スーパークロスも同じだったが、今年のコロナ禍によって史上初「週2戦」のタフなラウンドがAMAプロモトクロスにも設定されている。しかも、トラックは名門レッドバッド。難易度は高く、パッシングも難しいのだが、苦戦のなか下田丈は最終ヒートに解決策を見いだし、自身の最上位を更新。6位に入ったのだった。
「トップ3は抜きん出ているけど…」
下田は、ルーキーイヤーではないけれど、通例1年目はフルシーズンを戦わない。だから、今年の2年目はじめて走るコースがとても多いのだが、レッドバッドも初見のコースの一つだ。「予選もタイムが伸び悩みましたね。コースをしっかり見るのに、時間を使いました。レッドバッドは、抜きどころが少なくて、狭いなと感じました。だから、スタートが出れなかった3つのヒートは、うまく前に出て行けなかったんです」と下田は言う。テレビで見る限り、日本にはないレベルの広大なコースなのだが、実際にはラインがほぼ一本になってしまうレイアウトだそうだ。実際、レッドバッドはどのヒートも順位の入れ替わりがそう激しくない。
金曜日のレッドバッド1では、下田は2つのヒートをスタートで前に出れず、さらに後半位のライダー達を裁くのに時間がかかってしまった。結果的に、19-12位で大いに苦戦したという状況。NBCの中継に映ることはなかった。
だが、火曜日のレッドバッド2、モト2で下田は新たな試みを模索した。「他のヒート、スタートのタイミングはいいんですが、バウンドしてしまって体勢が崩れてしまっていました。サスペンションなどのアプローチでは、解決しなかったんですが、スタートのタイミングを少し遅らせたんですね。ゲートを超える瞬間を丁寧にしたというか、7番手でスタートを決めることができたんです」と。自分で遅らせるのは気分もよくないらしいが、結果的にいいスタートを切れたことになる。
前にいたのは、ジャスティン・クーパー。おなじくガイコで好スタートを切ったルーキー、カーソン・マムフォードは5番手にいたが、序盤でミスして先頭集団からは脱落していった。
クーパーを狙っていたのは、下田だけではなかった。後方から追い上げてきていた、ジェット・ローレンス、そしてタイトル争いをしているディラン・フェランディスがバトルをしながら下田の後ろに肉薄。クーパーを3人が追い詰める形だったが、ジェットとフェランディスは、早めにこれをパス。下田が取り残される形になる。このレッドバッドは、タイ・マスタープールの調子がすこぶるよくて、ほとんどのヒートでホールショット。この最終モトもやはり序盤のリーダーを務めたのだが、中盤は追い下げてジェットとバトルに、この2台は後半もつれてクラッシュ、運も味方したか下田の前のライダーが、脱落していく展開になった。
これまでペースがあがらないヒートを繰り返していた下田は、クーパーについていく形でペースを取り戻し、一時はクーパーをパスする場面も。「レッドバッドでは、6位を走るのも20位を走るのもあまり変わりませんでした。ペースも大きく変わらないですね」と下田は言う。「トップ3のペースはたしかに速いです。フェランディスには、僕ではまだついていけないのは事実です。でも、それ以外ならなんとかなりますね」と。チャンスがあれば、3位に入ることは不可能ではない。
残り4戦、最終ラウンドはパラレースウェイ。下田のホームといってもいいフィールドで、下田も「勝負をかけるならパラですかね(笑)」と言う。次戦スプリングクリークまでは、ほんの少しレッドバッドで無理をした分、時間がある。肩の調子も、ほぼ全快に近く、後半戦に期待が持たれるところだ。