ハーレーが長年作ってきた「アメリカンバイク」の形があるように、往年の「パリダカ」を象徴する「アドベンチャー」の形がある。多くのバイクは、その形をしっかり守り、いわば売れ線を守ってきた。アドベンチャーでありながら、土の上を走ることを想定していないつくりであっても、その売れ線をだけはしっかり守ってきている。だが、このNORDEN901はまったくそのお作法から外れたバイクだ。アドベンチャーに、スタイルを持ち込む独自のデザイン。その上、土の上を走る性能には、しっかり優れている。なんてことだ。こんなセオリーから外れたバイクが、楽しくないわけないじゃないか。
画像2: 何でもこれでやってやろう。使い込んできたナイフのような、使い勝手の良さがある

スタンダード比で3cm車高があがる(XPLOR PROには、スタンダードと同じストロークのサスも存在する)のだが、これが不整地に入ると身長180cmの僕でも怯んでしまうほど。だけど、ひとたびセクションに入っていくとお世辞ではなく250ccくらいの感覚でするする走ってしまう。204kgもある巨体は、濡れたワダチなどで振られるとさすがに身体がこわばるものの、スロットルをあける感覚はまるで120kgのトレールバイクに900ccのエンジンを積んだかのようなフィーリングだ。フィールドが狭かったし、ギャップが少なかったから、そこまでXPLOR PROの恩恵は感じ取れなかったけど、相当にフレンドリー。

ためしにスタンダードのサスペンション車に乗り換えてみると、実はさらにフレンドリーさが増す。ある程度の入力がないと、ワダチなどで神経質な側面がみえたXPLOR PROと真逆で、小さなギャップもすっと吸収してくれる。エンデューロバイクと、トレールくらいのフレンドリーさの違いがある。が、チープなトレールのサスとは、これまた違って、高級感もあるし、減衰している感覚もある。かなり秀逸だ。だいたい、KTMの890アドベンチャーRとSの間くらいの性格で、サスペンションストロークもそのような設定だという。なるほどな、と思った。ミドルアドベンチャーの中でも飛び抜けて動力性能が高い890アドベンチャーRほどではないが、かといってオフをしっかり走れる。いい案配だ。

画像3: 何でもこれでやってやろう。使い込んできたナイフのような、使い勝手の良さがある

KTMの場合は、こまかく設定できるモードをラリーモードと呼んだが、NORDEN901はエクスプローラーモードと呼ぶ。スロットルバイワイヤの設定をハイスロ気味にするなら、このエクスプローラーモードが必須だが、こちらはオプション(¥26,906)。

最初はオフロードモードで試走してみたが、こちらは相当にスロットル操作が間引かれている印象がある。ラフに開けてもエンジンは行き過ぎることがない。ただ、瞬間的なパワーが欲しいときは、クラッチをつかう必要があるし、おそらく晴れた日にダートをオフロードモードで走ると、多くのライダーはだんだん慣れてダルに感じるだろう。そのくらい、ロースロットルだ。ただそのスロットル角度がローなだけではなく、急開もかなり押さえ込んでいる感があるので、スロットルとエンジンがつながっている感が少し薄い。

画像4: 何でもこれでやってやろう。使い込んできたナイフのような、使い勝手の良さがある

エクスプローラーモードにして、スロットルをラリー用のレスポンスにすると、ワイヤー式のスロットルになったようなダイレクト感がある。ちょっとひねればぐっと前に出るし、しっかりリアタイヤがスライドする。だが、それでも横に滑りすぎるなど、神経質さがないのは、おそらく電子制御のたまものなんだろう。この手のバイクは、電子制御がどこまで効いてくれるのかを把握して、電子制御まかせにしてガバ開けする乗り方が合っているのだと、聞いたことがある。そういう乗り方をするには、もう少しNORDEN901と仲良くなる必要がありそうだけど。

200kgオーバーのバイクで、土の上をわざわざはしりたくないよなぁ、と思っていたけど、いつのまにかこの巨体を操る愉しさに目覚めはじめていた。程度はとても低いものの、これならいろんなことができそうだとも思った。ハスクバーナが、プロモーションムービーでめちゃくちゃに冒険心をかき立ててる理由がよくわかる。NORDEN901なら、大抵のことはこなせてしまうだろうからだ。

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