気軽に付き合えるフルカウルスポーツ
400クラス久々の新星、ニンジャ400Rはクラス唯一のフルカウルスポーツ車として人気の高いモデル。その人気の秘密な何なのか、試乗しながら迫ってみよう。
人に優しい「等身大の扱いやすさ」
このニンジャ400Rは、輸出用の650ccモデル・ER-6fのスケールダウン版。外装の色やエンブレムステッカーが違うだけでフレーム、足まわりなどは完全に共通だ。
エンジンはボアもストロークを小さくしたので、クランク、ピストン、シリンダーなどを変更。さらに日本の騒音、排ガス規制に合わせて吸排気系も新作されている。
そのベースとなったER-6fのパラレルツインエンジンは、ZX-12Rのスポーティな直4を半分に割ったような設計で造られている。血統として、ストレス無く回る元気のいいエンジンだ。
さて、この400R。「ニンジャ」と勇ましいサブネームが付いているが、ベースのER-6fともども、NK版の「n」より落ち着いたハンドリングにまとめられた快適指向の強いモデル。クセのない操縦性で、400クラスにしては、ネバリのある、しっとりとした安定感がある。カウルの重みがいい感じの落ち着きを生んでいるのだ。
もともと、ER-6シリーズは操りやすく、取り回しも楽なストリートコミューターとして誕生している。だが、その「ストリート」とは欧州のストリート。シャシーは欧州の高い速度レンジにしっかりと対応したものなのだ。2本ショックを備えた既存の400NKたちとは求める頂が違う。
高速直進時、コーナリング時の安定性はやはりケタ違いに素晴らしい。大型のモデルと一緒に高速道路で一気に距離を伸ばすようなツーリングをするのであれば、疲れ方がまるで違ってくるはずだ。
それに足まわりの味つけがいい。快適である。基本的にソフトめで、特にフロントはフワフワしすぎるような動きをする。だがハンドルの節度はしっかりしているし、荒れた路面でも意外なほど接地性はいい。普通、減衰を弱く感じるようなフォークは連続する凸凹に弱いのだが、このバイクにはそれがない。だからツーリング時には疲れにくい乗り心地を確保でき、そこそこスポーツしたときにも頼りになったりする。
対して、リアはある程度ストロークすると急に強い反発力を生んで荷重を支えるタイプ。基本的にはスムーズでソフトなのに、タンデムや重積載時でも、ワンセッティングでバランスのいい作動をする。シンプルなレイダウンモノショックだが、快適でいて実用的。適応力のある足まわりだ。
エンジンの使い勝手もいい。パンチのある650に比べると、400Rはまろやかで優しいキャラクター。低いギアでの低速時のみ、スロットル全閉から無神経な操作をすると同クラスの直4よりショックは大きめだが、スロットル開度の強弱といった操作には非常に柔軟でかつ素直。これは全回転域を通して同じ感触であり、これにより高回転域でも気を遣わず、イージーに操れる。
4000回転以下では歯切れのいい排気音とネバりがあるものの、力についてはややマイルドな印象。だが4000回転以上になると吹けも軽快になり、トルクにしっかりとしたコシが生まれる。やはり応答性はマイルドだが、峠道で気楽にスポーツできるくらいの力はみなぎっている。
さらに7500回転以上になると吹けの勢いもコシの強さも一段と力強くなる。何だか、ニンジャ250Rのエンジンのやさしい吹け上がり感はそのままに、2倍ほどパワーを強力にしたようなフィーリングなのだ。街でも、ツーリングでも、峠道でも、徹底的に従順である。
パートごとに紹介していくと、ただ扱いやすいだけの主張のないバイクのようだが、これらが融合すると、このクラスとしては程よく軽く、程よい大きさで、侮れないスポーツ性能や高速性能まで備えた優秀なツーリングスポーツとなる。そして、欧州のストリートで鍛えられた、ステージを選ばないオールマイティな走りも魅力。高速域にも強く、快適な乗り心地もある。タイ生産によりかなり抑えられたプライスも大きな魅力だ。
(写真/南 孝幸、文/宮崎敬一郎)
KAWASAKI NINJA400R(2012年)主な諸元
全長/全幅/全高:2100mm/760mm/1200mm
ホイールベース:1410mm
最低地上高:145mm
シート高:790mm
装備重量:203kg(ABSは207kg)
キャスター角:25°
トレール量:106mm
エンジン型式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
ボア×ストローク:68.4×54.3mm
総排気量:399cc
圧縮比:11.0
最高出力:44PS/9500rpm
最大トルク:3.8kg-m/7500rpm
燃料噴射方式:電子制御燃料噴射
燃料タンク容量:15L