ジャパンモビリティショー2023で世界初公開された
空冷4ストローク単気筒のカワサキメグロS1。
2024年で創業100周年を迎えるメグロブランドだが
では「メグロ」ってなんだ?
あらためて、おさらいいたします。

西の小排気量メーカーが重量車ブランドを吸収合併

画像: 発売秒読み、カワサキの新生「メグロ」ブランド第2弾モデルであるS1

発売秒読み、カワサキの新生「メグロ」ブランド第2弾モデルであるS1

現在私たちが「カワサキ」と呼んでいるオートバイメーカーは、巨大グループ企業が独立合併を繰り返して成立した「川崎重工業株式会社」の「モーターサイクル&エンジンカンパニー」を指す。
そのルーツは明治11年(1878年)、川崎正蔵が東京築地の官有地に設立した「川崎造船所」。その後は神戸に移転し、製鉄、機関車や貨客車、橋桁を製造する川崎造船所は大正7年に飛行機部門を設立することになる。
これが昭和12年(1937年)に「川崎航空機工業」として独立。これが「川崎車輌」とともに「川崎重工業」と昭和14年に合併したのが、いまのカワサキの母体=川崎重工業といっていいだろう。

一方「川崎明発工業」というメーカーも昭和28年に創立される。これは、エンジンメーカーだった川崎航空機が製造したエンジンを搭載した「メイハツ」モデルを販売。ちなみに明発とは「明石発動機」のことで、トーハツ=東京発動機、ダイハツ=大阪発動機と同じ名付け方だ。
この川崎明発工業が「カワサキ自動車販売」と社名を変更、カワサキブランドのオートバイが登場したのが昭和36年だ。初代モデルは川崎航空機工業が製造、カワサキ自動車販売が発売した125ccのB7というモデルだった。

画像: モビリティショーでも展示されたSG250

モビリティショーでも展示されたSG250 

そして、カワサキが自社ブランド製品とともに販売していたのが「メグロ」ブランドだ。カワサキが125ccモデルを、それ以上のモデルをメグロが生産する体制へと変化していく。
メグロとは、大正14年に設立された、正式名称「目黒製作所」。オートバイ製造より以前は、戦前に日本に輸入されていたトライアンフやインディアン用の部品メーカーであり、国産の三輪自動車用ギアボックスのトップメーカーとしても知られていた。
ちなみに目黒製作所の当時の所在地は、東京府荏原郡(現在の品川区荏原)。一時は「荏原製作所」というネーミングとする案もあったが、1912年創業の「荏原製作所」(=https://www.ebara.co.jp)が当時すでに存在していたため、この一帯のエリア名である「目黒」とした、と言われている。

昭和7年ごろには500ccのエンジン、その後も水冷V型750ccエンジン、自動車用4気筒エンジンを製造するエンジンメーカーとなり、昭和12年には完成車として、メグロ号500cc単気筒Z97型が完成。白バイとして警視庁に納入されたりもしている。
そして戦後にはオートバイメーカーとしての活動が本格スタート。初代モデルは昭和23年の500cc単気筒のZ型、26年の250ccのジュニアJ型だ。

画像: 1937年モデル 500cc単気筒のメグロZ97

1937年モデル 500cc単気筒のメグロZ97

メグロの最盛期と言われているのが昭和30年代、つまり1950年代中盤で、ちょうど第1回浅間ロードレースが開催され、戦後にあった200社を超える二輪メーカーが60数社に淘汰された頃だ。

目黒製作所は企業としても成長を続け、その資本金は昭和28年に1425万円、33年には1億8000万円円、株式を公開した34年には3億円まで増資している。日本銀行資料によると、昭和40年の3億円は、消費者物価指数で換算すると約12億円になる。

しかし、二輪メーカーの飽和状態は長くは続かず、企業倒産が相次ぐ中、目黒製作所も昭和35年11月に川崎重工と業務提携。37年には「川崎目黒製作所」と改称するが、39年9月30日には倒産。カワサキが吸収合併した形となり、「メグロ」が姿を消してしまうのだ。この時はじめて、メグロ/メイハツ/カワサキの3ブランドでラインアップしていたモデルがカワサキのエンブレムで統一されることになる。

画像: 1954年モデル 250cc単気筒のメグロ ジュニアS2

1954年モデル 250cc単気筒のメグロ ジュニアS2

戦前からのメーカーの中で、メグロは「もっとも良質な完成車メーカー」と呼ばれており、1960年代からホンダとともに4ストロークエンジンを製作していた数少ないメーカー。
カワサキがメグロを継承し、川崎航空機技術陣による再設計モデルK2が誕生したのが昭和40年。このK2からは、タンクバッジに「MEGURO」ロゴとともに、川崎重工の「リバーマーク」がつけられ、クランクケースの刻印も「メグロ」から「KAWASAKI」に変化。事実上のカワサキビッグバイクの第一号車といってもいい。

そして国産初の650ccビッグバイクといっていいW1は、ホンダナナハンの3年も前に市販を開始。後の「ビッグバイクのカワサキ」に、その伝統が引き継がれたと言ってもいい。
それから50余年。カワサキが送り出した新世代メグロは「K3」。言うまでもなく、1965年に発売された「K2」の、56年ぶりの後継機種との思いも込めたネーミングだったのである。

その「新生メグロ」ブランド第2弾といえるのが、国内発売秒読みと言われている「S1」だ。S1はメグロ最後のモデルSG250をイメージして開発されたモデルで、SG250は日本初の250ccであるメグロ・ジュニアをルーツに持つ名車。今でもメグロの代表モデルとしてオールドファンが多いモデルだ。実は当時も、設計は目黒製作所、製造は川崎航空機だった。メグロSG250のネーミングで販売されていたのは2年間ほどで、目黒製作所がカワサキと合併したことで、以降はカワサキSG250として販売されていた。
2024年にカワサキメグロS1が販売されるとなるとなると、それは60年ぶりのモデルチェンジということができるのかもしれない。

目黒製作所 歴代モデル
メグロ期
1950年
Z型 500cc/J型 250cc
1951年
Z2型 500cc/ジュニアJ2 250cc
1952年
Z3型 500cc
1953年
S型 250cc/ジュニアJ3 300cc/レックスY 350cc/Z5型 500cc
1954年
ジュニアS2 250cc
1955年
Z6 500cc/セニアT1 650cc
1956年
ジュニアS3 250cc/スタミナZ7 500cc
1957年
レジアE2 125cc/レックスY2 350cc/セニアT2 650cc
1958年
E3 125cc/F 250cc
1959年
ジュニアS5 250cc/YA 350cc
1960年
キャデットCA 125cc/ジュニアS7 250cc/スタミナK1 500cc
1961年
アミカMA 50cc/アミカスポーツ 50cc
1962年
レンジャーDA 170cc/スタミナK 500cc

カワサキメグロ期
1963年
ジュニアS8 250cc/アーガスJ8 300cc/オートラックAT 250cc
1964年
メグロSGT 250cc
1965年
メグロSG 250cc/メグロK2 500cc
1966年
川崎航空機X650 試作650cc/川崎航空機650W1 650cc

※この項は月刊オートバイ2021年4月号に掲載されたものを加筆修正したものです※

写真/モーターマガジンアーカイブ 文責/中村浩史

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