サイズ感や細さを考えるとスポーツスターが最適
70年代のチョッパーを現行機種で見事に再現!
ミニエイプバーと呼ばれるアップライトなハンドル、フロントエンドを強調する大径21インチホイール、そしてとにかくスリムで装飾を省いた車体…。
これぞ正統派と言わんばかりのトラディショナルチョッパー、それがセブンティーツーだ。
軽快な走りをウリにしているスポーツスターなのに、なぜゆえにチョッパー…⁉ って思う人もいるが、スポーツスターだからこそチョッパーに仕立て上げるのに相応しい。
まずチョッパーは細くなければいけない。
そんな定義を誰が決めたかって聞かれても、昔からそうなのだ。
目一杯長く細く見せようと車体はカマキリのように華奢で、ハンドルだけが高く、両足を投げ出すようにして乗るフォワードステップがそこにセットされるのがセオリー。
このとき、スポーツスターの細さが活かされ、小振りな燃料タンクやシンプルなソロシート、スッキリとしたテールエンドが全体のムードにじつによく似合う。
だから、太くボリューム感のある現代のFLモデルより、スポーツスターの方が現行モデルでチョッパーカスタムをつくりあげるなら、しっくりくるのだ。
もともとチョッパーは70年代のカスタムトレンド。
車名の「セブンティーツー」はその発祥の地、イーストロサンゼルスを走るルート72に由来し、その時代へのオマージュというわけ。
タンクに施されたキャンディーフレークのペイントといい、ホワイトリボンタイヤといい、いまとなってはオールドスクールと言える70年代の匂いがプンプン漂っている。
このスタイルさえあれば、乗り味なんて二の次というのがこれを選ぶ人の正直な気持ちだろうが、走りも快活だからまたいい。
エンジンは全域で力強く、たとえば高速道路で追い越しをかけるとき、シフトダウンをしなくてもアクセルをもうひと開けするだけで悠然と加速してくれるのは、883にはない1200ならではのもの。
そして、細身のタイヤと大径タイヤによって、ハンドリングだって思いのほか軽快。
コーナーではハンドルを切る感覚よりもスポーツバイクと同じように腰から曲がっていけば、素直に車体が寝ていき狙ったラインを外さない。
チョッパーになっても、スポーツスターならではのすばしっこさは健在なのだ。
拳を高く突き上げ、両足をダランと垂らして乗れば、意味もなく気怠い気持ちに。
頭を少し斜めに構えて流れる景色を見ると「オレってワルだぜ」みたいな、男なら一度は憧れるアウトローな世界に自分がいるかのよう。セブンティーツーとなら、現実逃避のショートトリップにすぐに出かけられそうだ。
SPECIFICATION
全長×全幅×全高 2255×930×1270㎜
ホイールベース 1530㎜
シート高 710㎜
車両重量 254㎏
エンジン型式 空冷4ストOHV2バルブ
V型2気筒
(Evolution)
最大トルク 8.87kg-m/3500rpm
総排気量 1201㏄
ボア×ストローク 88.9×96.8㎜
燃料タンク容量 7.9ℓ
レーク角/トレール 30.1°/135㎜
変速機形式 5速リターン
ブレーキ形式 前:ディスク 後:ディスク
タイヤサイズ 前:MH90-21
後:150/80B16
PHOTO:松川 忍/南 孝幸/関野 温 TEST RIDE &TEXT:青木タカオ MODEL:古澤 恵