極めて個人的な思い出ばなしになってしまうことを、最初に謝っておきたい。故秋元一男さんと初めて会った時のことは、あまり覚えていない。たしかKTMジャパンの初期の頃に、メカニックとして働いていたんだったと思う。秋ちゃんは、あるときはエルカミーノ友達だったし、あるときは吞み友達だった。ふざけた話題が多かったけど、世界GPを渡り歩いていた時代の話は、何時聞いても半端じゃなくスケールが大きかった。そんな秋元さんが、晩年まで作り続けたのが、マリオスポーツのチャンバーである。
マリオスポーツのチャンバーが、よみがえる
マリオスポーツは、その終末期をある自動車工場の脇で迎えた。たまたま、うちもこの自動車工場と親しくしていたから、最後の頃まで秋元さんのことを見ていた。だんだん、痩せ細っていたけど、それでも没後の話をきくと「注文があったチャンバーも、いくつか途中になっていた」そうだから、ずっとチャンバーを作り続けてきたんだろう。
今回のリプロは、その自動車工場に遺されたチャンバー用のジグを用いたものだ。秋元さんとも親交があったライダー小坂竜也が段取り、レーシングショップヨコタというチャンバーを制作できる工場に持ち込んで、複製にこぎ着けた。
マリオスポーツ
リプロダクトチャンバー
¥55,000(税込)
YZ125(X)用
番長レプリカ
番長Revspecの2タイプあり
※注文は、小坂のフェイスブックへ
秋元さんが遺したマリオチャンバーは、舶来品とは、全く特性が異なり、唯一無二のチャンバーです。秋元さんが亡くなってもうすぐ3年が経とうとしています、現存するマリオチャンバーも少なくなり、自分のチャンバーにも傷みが目立つ様になりました。
このままでは、謹製マリオチャンバーが無くなってしまうと…
そんな中、マリオチャンバーYZ125番長の開発
ライダー〇〇氏に相談した所、秋元さんの工房にチャンバー制作治具が残されていると聞き、
工房の全てを引き継いだ〇〇自動車代表に、制作治具を譲って欲しいと懇願。
〇〇代表から、眠らせて置くのは勿体無いからと、無償で譲渡して頂ける事になり、制作して貰える先をあたりました。
何件かあたるも、難易度の高さから断られたりしましたが、ミニバイク界の老舗RSヨコタさんが、治具があるならやってみましょうと、引き受けて貰える事になり治具一式を持ち込みました。
出来るだけオリジナルに忠実にとお願いし、製法もエキパイからダイバージェントコーンまでを水圧式、コンバージェントコーンまでを手巻きで再現して貰いました、制作機具の違いから追加治具が必要になり、治具代も含めるとなかなかのお値段になりましたが、主旨に賛同して貰った仲間の分と合わせて、初回発注は、3本!
待つ事、3ヵ月…ようやく形になり、本日試走となりました、細かい部分では、ダイバージェントコーンの合わせ面の波打ちがあったりと、オリジナルに及ばない部分もありますが、出力特性は、遜色無く再現されています。
二度と手に入らないと思われたマリオチャンバーが、リプロダクトと言う形で入手可能になり、
破損を気にせず思い切りアクセルを開けられる!
まだ、手にした事の無い人が、マリオチャンバーのテイストを味わう事ができる!
リプロダクトには、倫理面で賛否両論有ると思います。
当初、営利目的で製作した訳ではありませんので、販売の予定はありませんでしたが、問い合わせがありましたので、確認した所、受注生産と言う形で、50,000円税別で提供が可能だとの事です、要望があれば取り次ぎします。
リプロダクトで金儲けとの批判も有るかと思いますが、舶来品の型押しチャンバーが3万円する世の中、水圧成形+手巻き国産チャンバーが5万ですから、材料費と人件費ギリギリです…
何件も断られる中、私が無理言ってお願いしたので、その批判が横田さんに向けられる事だけは、避けたいのです。
私の主旨は、マリオチャンバーが入手出来ない今
製作出来る人がいるうちに、秋元さんが遺したマリオチャンバーを1本でも多くこの世に残す為に、批判覚悟でリプロダクトする事
2スト市販車が無くなり、多くのチャンバー屋さんが廃業するなか、躊躇している暇はありませんでした…
ただ一つ、心苦しいのは、秋元さんに許可をいただく事が出来ない事です…
小坂は、このようにこのプロジェクトについて綴っている。
エンデューロには、たくさん秋元さんにお世話になった人々がいる。おの付き合いの深さも、様々だろうし、場合によっては秋元さんのものは、秋元さんのもののままにしておいてほしい、という人もいるだろう。
だから、極めて個人的な思い出からしか、このプロジェクトにはアクセス出来ないんじゃないかと考えた。稲垣個人は、このリプロの話を聞いて、だったらYZ125を一台買いたいとも思っている。秋ちゃんの顔を思い出しながら、バイクに乗る日を絶やしたくはないからだ。