ヤマハの2023年モデルではYZ450F/YZ125X/YZ250Xがフルモデルチェンジ。メディア向け試乗会に参加し、YZ125X/YZ250Xを試乗。2車種の特徴を辻健二郎選手に体感してもらった
画像: 2023MY YAMAHA YZ450F/YZ125X/YZ250X 辻健二郎インプレッション youtu.be

2023MY YAMAHA YZ450F/YZ125X/YZ250X 辻健二郎インプレッション

youtu.be

TESTER/辻健二郎
TEST TRACK/宮城県スポーツランドSUGO

画像1: YZ125X

YZ125X

画像2: YZ125X

YZ125X

画像1: YZ250X

YZ250X

画像2: YZ250X

YZ250X

YAMAHA
YZ125X/250X 2023MY

2023モデルでフルモデルチェンジを果たしたYZ125XとYZ250X。両モデルとも、モトクロスマシンYZ125とYZ250のモデルチェンジをそれぞれ踏襲したかたちだが、YZ125→YZ125Xの変更箇所はシリンダーヘッドやYPVSバルブの形状変更など旧モデルよりも多岐にわたり、3Dマッピングもアップデートされている。YZ250Xはハード面の変更はなく、ジェッティング、3Dマッピング、サスセッティングなどのチューニングでクロスカントリーに最適化。

辻健二郎が語る。YZ125X編「安心感のある低回転域」

画像1: 辻健二郎が語る。YZ125X編「安心感のある低回転域」

今回の試乗フィールドにはモトクロスコースの他に、エンデューロコースがあり、最初はそこに含まれる林道セクションをYZ125Xで走りました。林道は思った以上に路面が荒れていて、滑りやすいコンディションでしたが、低回転域からのパワーデリバリーが程よく、低速でも安定した乗車姿勢を保つことができました。

画像: 試乗ライダーを担当した辻健二郎。全日本モトクロス選手権でファクトリーライダーとして活躍していた経験を持ち、現在はモトクロスウエアブランド「seven」の正規取扱店「2G MOTO SHOP」を運営

試乗ライダーを担当した辻健二郎。全日本モトクロス選手権でファクトリーライダーとして活躍していた経験を持ち、現在はモトクロスウエアブランド「seven」の正規取扱店「2G MOTO SHOP」を運営

YZ125Xはエントリーモデルということで、低回転/低速の扱いやすさを重視して作られています。この点を感じるために、エンジンが止まりそうなシチュエーションをわざと作って走行したところ、エンジンが止まるような不安定感はなく、低回転域でもエンジンの粘り強さを感じました。エンデューロビギナーの自分でもリラックスしてマシンに乗っていられましたね。このエンジン特性は、ヤマハがターゲットとしているエントリーライダーにとって心強いものだと思います。

ギャップを飛んだりフロントを上げるなど、アクセルの開け閉めを素早く行う状況下においてはエンジンの回転数が急に上がりましたが、唐突なパワーデリバリーを感じるわけではなく、むしろ粘りのあるトルクフィーリングでした。昨年試乗したYZ125はエンジン回転数の維持に神経を使う印象がありましたが、YZ125Xは神経を使わなくてもマシンをコントロールしやすくなっています。クロスカントリー向けとして、YZ125とはかなりキャラクターを変えたんだなと感じることができました。

YZ125Xでモトクロスコースを走る機会もいただきました。走ってみると、モトクロスマシンと比べてエンジンパワーにマイルドさがあり、物足らなさを感じる部分はありました。しかし、スピードを上げていくとトルクの粘り強さ、低回転域から高回転域へのスムーズなつながりによって良い加速感を感じます。また、コーナーでパワーが出すぎることがないため、滑りやすい路面状況でもコントロールがしやすく、安定感があります。低回転域には安心感があり、高回転域でも充分なライディングを助けてくれる。かなり幅広いレンジのライダーをフォローしてくれるマシンなのではないでしょうか。

画像2: 辻健二郎が語る。YZ125X編「安心感のある低回転域」

サスペンションにリーフスプリングを採用

画像1: 「安心感のある低回転域、あらゆるライダーにおすすめできる」23MY YZ125X/YZ250X 試乗インプレッション ※ムービー連動
画像2: 「安心感のある低回転域、あらゆるライダーにおすすめできる」23MY YZ125X/YZ250X 試乗インプレッション ※ムービー連動

スピードをあまり出さない林道コースではフロントサスの硬さを少し感じました。一方、ハイスピードなモトクロスコースを走行してみると、スピードが乗るにつれて林道で感じた硬さや突っ張り感はなく、前後の接地感が保たれている感覚。ハイスピードからの減速時でも程よくフロントが沈んでいき、路面をグリップしてくれました。サスペンションは2023モデルから背面バルブにリーフスプリングが採用され、極低速走行時の減衰力を高めているとのことで、モデルチェンジの効果を実感することができました。スピードを上げた時の不安定感があると慎重なライディングになってしまうのですが、YZ125Xではこのような感覚は無く、どんどん開けることができましたね。

画像: サスペンションにリーフスプリングを採用

YZ250X編「エンジンは軽快な回り出しを感じる」

YZ250Xのエンジンはパリッとしていて反応も良いです。2023モデルでは3Dマッピングを変更し、スロットル開度に合わせた点火タイミングの設定を行なったということで、軽快にエンジンが回りました。林道コースでは、低速走行に合わせて低いギヤを試してみたのですが、力が強く反応も良いので、アクセルワークが若干慎重になりました。しかし、高めのギヤに切り替えて走行すると、トルクは程よくマイルド。エンジンが止まりそうな低回転域でも、不安感のないエンジンフィーリングでした。かなりの低速走行でもギヤを落とさずに走ることができました。

画像: YZ250X編「エンジンは軽快な回り出しを感じる」

モトクロスコースでハイスピードな走行をしてみると、高回転域ではややマイルドな加速だと感じました。しかし、トルクに安定感があるのでギヤを上げていけば充分トップスピードが出ているようでした。コーナーでは、かなりのハイスピードで侵入し、ややスライドしながら旋回していくというコーナリングを全てのマシンでトライしましたが、今回乗ったマシンの中でYZ250Xが一番コントロールしやすくスムーズにコーナリングすることができましたね。また、コーナー出口でわざとフロントを上げてウイリーしながらの加速も楽しめました。ただ、低いギヤでの低速走行では構えてしまうような力強さは、YZ125Xのように初心者ライダーにとってフレンドリーなマシンとは言い難いですね。レース志向な、中上級ライダー向けにとって戦闘力があるマシンなのだと思いました。

確かな接地感を感じるサスペンション

画像4: 「安心感のある低回転域、あらゆるライダーにおすすめできる」23MY YZ125X/YZ250X 試乗インプレッション ※ムービー連動
画像5: 「安心感のある低回転域、あらゆるライダーにおすすめできる」23MY YZ125X/YZ250X 試乗インプレッション ※ムービー連動
画像: 確かな接地感を感じるサスペンション

YZ125Xと同様、低速走行をしているとフロントサスに硬さを感じることがありましたが、スピードを上げて走ると、ギャップを避けたり、滑りやすい路面上でターンする際に安定した接地感が出てきます。林道コースでエンジンパワーを持て余さないか心配でしたが、走行中にその不安を感じることはありませんでした。エンジンとサスペンションのセッティングが、低回転域から中回転域にマッチしているのだと思います。

いつまでもビギナー! のジャンキー稲垣インプレYZ125X編

画像: いつまでもビギナー! のジャンキー稲垣インプレYZ125X編

新YZ125Xの第一印象はめちゃくちゃ走るな! というものだった。旧型のYZ125Xはだいぶパワーの立ち上がりが緩やかで高回転域に関しては明らかにモトクロッサーのそれではなく、しっかりビギナー向け。新型はこの辺がほぼモトクロッサーである。正しくは中・高回転域がめちゃくちゃに元気だ。YZ125と比較しても、ほとんど遜色ないくらいに走る。これは普段YZ125に乗っているので、ほぼ間違いのないところだと思う。

ただ、圧倒的に違うのは低回転域。しっかり開けていくとすっと上まで回るのに、低回転を使おうとするとボロボロボロとねばりのある特性が顔を出す。これは僕らビギナーライダーにとってとてつもなく大きな武器になる。モトクロスコースでも少しタイトなコーナーになるとこの扱いやすさが思い切り表に出てくる。YZ125ではぎくしゃくしてしまい、マシンを上から押さえ込みながら走るような場面が、すっとマシンを寝かしていけるようになった。全開走行10分後くらいの疲れた時にはYZ125Xの扱いやすさがてきめんでウレシイ。正直なところ中級者向けモトクロッサーYZ125を乗りこなしつつある自信が芽生えてきていた僕からしたら、ガーンと頭を金槌で叩かれたような気分だ。めっちゃいいやんけこのX……。ずるい。

足も正直僕には十分だ。っていうか、目の前でJNCC AAのナカジ(中島敬則)がバイーンとKYBジャンプを飛びきっていて「いやーこれすごい、全然SUGO走れますよ。ジャンプ全部飛びきれる」と言っていたので、もう僕には十分どころの話じゃなかったようだ。自分のYZと比較すると、実はXのほうが僕にはちょうどいい。時々、もう少しピッチングがおさまってほしい、と思うようなこともある。でも、そんなのは微々たるものだ。全体的に言えばモトクロスをするにしてもYZ125Xのほうが永遠のビギナー稲垣にとってはマッチしている。はっきりいってモトクロッサーを乗りこなせていないことを痛感して悔しい。

これらはスポーツランドSUGOのモトクロスコースでのインプレ。これだけ好感触ならウッズセクションなどではもっと楽しいハズ。そんな期待をもってエンデューロフィールドへ向かってみると、やっぱり想像以上の楽しさだった。エンジンの感触は2スト125そのものなのだけど、ギヤチョイスの懐の深さは250に匹敵する。3速でちょこまか走ると、しっかりアクセルにエンジン回転数がついてきて、さらにねばりにねばってエンストする気配がなかなかない。モトクロッサーだと頻繁に半クラッチを使わないと話にならなくて、正直YZ125だとエンデューロ的なセクションはかなり辛いのだ。ブレーキングギャップが連続するようなセクションも、高回転をうまく引き出すとしっかり飛んでいける。

かなり不思議なエンジンである。ここまで低速を扱いやすくすると、全体的にもったりするのが常だけど、まったくそんなことはない。こんなにしゃっきりしたバイクにしちゃったら、本当のビギナーには難しいんじゃないかな(謎の上から目線)と思ったから、鈴木健二さんに「これ走りすぎません?」と聞いてみたら「実は、ジェッティングの変更だけでさらに乗りやすくなるんですよ」とにやけておられた。たぶんJNCCの試乗会なんかでその乗りやすくなったYZ125Xを乗れるんだろう。ずるいなあこのバイク。

セローは卒業してYZ125Xに乗ろう。そんな人を旧型はターゲットにしていた感がある。だが、今回のYZ125Xはそれに加えて「小排気量をぶんまわしたい」上級者もしっかり満足できるだけのパワーとフィーリングがある。

エンジンの一発一発がデカイ。けど乗りやすいYZ250X

「エンデューロモデル」とみなさんが呼んでいるバイクは、実はその先さらに細分化されている。ざっくり言うと、エンデュランサーとクロスカントリーバイクに分かれる。エンデュランサーというのは、これは明確にストリートリーガルを想定したオンタイムエンデューロ向けのバイクを指す。これらはオンタイムエンデューロを想定したバイクではあるものの、実情では欧州においても北米においてもトレールを走るバイクとして普及しており、そのキャラクターはレーサーとは思えないほど穏やか。しっかり高回転まで開けることではじめてレーサーなんだと思い出すほどだ。逆に言えば、今のエンデュランサーたちは耐久性もあるので日本のトレールバイクと同じように使うこともできちゃったりする。

画像: エンジンの一発一発がデカイ。けど乗りやすいYZ250X

話が長くなったが、クロスカントリーバイクというのはまったく別のバイクだ。これらはJNCCやGNCCなどのクローズドレースを想定していて、どのメーカーのマシンもモトクロッサーを少しマイルドにしたような設定になっている。開け口からしっかりパワーを感じられる乗り味で、レース指向がかなり強い。ヤマハのXシリーズは、明確にクロスカントリーバイクだ。ここをはき違えると、買う時に大間違いするのでご注意を。

さて。YZ250Xはオブラートに包まず言うとすれば、これはクロスカントリーレースでも中・上級者向けに位置づけられ、はっきりいってビギナーが乗るものではない。元々ベースになっているモトクロッサーYZ250はYZ450Fと同クラスのバイクだから、そりゃそうだ。YZ450Fが上級者以外の普通の人間に扱えるシロモノではないのと同じで、YZ250もビギナーからすれば雲の上の人の乗るバイクである。2005年には小池田猛が4スト相手にIA1でチャンピオン獲ってるマシンですからね?

YZ250XのエンジンはYZ125X同様に電子制御されたパワージェットをもったキャブレターでクロスカントリー向けにセットアップされている。YZ125XはYZ125に比べて様々なハードの改良点があるが、YZ250Xの場合はYZ250からハード面での改良点はない。エンジンをかけてみるとYZ125Xとはまるで別の一発一発の重たさがある爆発を感じる。バランサーも効いていない2スト250ccだから、エンジンの呼吸をつかみやすく、リズムよくスロットルを操作することができる。3速でエンデューロコースを走っている分には、すさまじく扱いやすい。トルクがある分、YZ125Xよりも扱いやすいかもしれない。エンジンの回転上昇は旧YZ125Xのようなところがある。じわじわっと回転が上がる、いい具合に鈍さのあるエンジンなので、急に吹けあがってすっ飛んでいってしまうようなフィーリングはゼロ。AAクラスのライダーたちは2ストの気持ちいい音を響かせながら走るけど、この域にはビギナーは達せないので高回転の話は割愛させていただく。とりあえず鈴木健二曰く「これが僕にとっては一番速い」そうです。

This article is a sponsored article by
''.