JEC全日本エンデューロ選手権はシーズン後半戦へ。この九州大会は12年ぶりの御所オートランドでの開催となった。暑さとスリッパリーな路面に翻弄されたライダーのリタイアが続出するタフなラウンドだった
圧倒の馬場、ルーキーシーズンを全勝で締めくくれるか
マディコンディションの悪評が高い御所オートランド。そもそもここは、いまや語り草となっているハードエンデューロ「G-IMPACT」の舞台である。セクションの難しさもさることながら雨に濡れると途端に氷の上のような路面に変貌するため、普段からスリッパリーな路面に慣れているライダーでも手に負えない。加えてトップライダーでさえ軒並みスタックする涸れ沢がリエゾンに使われたこともタフなレースになった要因だ。序盤でそのルートはキャンセルされたものの、一度奪われた体力は戻ってこない。残り体力ゲージがわずかしかない中、つるつるの路面を攻め続けられるタフなライダーの数はおのずと限られた。
JECのトップクラスであるIAクラスは長らく鈴木健二と釘村忠がトップを分け合う年が続いていたが、今季は一転してフルシーズン1年目の馬場亮太が全勝でここまで駒を進めた。事実上唯一のライバルである釘村忠はアンダーパワーの2スト200ccで果敢な挑戦を続けているが、この九州大会も馬場の勢いに及ばず。スペシャルテストの積算タイムで争われるオンタイムエンデューロは、モトクロス以上にミスが成績に響き、モトクロスライダーが1年目でこうも強かった例は少ないのだが、馬場はこの競技にマッチしているのかこのタフな局面をほとんどミスすることなく淡々とファステストタイムを積み重ねていくのであった。
全16テスト中、馬場は6つのテストで1位をマーク。釘村は9つだが、3度のミスが響いてしまった結果、トータルで馬場と39秒差をつけられてしまう。残り1つはタイトルホルダーの飯塚翼がゲット。飯塚は後半まで体力をもたせることができずペースダウンしてしまったが、これがなければトップ2に食い込む可能性もあったと思われる。
馬場によれば「今日のようなコンディションだとマージンを1割ほどとっているでしょうか。全開でいったらぶっ飛びますね。しかも、ミスしたらそこでレースが終わってしまうようなところが多いです。JECに出始めてラインチョイスでどうやってタイムを詰めていくのか理解しはじめたんですが、今日はあまり実践できませんでした。3周目くらいでラインを決め打ちしてしまってます。後半は釘村さんも離れていることがわかっていたので転ばないことを意識していました」とのこと。特に後半は小雨でコンディションが悪化したため、タイムをさらに詰めていくことが難しい日だった。
対する釘村は「クロステストで3回転倒してしまっています。序盤でミスしているので、だいぶ楽に亮太を勝たせちゃいましたね。集中力が途中で切れてしまう場面もあって、今後の課題だと感じました。ラインは毎周もっと縮められないかと模索しています。トップタイムは出ているので、精度を上げていくことが大事だと感じています」と言い、がむしゃらにマージンを削ってタイムを狙っていこうという意識が見える。2019年にISDEで感じた世界のレベルに少しでも追いつきたいと常々話す釘村、その視線は遠くを見つめている。
セカンドグループを抜け出すのは…
トップ2が異次元のレースを続ける中、セカンドグループもその勢いにつられて気を吐くライダーが少なくなかった。4位に入ったのは難病を抱えながらも参戦を続けている太田幸仁。3番手のタイムを2回マークしたうえでミス少なくテストを重ねていったことが結果につながった。5位にはスランプに悩む保坂修一、やはり2つの3番手タイムを出しているものの10秒以上を失った3つめのエンデューロテストで順位を落としてしまっている。何度もイタリアへ行き来し、今年はエンデューロGPで初完走を遂げた大神智樹は、序盤3番手に位置し好感触だったがやはり20秒以上をロストしたテストがあって、6位の結果。その背後にはルーキー酢崎友哉が25秒差7位で控えている。3位から7位までは2分30秒ほどの差の中にいて、その全員が純度の高い意識で上を目指している。ここから誰が抜け出していくのか、最終戦の北海道大会に注目したい。