、失礼な言い方で申し訳ないんですが、正直、神社ソムリエという言葉に僕はあんまりピンと来てなかったんです。
佐々木優太(以下佐々木) この連載やYouTubeでは「神社ソムリエ」ですが、最近は、ゲッターズ飯田さんとの共著にも書いた「現代の御師(おし)」と名乗ることが増えてきているんです。
アオキ 御師……?
佐々木 150年前に廃止されてしまったのですが、かつて日本にいた、神社に足を運ぶ人のために、参拝や宿泊のお世話をしていた人のことです。今でいう、神社やお寺専用のツアーコンダクターみたいなイメージですね。以前は御師といっても誰もわからなかったので、「神社ソムリエ」と名乗るようにしたんですが、最近は「昔は“御師”という、神社を紹介し、神社まで連れて行く人がいて、僕は現代の御師なんです」って説明すると、皆さんがすごく納得してくれることが多くて。
アオキ たぶんなんですけど、神社ソムリエって響きがなんとなく軽く聞こえるんだと思います。特に優太さんから神社に対する深い知識や考え方、発言を聞くと、御師の方が僕はしっくりきました。昔からそういう職業の人がいたんだって勉強にもなったし、神社をたくさんの人に紹介して、ご案内するって、やってることがまさに最強の御師じゃないですか。

佐々木 ありがとうございます。僕からも質問なんですが、先生がカス虎を始めたきっかけはなんだったんですか?
アオキ 昔、オートバイ編集部にMさんという方がいて、僕はMさんによくバイクのメカニズム的なことを聞かれては答えていたんです。そしたら「アオキさんの説明は面白いし、絵も描けるから、バイクの解説漫画を始めませんか」と言われたのが、1998年だか1999年だと思います。
佐々木 そこから連載が26年以上続いているというわけですね。
アオキ それでもまだ、全然描ききれていないことが多いんですよ。
佐々木 バイクに乗るのと、絵を描くのは、どちらが先だったんですか?
アオキ 絵はもう幼稚園とか、本当に小っちゃい時から描いてました。子供の頃からエンジンのラジコンをやったり、ポケバイに乗ったりと機械と乗り物が好きでした。16歳になってオートバイに乗るようになり、ロードレースやジムカーナもかじっていました、時代ですね。その頃、知人が仕事をしていたレース専門誌の依頼で、例えば“スポーツランドSUGOのハイポイントコーナーを立ち上がるときにレーサー目線から見える景色の絵”とかを描いたりしていたら、「これは絵が描けて、バイクにも乗れる、両方できる人じゃないと描けない絵だね」って言われて仕事をもらうようになったのが、二輪業界で仕事をするきっかけでした。
佐々木 さっきおっしゃった「カス虎はまだ描ききれてない」というのは……。
アオキ 自分の得る情報や知識がどんどん更新されて、アップデートされていきますし、そうすると、もともと考えていた全体の大まかなストーリーの量も、どんどん延びていっちゃうんです。
佐々木 それで月刊誌で26年連載が続いていると。しかも毎月アウトプットするからには、インプットも必要ですよね。

アオキ 自分の場合は、オートバイを触って乗ることがインプットですね。いじっていると失敗もするわけです。「こうやると失敗する」とか、「これがキモなんだ」とか、たくさん重ねた実体験をカス虎には詰め込んでいます。あと、エンジニアさんと話をすることも大切です。
佐々木 今はKTMですが、お付き合いするバイクは1台を長く乗るんですか?
アオキ 若い時はわりと短い期間で乗り換えてたんですけど、30代ぐらいから、1台を長く乗るようになりました。でもそれは歳を取って、若い頃に比べて時間の経ち方がどんどん早くなっていくから、長く持ってるってだけだと思いますけど。
佐々木 乗る車種やタイプは固定されずに、いろんなバイクに乗るんですか?

アオキ いろんなのに乗ってきました。
佐々木 アオキさんの思い出に残るバイクがなんなのか、すごく気になります。
アオキ よく聞かれるんですけど、いちばん印象に強く残ってるのはSRX-6とSRX-4。キックのII型が好きです。あとはRC42型のCB750。最後の教習車にもなったCB750は名車だと思います。
佐々木 どういったところが名車だと?
アオキ あんなにニュートラルなバイクはない。僕ね、振るなら振るで、極端に振ったバイクも好きなんですけど、技術的には中庸の方が難しいと考えています。たぶんCB400SFとCB750は、世界でいちばんニュートラルなオートバイだと思います。クセがまったくなくて、異様に中庸。あらゆるクセを削って削って一切取り払って、あそこまで中庸なバイクを作るのは、じつはものすごい技術だと思うんです。
佐々木 なるほど~。なんだかアオキさんのバイク話を聞いてると、「カスタムとはなんですか?」とか「整備とはなんですか?」とか、どんどん質問したくなりますね。でもそれが簡単な説明にまとめられるなら、カス虎が26年間も続いてないんですよね(笑)。またぜひ今度、バイクのお話を聞かせてください。
アオキ こちらこそ。ぜひまた神社についていろいろと教えてください。今日は本当にありがとうございました。
今回の食事処

UNITEDcafe
東京都世田谷区野沢4-4-8-1F
駒沢公園にほど近い、環七沿いに位置するギャラリースペースを併設したカフェ。二輪駐車スペースがあり、店内にはヘルメット置き場も設けられている、ライダーに優しいくつろぎ空間です。さまざまなジャンルの世界各地の家庭料理をベースにしたオリジナルフードが楽しめ、自家製ジンジャーソーダ(税込600円)など、ドリンク類も豊富。僕は今回、ロコモコ(税込1200円)をオーダーしました。美味!


まとめ:斎藤ハルコ/写真:高柳 健
※神社境内での撮影は、特別な許可を得ています。
※この記事は、月刊『オートバイ』2025年5月号に掲載したものを一部編集して公開しています。