モトクロスの本場アメリカにおいて、日本人としてはじめてファクトリーチーム「プロサーキットカワサキ」からAMAモトクロス/スーパークロスへ参戦している下田丈。プロ歴4シーズン目となる2022年、開幕に続き第2戦も現地から速報レポートをお届けする

2021年の最終戦、下田はここハングタウンを2位で終えている

2022 AMAモトクロス第2戦ハングタウンはサンフランシスコからおおよそ車で2時間、下田の住むカリフォルニア南部のロサンゼルスからは、車で7時間といえばその距離感覚がわかるだろうか。同じカリフォルニアにあれど、東京〜岩手くらいの遠さで、決して下田にとって地元ではない。さらにハングタウンはロサンゼルスよりも気温も高い傾向にあり、ライダー達を体力面で悩ませるラウンド。だが、下田は体力に自信もあるし、2021年の最終戦はここハングタウンで2位。下田にとってゲンのいいトラックだ。

下田本人は「今は、とにかくスタートだけ考えています。トップに食らいついていける位置でオープニングラップをまわりたい。開幕戦のフォックスレースウェイは、速いラインが1本しかないようなコースだったので、苦戦を強いられました。でもハングタウンはAMAのなかでも広いコースでラインもクリエイティブに選べます。

特にアップダウンが激しいので、上りの前のコーナーでいかにスピードを殺さないで走れるかが、大事になると思います」と事前にコメント。

画像: ハングタウンMX

ハングタウンMX

アームパンプが下田を襲う

AMAモトクロスの予選にあたるタイムドクオリファイでは、下田は開幕に引き続き不調。7番手タイムで2分8秒438。トップタイムは、開幕で結果を残せなかったチャンピオン候補のジャスティン・クーパーで2分5秒812。簡単に覆らなさそうな大きな溝がそこにはあった。

画像: スタートの背後に観客の丘。壮観なレーストラック

スタートの背後に観客の丘。壮観なレーストラック

もっとも懸念されたのは、下田が苦手とするスタートだ。MOTO1では出だしこそよかったものの、集団に飲み込まれてしまい10番手付近での立ち上がり。序盤でペースがあがらないのはいつもの下田の課題ではあるが、このMOTO1は今までの中でもペースの確立に手間取ってしまった感がある。通常であれば苦戦しないマックス・ボーランドのパッシングに時間がかかっただけでなく、プライベーターのデレク・ドレイクにパスされてしまったほど。これは、下田には珍しいアームパンプのせいだった。

ようやくタイムが出だしたのは中盤以降。7周目にベストラップをたたき出し、下田のスイッチがオンに。ここからは1周につき1名ペースで順位を上げ続け、5位でフィニッシュ。この後半の爆発力は開幕同様素晴らしいものだった。

画像: 出だしこそ悪くないが、MOTO1のスタートは大きく出遅れてしまった

出だしこそ悪くないが、MOTO1のスタートは大きく出遅れてしまった

画像: トリッキーなジャンプが多かったハングタウン

トリッキーなジャンプが多かったハングタウン

画像: プロサーキットスクワッドが、ジャレク・スウォルを追い詰める

プロサーキットスクワッドが、ジャレク・スウォルを追い詰める

画像: MOTO1は、スタートから飛び出したマイケル・モシマンが勝利

MOTO1は、スタートから飛び出したマイケル・モシマンが勝利

宿敵ジェット・ローレンスを追い詰めたMOTO2

そしてMOTO2ではまずまずのスタート。1コーナーを曲がった時点では中盤くらいの順位だったものの、2コーナー以降のこなしがよく、オープニングラップは5番手で周回。2周目には前を走っていたマイケル・モシマンが転倒を喫し、4番手へ。ルーキーのニコラス・ロマーノをかわして3番手にあがると、前はジェット・ローレンス、そしてクーパーの2名のみ。序盤にこのトップ2を視界にとらえるという、願ってもない好展開に。

クーパーとのタイム差は、この決勝ヒートにおいて縮まるどころか、下田の方が上回っていた。9周目、後半に入ったところで下田はクーパーをクリーンにパス。クーパーも余計なブロックラインを使うことがなく、下田とのスピード差を理解して正面勝負に挑んだように見える。勢いにのった下田はさらに前のジェットを捉え、追い詰めにかかった。ところが、下田はタイトコーナーを曲がった際にギアがニュートラルに入ってしまい、転倒して4番手へ。この転倒でペースを下げることはなく果敢に攻めつづけたもののタイムオーバー。5-4位で、シリーズランキングは3位を維持。

画像: この写真でみるかぎり、MOTO2も出遅れに見えるのだが、実際には好スタートである

この写真でみるかぎり、MOTO2も出遅れに見えるのだが、実際には好スタートである

下田は「MOTO1でアームパンプが出てしまいました。あまり僕の腕には起きないことで、ペースが上げられませんでした。やはりスタートで出られないと、ペースをうまく作ることができませんね……。

MOTO2はクーパーはだいぶクリーンにパスできたし、ジェットとの差も今回に限ってはあまり感じませんでした。ただ、転倒してしまった件、マシンにも課題があるなと感じました。以前から、1速でコーナリングを曲がるリスクを理解していたので、できるだけ2速で曲がるようにしていたし、ニュートラルに入らないようにしてあるんですが、それでもニュートラルに入って転倒してしまいました。今回のことがあってマシン側で解決できないものか、と考えています。あのまま2位で終わっていれば、総合で表彰台に乗ることができていたのでもったいなかったなと。

今日のレースで、今の自分は1位を狙えると思うことが出来ました。3戦以降も、やはり課題のスタートをうまく決めて、勝ちを狙いにいきたいですね」とのこと。

これまでの下田はスタートが出られないことに加えて、インテンシティ(アメリカのモトクロスで使われる用語の一種で「爆発力」)が足りず、序盤のペースも作れない、という2つの勝てない要因を抱えていた。しかし、このAMAモトクロス開幕から2戦を見るにもう十分なインテンシティを持っていて、スタートさえ決まれば序盤のペースもしっかり上げていけることがわかる。スーパークロスは不調だったが、下田は依然プロサーキットカワサキのエースで、チャンピオンを奪いにいくシーズンを走っているのだ。

画像: クーパーを追い詰める下田

クーパーを追い詰める下田

画像: いつになくインテンシティ高め

いつになくインテンシティ高め

画像: MOTO2、ジェットは辛勝だった。体調は酷く、いつも明るすぎるキャラクターが沈みっぱなし

MOTO2、ジェットは辛勝だった。体調は酷く、いつも明るすぎるキャラクターが沈みっぱなし

画像: 450MXは、ジェイソン・アンダーソンが総合ウィン

450MXは、ジェイソン・アンダーソンが総合ウィン

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