バックフリップは当たり前、Wバックフリップですら世界初の成功は2006年と、一昔前の事件である。これ以上どう進化するのか想像が追いつかない2020年台のフリースタイルモトクロスシーンで、一体どんなトリックが出てくるのか……。その答えを探しに、XGAMES CHIBAへ行ってきた

XGAMES CHIBA 2023
日時:5月11〜13日
会場:千葉県ZOZOマリンスタジアム

ここでもオーストラリア勢が強い

スーパークロスではローレンス兄弟が史上初の兄弟による東西250クラス制覇を決めたばかり。ダカールラリーのマルチタイムチャンピオンであるトビー・プライス、MXGPのミッチェル・エバンスに、Enuro GPのウィル・ルプレヒト、彼らもまたオーストラリア出身のライダーたちである。人口2500万人ほどしかいない国にも関わらず、世界に名だたるオフロードライダーを輩出するオフロード大国だが、フリースタイルモトクロスに関してもその勢いは変わらない。XGAMES CHIBA 2023に参戦するライダーたち7名のうち実に4名がオーストラリア出身なのだ。

画像: 2022年のモトクロス・オブ・ネイションズは、ジェット・ローレンス、ハンター・ローレンス、ミッチェル・エバンスと欧米のHRCスターだけで構成されたオーストラリアチームであった

2022年のモトクロス・オブ・ネイションズは、ジェット・ローレンス、ハンター・ローレンス、ミッチェル・エバンスと欧米のHRCスターだけで構成されたオーストラリアチームであった

粒も揃いに揃っている。世界で初めて特設ランプからのトリプルバックフリップを決めたジョシュ・シーハン、競技用ランプからのトリプルバックフリップを決めたハリー・ビンク、XGAMESで初のフロントフリップを決めたジャクソン“ジャッコ”ストロング。そしてXGAMES最多メダルの記録をもつロブ・アデルバーグである。

レジェンド東野貴行のロックソリッド・バックフリップ

このたび日本でもっとも注目されていたのは、レジェンド東野貴行の参戦だろう。すでに38歳になる東野は、ご存じのとおり2010年のDew Tour Salt Lake City FMX Contestでゴールドを獲ってから、2012年のXGAMES フリースタイルモトクロス、2013年XGAMES フリースタイルモトクロス、レッドブルXファイターズ大阪でゴールドと輝かしい成績をモノにしており、FMXでアメリカンドリームを成し遂げた日本人として知られている。

練習走行ではパンツが空中で引っかかり転倒するシーンも。

画像1: レジェンド東野貴行のロックソリッド・バックフリップ

本番の1本目のランではシグネチャートリックの、ロックソリッドバックフリップをメイク(89pt)。

画像2: レジェンド東野貴行のロックソリッド・バックフリップ
画像3: レジェンド東野貴行のロックソリッド・バックフリップ

2回目のランでシートグラブインディフリップ(85.33pt)。ベストランの得点をリザルトとする今大会では89ptで5位の結果となった。

わずか0.33pt差、ノーハンドのフロントフリップでジャッコが優勝

画像1: わずか0.33pt差、ノーハンドのフロントフリップでジャッコが優勝

上位勢の戦いは、フロントフリップとダブルバックフリップのバリエーションが決め手となった。3位のビンクは、「ダブルバックフリップ・ナック・ワンハンダー・ルック・トゥ・ザ・サイド」(95pt)をメイク。つまり2回転まわりながら、ナックナックをしつつ片手を離して、観客席側に視線を送る……。1回転目のワンハンドの手が最も伸びたこの瞬間がトリックのピークなのだけれど、これは写真で振り返ってみてもいまいちわかりづらい。

画像2: わずか0.33pt差、ノーハンドのフロントフリップでジャッコが優勝
画像3: わずか0.33pt差、ノーハンドのフロントフリップでジャッコが優勝

フロントフリップに定評のあるジャクソン・ストロングは、2本目で「アンタックド・ノーハンダー・フロントフリップ」(96.33pt)をメイク。

画像4: わずか0.33pt差、ノーハンドのフロントフリップでジャッコが優勝

最後のランで勝敗が決するという状況でロブ・アデルバーグが、ストロングのトリックに呼応して「ノーハンダー・フロントフリップ」(96pt)を成功させる。ハンドルから手を離す「ノーハンド」のやり方で「アンタックド」かそうでないかに分かれ、「アンタックド」の方が難易度が高いとされるものの、アデルバーグは手を離したピーク時間を長く保持できていたため、採点は混迷を極めたそうだ。

画像5: わずか0.33pt差、ノーハンドのフロントフリップでジャッコが優勝

会場が固唾を飲んで見守る中、ストロングに軍配。その得点差はわずか0.33ptであった。4位にはジョシュ・シーハンが入り、7名のライダーのうちトップ4全員がオーストラリア勢に。現代のフリースタイルモトクロスは、通常のランプでフロントフリップやダブルバックフリップを決めるのは当たり前、そこに何を織り交ぜていくかというとても高度なスキルの応酬なのだった。

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