巨大なツインエンジンを駆る、大陸冒険時代は終わりを告げ、現代のダカールマシンは2011年から450ccまでの排気量に制限されている。今回は、ホンダが誇るファクトリーマシンCRF450RALLYを題材に、現代のダカールマシンを解剖してみよう。

画像: 2019年式、つまり今現在おこなわれているダカールラリーを走っているCRF450RALLY

2019年式、つまり今現在おこなわれているダカールラリーを走っているCRF450RALLY

車高は高く、そして長い

画像1: 車高は高く、そして長い

現代のオフロードマシンの基礎となるのは、450ccクラスのモトクロッサーだ。97年のYZM400Fを皮切りに、それまで2ストロークだったモトクロッサーが各メーカーで一斉に4ストへと舵を切る。それまで作り上げてきた骨格や基本構成を受け継ぎながら、次第に現モトクロッサーへと進化を遂げてきた。

画像: 2013年のCRF450RALLY。CRF450Xをベースにモディファイ。当時Xに採用されていないPGM-FIを搭載している。

2013年のCRF450RALLY。CRF450Xをベースにモディファイ。当時Xに採用されていないPGM-FIを搭載している。

CRF450RALLYの場合、24年ぶりのダカールへのファクトリー参戦にあたって制作された2013年のマシンがCRF450Xをベースとしている。この2013年の復帰第1戦でTeam HRCが得たのは、既存のCRF450Xがベースではエンジンパワーが不足することだった。2014年、新生CRF450RALLYとしてダカールに現れたのは、まっさらな新設計のマシンだった。

画像: 2014年のCRF450RALLY。まさにフルモデルチェンジで、モトクロッサーであるCRF450Rをベースとした部分はほとんど無い。エンジンはDOHCを採用した、新設計のもの。フレームワークも一切が変更された。

2014年のCRF450RALLY。まさにフルモデルチェンジで、モトクロッサーであるCRF450Rをベースとした部分はほとんど無い。エンジンはDOHCを採用した、新設計のもの。フレームワークも一切が変更された。

基本的に現世代のダカールマシンは、車高が高く、そして車長も長い。正確な数値は公表されていないが、180cmのライダーがまたがって、つまさき立ちになるレベルで高い。

画像2: 車高は高く、そして長い

ロングな車長を支えているのが、今季よりHRCをサポートしている合志技研のスイングアームだ。CRF450Rや話題のCRF450Lなどのスイングアームを本田技研に提供している合志技研ゆえに、そのファクトリーの要求する品質に応えることができるのだろう。

画像3: 車高は高く、そして長い

かつて採用されていた、Team HRCのスイングアーム。ダカールには一定量の水を持って走らなければならないルールがあり、当時としては画期的なアイデアとしてスイングアームに水を入れていた。容量を稼ぐための溶接痕や、水を排出するためのバルブが生々しい。(なお現在は、スイングアームに水はいれておらず、クランクケース前側に水タンクを装着する。チーム代表の本田太一氏によると、スイングアームの水は抜き取りにくく、抜き打ち検査の時などに時間がかかってしまうことで変更したとのこと。特殊な構造になっていてバネ下重量の増加によるマシンへの影響はほぼ皆無だったそうだ)

画像4: 車高は高く、そして長い

こちらが2018年のスイングアーム。2019年モデルとの変更点は無いとのこと。

隠された機能美、カーボン外装

画像1: 隠された機能美、カーボン外装

CRF250RALLYの発売時に、CRF450RALLYからテクノロジーが受け継がれたと公表された、外装。こちらのスリットは、前側から受けるエアを排出することで空気によるカーテンのようなものを作り、ライダーへの風による負担を防ぐもの。また、見ての通りクイックファスナーが装着されていて、あっという間にメカニックが現地でマシンを丸裸にすることができるように設計されている。過去にはモトGPで使われているさらに小型のクイック式ボルトが使われていたが、現在は通常のクイックファスナーへ戻った。

画像2: 隠された機能美、カーボン外装
画像3: 隠された機能美、カーボン外装

ガソリンタンクは、クランク脇まで伸びる前側と、リアに分かれている。総容量は33.7L。これでも給油タイミングでトラブルを引き起こすほど、ダカールは長い。なお、サブフレームはモノコックのカーボン製。

骨格を変えたことでエアクリーナーが受けた恩恵

画像: 骨格を変えたことでエアクリーナーが受けた恩恵

こちらは、エアクリーナー。通常シート下に格納されるものだが、14年のフルモデルチェンジで位置を変更。フレームのとりまわしだけでなく、エンジンのダウンドラフト化の影響もあるが、とかくこの位置だとホコリを吸ってしまう量がまるで違うという。あれだけサンド路面を走るダカールラリーで、フィルターが丸見えになるほどの空気孔をあけられるほど、効果があるそうだ。

一世を風靡した高出力

パワー不足に悩まされた2013年のHRCに意識させたのは、サンドにおける圧倒的なパワー。

画像: 一世を風靡した高出力

特に、いま走っているペルーにおける反省点を鑑みていることもあって、70%がサンドと言われる2019年のダカールラリーはHRCにとってまさに好都合と言うべきもの。公表されているのはOver 45kW(≒61PS)といった数値。

このDOHCになってから、HRCはパワーにおいて最大のライバルKTMに対し優位であると言われてきた。これは、HRCが戦ってきた上でも、最高速の違いを如実に感じるところであったと言う。レースにおいて、2018年のASOによる通知ではHRCは実測182km/hのトップスピードを誇るという。対してKTMは179km/hほどではないかとHRCサイドでは予測している。KTMは、2018年に450RALLYをフルモデルチェンジしてきたことで、それまでの差を埋めてきたと言われているが、現2019年では「大きな差はない」と言ったところだろう。また、最高速が結果に与える影響は、年によっても変わってくる。

耐久性に関しては2018年に大きくブラッシュアップ。高回転域を長く使う場合に、疲労がたまっていく、つまり最高速を誇るJ・バレダが使う高回転域にてこをいれた。HRCにおいては、ダカールラリー中エンジンを交換しないプランでレースに参戦しており、つまりは8000kmのレーシングスピードに簡単に耐えうるだけの耐久性を持っているのがダカールマシンだ。

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