全性能を連携して変更し“Ⅱ”へと進化‼
ピレリのディアブロ・ロッソ・コルサと言えば、レースだけでなく、サーキット走行会などのハードユースのライダーに絶対的な支持を受けているタイヤだ。このタイヤ、支持される理由はたくさんある。その理由のひとつは、メガスポーツや大型のネイキッドモデルなど重たいバイクであろうとフルバンク時の高荷重に耐えてリニアなコーナリング特性を維持できること。それでいて、軽量、ハイパワーなスーパースポーツモデルの深いリーンアングル、超高速コーナリングで強力なグリップ力や旋回フォースを発揮する。しかもそのグリップレベルがほぼレーシングタイヤなみ。
ライン変更するときなどのタイヤの応答が素直で、滑リ出しなどの挙動が、やはりレーシングタイヤなみに把握しやすい。
ストリート用ハイグレードスポーツタイヤに必要な諸項目を高いレベルで手に入れていることが「コルサ」の魅力とされてきた。
「2」へは全てを連携して複合的に変更
そのコルサが更改されて「コルサII」になったわけだ。変わったのはトレッド面のクラウン、つまりラジアス方向に配されるフロントで2段、リアで3段階に変化するエリア別ラバーコンパウンドの微妙なエリア設定とコンパウンドタイプ。それにタイヤのカーカスに特殊繊維リヨセルという強力な伸縮性と破断強度を併せ持つ素材を使った独特の剛性コントロールを施したことだ。トレッド曲面形状を表現するラジアスでも、複合的に違う曲率を繋げたマルチラジアス方式を採用しているが、従来モデルとの違いは僅かだ。
おそらく、ケーシング剛性が変わったため、それに合わせた深いリーンアングルでの接地圧確保か増強か、直進時の動きの軽さなどを狙った変更だろう。
ベットリと……へばりつく感触!
昼過ぎだというのに、雪が舞うような、かなり冷寒な気温の中での試乗だ。
最初に選んだのは車重がありトルクのカタマリのようなパワー特性のCB1300SF。
短い富士のショートコースの1周目はさすがに滑る。SFの浅い許容リーンアングルでも、そのギリギリまで寝かそうとするとフロントが簡単に切れ込む。ところが1、2度、急制動で熱が加わった2周目のS字あたりから接地感が急激に増し、車体の節度もそれまでと比べ物にならない程になる。3周目の1コーナーでは既にステップだけでなく、フレームを擦って車体が弾かれようが、タイヤが全ての不穏なスライド挙動を収束させてしまうようになっていた。コルサIIはコレまでよりかなり暖気が早いように感じる。
このタイヤの本領発揮は肘が路面に近づくほどの深くて荷重の乗るペースでの性能なのだが、逆カントでSFの強大なトルクをくらえば簡単に滑るような状況でも、このタイヤはアクセルを開け続けられる。ベットリと路面にへばりついてる感触があった。
次にスーパースポーツモデルのS1000RRでパワーやトラコンを「レース」モードに設定して試乗。これが…このショートコースでは何の不安もなくフルバンクからフルバンクに切り返せて、そのフルバンク状態でのライン変更や速度調整などをゆとりのあるグリップ力と機動性でやってのける。ただ、気温が低かったのと、セミアクティブサスなどによる強力なスタビリティの影響か、このバイクとS1000Rだけリアタイヤのサイドコンパウンドと中間コンパウンドの継ぎ目に深めのアブレーションが出ていた。今回、サーキット走行ということで、空気圧が上がりすぎるのを警戒してリアは指定よりコンマ4下げの2.5で用意されていたが、ハンドリングの塩梅も良かった。ちなみにアブレーションは無闇に空気圧を下げて走るときのほうが起きやすいそうだ。
このタイヤに限らず、やたらと空気圧を下げたがる日本のライダーは注意するべきだろう。あくまでもセッティングは程よい幅でアレンジしてみること。レーシングタイヤほどではないが、これはそれに準ずる構造やコンパウンドを使用している。タフなツーリングスポーツタイヤとは違う。
暖気を含め、その扱い方にも多少の知識が必要だと思っておこう。そうすれば魔法のグリップ力が手に入るのだ。
写真/柴田直行