モータースポーツが世界でも随一に盛んな北米において、モンスターレースの一つとしてあげられるのが「GNCC」グランド・ナショナル・クロスカントリーだ。現在日本で人気のあるJNCCは、まさにこれをベースとしていて、長年GNCCとJNCCは提携もしてきた。その交流の主立ったものとして、交換参戦がある。
日本においてGNCCのランカーが来るのは、まさにゲストと呼ぶべきもの。彼らの圧倒的なスキルとスピードに、毎年驚嘆の溜息が漏れる。迎え撃つJNCC側のトップライダーが勝てることは、ほとんど無い。「いかに、その超絶なライダー達に、1周でも食いついていけるか」が、まず大事なテーマだったりする。
逆に、日本からGNCCにも毎年参戦が予定されている。これまで1名ずつだったところ、今年からウィメンズの最上位を加えて2名が派遣されることになった。2018年は石戸谷蓮と、石本麻衣の2名がスノーシューラウンドへと旅だった。
土砂降りの野原で、助けを乞う PM BIKEレース 15:00頃
石戸谷蓮は、その時、絶望にうちひしがれていたかもしれない。底抜けに明るく、どんなことがあっても落ち込まない石戸谷だけど、GoPro映っていたその風景は散々なものだった。
そういえば、さっきからエンジンがちょくちょく止まっていた。雨の影響なのかもしれない。水をどこかから吸ったのか。プラグか。ともかく、エンジンがかからないのだ。USAのBetaファクトリーで手配してもらったRR4304Tは、すこぶる調子がよかったものの、ここにきてうんともすんとも言わなくなってしまっていた。石戸谷が参戦したXC1Proクラスがはじまって、おおよそ40分くらいだろうか。
手を尽くしてもダメだった。石戸谷は天を仰いだ。全長約34kmの深い森の中のコースで、ぽつんと取り残されている。歩いて帰ることすらできないのだ。
石戸谷「すごく難しいところは、ない。チャンスを感じる」
R・ラッセル「例年に比べ、非常に難しいよ」 レース前日 21:00
石戸谷は自信家だ。ただ、当然その自信は根拠がある。
「2015年に参戦したユナディラとは、まるで違いますね。全面にわたってガレていると思う。でも、難所をみたところ走れないところはないんです。バイクは今回、4スト430ccを用意してもらっています。すごく久しぶりの4ストなので、これに乗るのが楽しみなんですよね」と言う。
2週間前に、世界最難のレースエルズベルグロデオを走ってきたばかり。それに比べれば、たしかにとるに足らないのは間違いがない。
石本麻衣も、ご飯を食べながら「すごく楽しみ」と顔をほころばせた。