1990年代から国内外のモトクロスシーンを追い続けているイラストレーター・えかきやたまさんが、レース会場で感じた熱気やライダーの声、その素顔を独自の視点で切り取る「たまレポ」をOff1.jpで連載。第二弾は、2026年全日本モトクロス選手権に新体制「Team yusuke with CARRY」で挑む、渡辺祐介選手にインタビュー

画像1: たまレポvol.2 新生「Team yusuke with CARRY」、渡辺祐介とCARRYの新たな挑戦

こんにちは、あるいははじめして。モトクロス追っかけイラストレーターえかきやたまです。ご存知ない方のためにご挨拶方々簡単な自己紹介を。えかきやたまは90年代半ば、モトクロス専門誌DIRTCOOLにて「えかきやたまの追っかけレポート」というイラストレポを連載しておりました。ジャパンスーパークロス(JSX)を皮切りに、AMASX、AMAナショナルMX、全日本モトクロス、FMXを取材、イラストレポの他IAボイスレコーダーというミニインタビュー連載や幾つかのインタビュー記事に携わらせていただきました。DIRTCOOL誌の休刊と前後してモトクロスニュースサイトThe Newsmotoにて約10年「たまモト」というタイトルで全日本モトクロスを中心としたレポート&インタビュー記事を発表してきました。……といった経歴ののち、この度、活動の場をOff1.jpさんに移し全日本モトクロスを中心に取材、記事を発表させていただく運びとなりました。今までと同じく現地レポやインタビュー記事を通じて、モトクロスの面白さやライダーの素顔などをお伝えできればと思っております。すでにご存知の方もはじめましての方も何卒よろしくおねがいいたします

画像2: たまレポvol.2 新生「Team yusuke with CARRY」、渡辺祐介とCARRYの新たな挑戦

昨年の最終戦、渡辺祐介選手に「来年はどうするの?」との質問した際「新しい体制になると思います。楽しみにしててください」と奥様と二人で応えてくださいました。「めっちゃ楽しみにしてるね!」とお別れして数ヶ月。年も明けて1月の末にSNSで発表されたホンダへのマシンスイッチ&Team yusuke with CARRYという新チーム体制に「そうきたか!!」と唸りました。新しいチームを立ち上げるらしいという噂は耳にしていたのですが、あのCARRYとタッグを組むとは! という驚きと、これはもうかっこいいチームになるのを約束されているようなモノじゃないか?! というワクワクした気持ち、渡辺祐介選手とCARRYという意外な組み合わせに「なぜに?!」という疑問が同時に湧き上がりました。さっそく渡辺選手に連絡を取り、インタビューの機会を得たわけですが、渡辺選手と奥様・怜奈さんのお話をうかがうにつれて「これはCARRYさんにも語ってもらいたい!」との思いが強くなり、開幕前の超多忙なハタボーさんこと代表取締役の畑中豊氏にも無理をお願いしてインタビューさせてもらいました。

というわけで、今回はTeam yusuke with CARRYの誕生について、監督でありライダーの渡辺祐介選手、渡辺選手の奥様でありチーム統括マネージャーの渡辺怜奈さん、チームのトータルデザイン他多方面でチームを支えられる株式会社CARRYの代表取締役・畑中豊氏のお三方に語っていただくインタビューとなります。

写真提供:CARRY

Team yusuke with CARRY誕生までの経緯

画像: Team yusuke with CARRY誕生までの経緯

たま:まずは新しいチーム結成、おめでとうございます

渡辺:ありがとうございます

たま:びっくりしました(笑)

渡辺:いやあ、僕も嫁の「アレ(後述)」がなければたぶん走ってなかったと思います。

たま:なんかね、新しいチームを作るらしいよって話はさらっと噂で聞いていたんですけどCARRYさんと繋がるというのは想像していなかったものだから、そのあたりの経緯、まずヤマハさんとの契約がなくなりましたというのは昨年終盤に聞いていたんですけども、その後どんな考えでこの結論に至ったのかを伺ってよいですか?

渡辺:まず(日本の)モトクロス界の現状なんですが、メーカーさんと契約をして、ファクトリーライダーとして走れる環境まで行けるのって本当に一握りじゃないですか。今から上がってくる若手ももちろんそこを目指して走ると思うんですけど「最終的な環境はそれ(ファクトリー)だけじゃないんだよ、こういうやり方もあるよ」っていうのを見せたいと思ったんです。そうじゃないと、ファクトリーに入れない、入れる見込みがないから引退してしまうとか、そういうケースが実際増えてきていて、引退する子たちが多くなってきたのが事実なので。だから逆に「こういうやり方(チームを立ち上げる)もあるんだよ」って、僕が長年メーカーの人間として走らせてもらってきたからこそ、できることなんじゃないかなって思ったんです。

たま:なるほど。

渡辺:実際、僕も2年間連続で怪我して、ヤマハさんとの契約更新がないってなった時には本当に辞めようかなって思った部分もあったんですけど、そこで、嫁さんと話し合って、彼女が「今できることまだあるでしょ」って「それだけレースが、バイクが好きなんだったら、辞めるべきじゃないでしょ」って言ってくれて。それで自分でチームを立ち上げようと。ハタボーさん(CARRY・畑中豊氏)とは家族ぐるみでお付き合いさせてもらってましたし、元々お世話になってた方だったんですが、そこで嫁さんが「こういうチームをやろうと思ってるんですけど」とお声がけして賛同してもらった形ですね。

たま:祐介君としてはチームを立ち上げるという考えはあったけども、CARRYさんと組むというのは考えにはなかった?

渡辺:もちろんCARRYさんとはお付き合いも長いし、いろいろお世話になるつもりはあったんですけど、嫁と「この提案をハタボーさんに相談してみようか」って話をして、実際に相談したら「CARRYとしてはこんな形で力になりたい、こういう感じでやらせてほしい、一緒にやろう」というお返事をいただいて、with CARRYとしてレースをすることになったんですね。

たま:ウエアであったりヘルメットやマシンのグラフィックといったものをCARRYさんにお願いするっていう考え自体は元々あったけどもwith CARRYという形でCARRYさんの割合がすごく大きくなるというのは、渡辺選手からではなく畑中さんの方から提案していただいたということですか?

渡辺:はい。普通に「じゃあここまでやっちゃうよ」みたいな感じで、僕らとしても本当にびっくりしました。でも、実際やりたい事というのが「ファクトリーよりかっこいいチームを作りたい」ということで、それはCARRYじゃないとできないってハタボーさんはずっと言っていて、僕としては…ファクトリーライダーじゃなくてもこれだけかっこよくて、しっかり活躍できる環境を作れるんだよっていうのを見せたかったので…

たま:利害の一致というか理想の形が一致して「一緒にやろう」という結論に至ったんですね。

渡辺:はい。実際今までモトクロスにそういうチームがあったか? って言ったら失礼になるのかもしれないんですけど、ロードレースにしても四輪にしてもかっこよくやってるチームっていっぱいあるじゃないですか。僕も、ちょうどこの30歳っていう節目の年にチームを作って、もちろんシリーズチャンピオンをがっつり目指して走りますし、後は後輩育成もできるチームを作っていけたらなって思って。

たま:今までもライダーが作ったチームというのはあったけれども、どちらかというとある程度成功したライダーが現役時代のメーカーへの貢献に応じて引退後にそのメーカーのサポートを受けてサテライトチームとして成り立つみたいな形が主流だった気がしますよね。

渡辺:そうですそうです。

たま:そういう流れではなく、ライダーとデザイナーという異色の組み合わせでゼロからチームをつくっていくという新しい形…

渡辺:そうですね。みんなで作っていく…

たま:ホンダというメーカーのサポートはあるにせよ、今までとは違う成り立ちで作るチームと言う事ですかね。ホンダとの契約というのはどこから来たお話なんですか?

渡辺:もともとずっと声をかけてもらってたんです、ヤマハの時から。ずっと声をかけてもらってたんですけど、それをずっと断ってきてて。僕としても、チーム立ち上げってすごい覚悟がいることですし、ここまでずっとヤマハ一途で育った人間が最後に選んだのはホンダですっていう風なのがいいよね、みたいな感じで。

たま: ホンダさんに「これからこういう経緯でチームを立ち上げますのでお願いできますか」って言ったら快く引き受けてくださったみたいな?

渡辺:はい、ホンダのチームとして立ち上げてもらえるのは本当に嬉しいという話で。ホンダさんとしても後輩育成に力を入れてほしいし、そういうチームでありながら自分も最前線で戦える人材はなかなかいないからって言われたんですね。チームを作ったから監督に徹しますとかじゃなくて、本人もがっつりチャンピオンを目指してトップ争いできる状態でチームを作ってほしいと言われたので、そこは僕がしたい事と同じだったので。

たま:ちょっと前の庸平くん(小島庸平・現Bells Racing監督兼選手)がそれに近い形でしたね。ただ、現状、庸平くんはフル参戦を終了して後進育成の方に軸足が移動しちゃってるから…チームを率いている人が現役でチャンピオンを目指すという、そこがホンダさんにとっては重要だったってことでしょうか。

渡辺:そうですね。監督になったからトップは目指しませんよっていうのは、正直僕もやりたくなくて、やるからにはそれに賛同してくれる方…ハタボーさんにしても他の企業さんにしてもそうなんですけど、僕がちゃんとチャンピオンを目指して、しっかりレースをできる環境っていうのが条件としてあって。なのでホンダさんがおっしゃるのは僕にとっても一番理想的な形なんですね。「ゆくゆくは後輩育成」なんですけど、今年は僕一人でしっかりやりたいなと。

たま:なるほど。逆に言うと今年、祐介君が活躍することで若手ライダーに「Team yusuke with CARRYに入りたい!」って思ってもらえるようにならないといけないわけですね。ビジュアルのかっこよさという点ではCARRYと組むメリットが大きいでしょうし、チーム体制もバッチリなので本当に「憧れられる」チームになると思うんですけども。

渡辺:本当にそうですね。

たま:ときに、これは言いにくい話かとは思いますが新しいチームを立ち上げるに際して資金面というのは…

渡辺:地元に長年応援してくれたスポンサーの方がいらして…後進の育成もするチームなんだって話にすごく共感してくださったんですよね。

たま:なるほど、そこが響いたと。

渡辺:ありがたいことです。

たま:もちろん渡辺祐介というライダーを応援するお気持ちもあるんでしょうけど、後進育成に共感して出資してくださるというお気持ちがありがたいですね。

渡辺:本当にそうですね。

ヤマハからホンダへ

画像: ヤマハからホンダへ

たま:長年ヤマハだった祐介君がホンダにスイッチされたことに興味津々なファンも多いと思うんですが、どうですかその辺? 乗り心地というか…

渡辺:乗りやすいです! 根本的に全てが違いますね。バイクの動きもそうですけど。

たま:そんなに違うんだ?! なんていうか祐介君はずっとヤマハの人だったじゃない?

渡辺:はい。だからヤマハの乗り方はわかってたつもりなんですけど、その乗り方自体も見直さなきゃいけないところがすごいいっぱいあって。とにかくパワーはやっぱり ヤマハがすごいなっていう感じはしますけど扱いやすさ、コントロール性、あとはコーナリングはホンダさんがいいかなって感じがします。

たま:そんな違いがあるんだね。

渡辺:はい。

たま:ホンダが乗りやすいっていうのは、スイッチされたライダーの多くがおっしゃってるんですけども、やはりバランスの良さみたいなものがあるんでしょうか?

渡辺:そうですね。そのバランスの良さが背の小さい僕にはすごく優しいですね。

たま:ああ、なるほど。それこそ川島(雄一郎)さんの頃からね、ホンダは小柄な選手に優しいっていうのがあるのかもしれませんね。バランスの良さがライダーの体格を選ばないみたいなね。

渡辺:確かに。

たま:祐介君としては「操りやすい」ってカンジですか?

渡辺:操りやすいですし、実際、今、すごい調子よく乗れているので楽しいですね。やっとちゃんとレースができるんじゃないかなって、思ってます。

たま:メカニックはどなたになりますか?

渡辺:メカニックはホンダさんから派遣してもらう形になったんですけど…去年、監督だった平島さん(平島将充氏)とシゲさん(中川重憲氏)です。

たま:わあ!!!(笑)それを聞いただけでホンダさんがどれだけ力入れてるかがわかりますよ!

渡辺:本当にありがたい環境を作っていただいて、平島さんとシゲさんは半分ずつぐらいでやっていただけるという形です。

たま:もう、それ、ファクトリーじゃないですか!

渡辺:(笑)ファクトリーなんです。

たま:これはHRC契約ってことですかね?

渡辺:はいHRC契約になりました。

たま:シゲさんだとこう、すごいケアが手厚くて…

渡辺:僕は成田亮さんのメカニックだったっていうことしか知らないんで…あまりコミュニケーションとったことがないんですよね。逆に嫁(怜奈さん)の方は当時成田さんのチームで走っていたんでシゲさんともすごい仲良くて、逆にそう言うところもいいのかなーって思ったんですけど。

たま:きっとすごく力になってくださると思いますよ。

渡辺:はい。

たま:いやあ、その体制はたしかに「チャンピオン獲らないと」ですね。

渡辺:もちろんです! ちゃんとやっていきます!

たま:実際に乗り始めたのはいつからですか? 契約の関係があると思うので、多分1月からですよね? 1月末くらい?

渡辺:1月の中旬くらいからですね。契約は昨年末で終わってたんですけど、新しいチームでヤマハに乗る案もあったんでそこからホンダさんにお世話になるとなって実際に乗ったのはちょっと遅くて。

たま:今年は開幕が早いので準備期間がちょっと短くなっちゃいましたね。

渡辺:短いですけど、本当にいろんな方々が協力してくれて、バイク自体もどんどん良くなっていってて。そこに関しては不思議と全く不安がないところまで作り込めてます。サスもSHOWAさんになって…まあ、ホントに乗り換えという点で言ったら、多少はヤマハの乗り方からホンダの乗り方に変えなきゃいけない部分はあったんですけど、その分しっかり練習量を増やして乗り込んでいるのでそこに関しては全く不安はないです。

たま:それはすごい。ライダーがそう言い切れるっていうのがすごいですね。

渡辺:はい。そのぐらい調子いいってことです。バイクが。

たま:ライダー本人の準備はどうでしょう? フィジカル面で。大きな怪我をされてそこから復帰されて去年後半ぐらいからかな? 祐介君らしい走りになってきたのは。

渡辺:少しずつですけど、去年の後半戦に比べても今の方が絶対調子良いです。去年よりも上は絶対走れます。

たま:じゃあ本当にちょうどいい時にいい転換期が来たみたいな感じになるんですね。今、気がついたんだけど去年の今ぐらいにもお話聞いたんですよね。

渡辺:そうです。

たま:去年の話と今年の話でこんなに違うとはっていうぐらい違いますね。

渡辺:そうですね(笑)

たま:期待しちゃいますよ。

渡辺:絶対楽しいシーズンになると思うんで。

チーム体制について

たま:体制というか祐介君の役割としてはチーム監督兼ライダー?

渡辺:そうですね。

たま:でも裏監督は奥様?(笑)

渡辺:裏監督は怜奈ですかね?(笑)一応マネージャーという形で。

たま:チーム内の仕切りみたいな細々としたことは奥様がやってくださるって、そういう意味では二人三脚で。

渡辺:はい。

たま:ではチーム監督として「ファンの方々にこれは伝えておきたい」ということがありましたら…

渡辺:本当に新しいチームとしてTeam yusuke with CARRYという形でそれを実現することができたのでレースはもちろんなんですけど、パドックが本当にかなりかっこよくなるので。それを会場にいるお客さんに見に来ていただきたいですし、メーカーのファクトリーライダー以上に距離感がすごく近くなると思うので、ぜひ声をかけに、Team yusuke with CARRYのパドックに遊びに来てください。お客さん向けにグッズを作ったり、サプライズでいろいろ考えていることもありますし。あとはイベントとかも考えているので、その発表はまた改めて。

たま:盛りだくさんですね(笑)ではそういったお知らせはTeam yusuke with CARRYのSNSアカウントをフォローしていただいて。とりあえずはInstagramアカウントですかね。

渡辺:今のところインスタだけなんですけど、Twitter(現X)とかも増やしていこうかなっていうふうに思ってます。

Team yusuke Instagram@team_yusuke110

デザインについて

画像: デザインについて

たま:マシングラフィックとウエアのカラーですけど、赤とグリーン?

渡辺:ホンダの赤とCARRYさんのグリーンです。そこも凝っているんですよ。HRCさんの契約が決まる前は、本当に黒とグリーン、CARRYさんのカラーで走ろうとしてたんですけど、HRC契約にしてもらったので、さすがに赤入れないとまずいねっていう話になって赤とグリーンになりました(笑)

たま:すごくいいカンジですね。CARRYさんのオリジナルはどちらかといったら派手派手というかギラギラってカンジですけど…

渡辺:はい、あの、派手なパターンの…なのでハタボーさんに「僕、あまりそういうのは好きじゃないです」って言って。

たま:言ったんだ!!(笑)それであの孔雀の羽みたいな有機的なパターンじゃなく、Team yusuke はわりとレーシーな方向性になったと。

渡辺:そうですね。あ、ここで嫁(怜奈さん)の話も聞いてもらっていいですか?

たま:もちろんです。

渡辺:では代わります。

渡辺怜奈さんインタビュー

「引退」という言葉を聞いて即行動

画像: 渡辺選手のパートナー渡辺怜奈さん・チーム立ち上げの立役者でありチーム統括マネージャーを担う

渡辺選手のパートナー渡辺怜奈さん・チーム立ち上げの立役者でありチーム統括マネージャーを担う

たま:まずは新しいチーム立ち上げおめでとうございます! よかったねえ。

怜奈:ありがとうございます! とりあえずよかったです!

たま:正直、どうなるんだろうって心配もしていたから。

怜奈:本当そうですよ、本当に本当にその通りですよ。

たま:でもね、最終戦の時にちゃんと発表しますからっておっしゃってたんで、きっと大丈夫なんだって信じてたんですけど。

怜奈:あの時はまだ…あの後本当にいろいろあって、このチームを立ち上げる前に、本人(渡辺祐介)も引退を口にしたり…ってこともあったんですね。ここ2年連続で大きな怪我をして祐ちゃん自身、自分の価値を見出せなかったというか…周りのチームメイトは若いし速いし、あとは年齢のことをちょっと良くない言い方されたりもしたんで、そういうのもあってレースに集中できなかったりとか。怪我があってのことなんですけど、今のニーズに合ってないみたいな話もされてしまって。「引退」って言葉はそういう事を言われすぎて本人も「俺もう歳なんだ」って思ってしまったところがあったからなんです。でも、あんな大きな怪我から復帰できるライダーってなかなかいないと思うんですよ、それもシーズン中に。それぐらい大きな怪我だったんです。だから、辞めたら絶対に後悔するんで。自分も辞めた側の人間なのでわかるんですけど、例えば1年後にはフルで参戦してたライダーとはブランクがあるから、その時に戻ろうと思ってもちょっと遅いじゃないですか、契約だったりとか、スポンサーを集めるにせよ不利になるじゃないですか。モトクロス業界が賑わってるならいいけど、今はなかなか難しい状況ですし。「迷惑をかけるから辞めようかな」なんてそんなの…ずっと職業としてやってきてたわけじゃないですか、何十年も。だから「辞められる方が迷惑だ」って言ったんです。ずっと一緒にやってきて、四六時中コースでも普段の生活でもずっと一緒にいるから、もし辞めて、そういうふうにずっとバイクの動画を観てられるほうが迷惑だよって言って。それで、祐ちゃんには何も言わないでハタボーさんに連絡したんですよ。

たま:ああ、そこに繋がるんだ!

怜奈:祐ちゃんが「俺、もう引退しようかな」って言った瞬間に私は「よし、チームだ! 自分たちのチーム立ち上げよう!」って思って。

たま:すごい!

怜奈:なのでハタボーさんに「なんかちょっと祐介わけわかんないこと言い出したんで、自分たちのチーム立ち上げようと思ってます」って言ったら「あ、OK、わかった」みたいな。本当に軽いノリって言ったらちょっとアレなんですけど、本当にそういうカンジで決まったチームなんです(笑)

たま:いやぁ〜すごいな! 嫁、すげぇな(笑)

怜奈:(笑)絶対後悔するのわかってたので。

たま:それは怜奈さんが引退されてるからこそ言えることなのかもしれませんね。

怜奈:そうですそうです。結局、自分と同じくらいのライダーが仮にチャンピオンを獲ったとしたら「俺も辞めてなかったら…」って絶対に思うんですよ。

たま:うんうん。

怜奈:そういうのを経験した側として、私は祐ちゃんと一緒に夢を追わせてもらってるから…そこは「迷惑をかける」とか思わなくていいから続けてほしいし、私のその気持ちに対してハタボーさんも感動してくれて。

たま:なるほど。

恩返しの気持ちを形に

怜奈:言ったら、ハタボーさんにとって私たちとやるメリットはほぼほぼない状態なんですよね。それでも受けてくれたので本当に感謝しかないんですけど、恩返しと言ったらやっぱり結果を出す事とあともう一つの目標としてはHonda Dream WITH〜っていうチームになること。CARRYさんの名前をそこまで持っていくことがもう一つの恩返しになるのかなと思って。なので「怪我だけは絶対するな」って祐ちゃんに言いました。

たま:そこが一番大事なポイントになってきましたね。今は祐介君個人がHRCと契約しているけども、目標としてはチームがホンダのチームとしてHonda Dreamという形で認めてもらえるまで大きくする、実績を積んで契約できるようにすると。

怜奈:そうですそうです。

たま:それが怜奈さんの個人的な思いというか…

怜奈:願望というかそうするという決意で。だからハタボーさんにも「1年目の創設がTeam yusuke with CARRYだけど、1年で終わりなんですか?」って聞いたんです。そしたらハタボーさんが「いや、そんなことないし、もし裕介が抜けたいっていうなら別だけど、こちらとしてはもう全然welcomeだから」みたいに言ってくださったんで。CARRYって言ったらもうモトクロス業界、二輪業界では有名じゃないですか。なので逆に癒着とか忖度とかってマイナスな事を言う人も出てくるかもしれないけど、でも、そういうのは気にしなくていいよって言ってくださって。だから、本当に感謝してて。

新しいチームのありかた

画像: 新しいチームのありかた

たま:そうやって怜奈さんが行動を起こしたからTeam yusuke with CARRYが成立したとも言えるわけで。

怜奈:だから、辞める時は祐ちゃん一人が決めるんじゃなくて二人で決めようと。今ってシーズン終わった後に辞めますっていうライダーが多いじゃないですか。それで、辞めちゃったらなかなか地方に行かなくなるじゃないですか。でも、Team yusukeが辞めるって年、俺はもうこれで限界だって年が来たら一戦一戦思い出を作って一人でも多くに応援に来てもらえるように早めに告知して、って思ってます。あ、でもまだまだ引退しないですよ(笑)

たま:まあ、10年くらい先?

怜奈:ざっと10年くらい先で、その時にチーム員がいたら今度は監督とマネージャーとして全日本回ります。

たま:それ、もう辞められないってやつでは?(笑)

怜奈:(笑)最初、ヤマハの頃は、祐ちゃん、チームなんて絶対立ち上げないって言ってたんです。俺は俺だけでいいなんて言ってたのに。まあ、なんか、歳なんですかね?(笑)

たま:でもそれはすごく希望のある流れだと思うのね。

怜奈:そうなんですか?

たま:怜奈さんは祐介君を走らせたい一心でっていうところがあったかもしれないけど、結果的にこのTeam yusukeが大きなチームになって、後進の目標になるとしたらそれはモトクロス界にとってすごく大きな財産になると思うから…例えば5年後くらいに「あの時、怜奈さんが思いついてCARRYさんに電話したあれが今、こんな風になるなんてね」って言う時がくるかもしれない。

怜奈:妹がGTでレースクイーンやってるんで「四輪はこんな感じだよ」「小口のスポンサーや応援してくれる人で年間3万円でTシャツ付きで、とか。そういう方法もあるよね」って教えてくれて。スポンサーって言ったら大きい金額を払わなきゃいけないってイメージで、そうすると腰が退けちゃうけど、ファンクラブみたいな感じで支えてもらったりとかそれをリール動画でやったりとか、そうすることで集客もしていける。今の時代にあっているのはそんなやり方かなって思ったり。

たま:そういう妹さんの提案であったり、CARRYさんという新しい場であったりを繋ぐ事で結果的に新しいチームができたみたいなカンジなんですね。

怜奈:そうですそうです。やりたいことが詰まってて本当に忙しいんですけど、祐ちゃんもホンダのバイクに乗ってから「俺、バイク楽しい。俺、遅くなったわけじゃなかったんだ」って言ってて。

たま:それは嬉しいね。

怜奈:「俺がダメなわけじゃなかったんだ」っていう言葉が出てきて、本人も実際本当に乗れてるんで、勘違いでもなんでも自信を持ってくれれば。

たま:でも気持ちが大事なスポーツですから。

怜奈:そうですね、やっぱりメンタルスポーツだと思ってるんで。

夫婦二人三脚で

たま:さっき祐介君には二人三脚って言ったんだけど、今、私の頭の中では怜奈さんが祐介君をぐいぐい引っ張って走ってる図が浮かんでます(笑)

怜奈:たまさんも祐ちゃんと付き合い長いからわかると思うんですけど、祐ちゃん、バイク乗る事以外できないんですよ。バイク乗る事とトレーニング以外できないんでそれ以外の部分は全部私がやるわけです。祐ちゃん、バイクのことは本当に真面目だし悪いとこはないんですけどビジネス的なこととかそういうのは苦手なんで。

たま:真面目だから思い詰めやすいって言うのもあるだろうしね。

怜奈:そうなんです!本当にそうなんですよ。でも、前よりは冗談通じるようになったんで全然大丈夫です(笑)

たま:いやあ、怜奈さんが超ポジティブというか、祐介君とはぜんぜん逆のタイプだから上手くいってるのかもしれませんね。いいコンビだと思います。

怜奈:ありがとうございます。ホンダさんはそういう祐ちゃんの価値をちゃんと評価してくださってるんで…ええ? そんなに?! っていうくらいで。「正直ここまで走れると思ってなかった」とか言ってもらえて。

たま:良かったねえ。

怜奈:良かったです。最初はスポンサー集めから何から頭いっぱいいっぱいになって大変だったんですけど、ファンの方も「裕介がホンダに乗るなら観にいくよ」とか、ヤマハ推しだった人から「物販ありますか?」って聞かれたり。色が変わっても応援してくれる人がたくさんいるのがわかって「祐ちゃん人望あったんだな」って。

たま:真面目で実直な人柄がちゃんと反映されてるんですね。今までお二人にお話をうかがったカンジだと夫婦二人三脚というか奥様が引っ張り気味で新しいチームをつくりましたという紹介記事になりそうです(笑)

怜奈:(笑)よろしくおねがいします。

株式会社CARRY 畑中豊氏インタビュー

CARRYとチーム運営について

画像: CARRYとチーム運営について

たま:開幕前の多忙な時期にすみません。

畑中:いえいえ。

たま:まずうかがいたかったのは、渡辺選手の奥様怜奈さんから電話が来てTeam yusukeと組むってなる前からCARRYでチームを作りたい、チーム運営をしたいみたいな考えはあったんでしょうか?

畑中:今までもチームCARRYとしてちょこちょことスポット参戦はしていたんですけど。

たま:去年とかもね。

畑中:そうですね。いずれ本格的にやりたいなっていう考えはあったんで、そういう時に一番最初に声をかけてきたのが渡辺祐介だったって事ですね。

たま:CARRYさんとしても渡辺祐介選手であればライダーの格として申し分ないと?

畑中:そうですね。フル参戦するには1番のライダーかなっていうところですね。

たま:CARRYでチームをやりたいっていう計画はどのくらい前から考えてらしたんですか?

畑中:2〜3年ぐらい前から「いずれやりたいな」っていうのは思ってましたね。

たま:スポット参戦されることはあってもフル参戦というのはなかったから、フル参戦したいなというベストのタイミングで渡辺選手から声がかかったみたいなカンジですか?

畑中:そうですね。僕的に何でもそうなんですけど、やるって言った時に一番最初に来た人というのを一番大事にしてるんですよ。なので、チームをやるって決めた時に一番最初にきたのが裕介君なんでもう本当にこの人しかいないなっていう。

たま:そういう出会いのタイミングみたいなのは大事にされてるんですか?

畑中:そうですね、めちゃくちゃ大事にしてます。一番最初っていうのを大事にしてますね。

たま:今、CARRYさんはものすごく多角的なお仕事をされているじゃないですか?めちゃくちゃお忙しいと思うんですけど、With CARRYということでチームの中での畑中さんの立ち位置というか立場はどうなるんですか?

畑中:僕の立場ですか…

たま:渡辺ご夫妻からお話をうかがって、祐介君が監督兼ライダーで、怜奈さんが統括マネージャーっていう事だったんですけども、With CARRYとしてCARRY代表取締役の畑中豊さんはどういう関わり方をされる予定なんでしょう?

畑中:僕はですね、チームに関しては「金は出すけど口は出さない」っていうスタンスですね。

たま:なるほど。じゃあ、資金面とあとはもちろんトータルデザインの面で。

畑中:そうですね、その辺ですね、デザイン関係。

たま:デザイン関係のプロデュースといわゆるスポンサー、資金面での援助みたいな形になるんですね。

畑中:そうですね。パドック関係はですね、全部うちでやらせてもらってます。トラックに始まって、ヘルメットとかそういうウエア関係、グラフィック関係、テントとかバナーとか、本当に細かいので言えば椅子とか机とかそういうのに至るまで「見せる」ことに関しては全て。

たま:CARRYのレースにおけるデザインの展示場というかプロモーションを兼ねるというか…そういうスタンスで関わっていかれる形なのかしら?

畑中:そうですね。

たま:資金援助については、これがCARRYの宣伝になるという…ウエアにロゴつけるとかそういうのとは比べ物にならない規模で「うちの作品はこのチーム全体です」みたいにできるわけじゃないですか。そういうメリットを考えてのことですか?

畑中:そうですね、もう、それをずっとやりたくて。それに一番合ったライダーいないかなっていうのを何年かかけてじっくり探してたっていうところでちょうど祐介君がいいタイミングで来てくれたんですね。

たま:すごい…いい出会い…出会いでもないけど、ベストマッチングだったってカンジですね。

畑中:はい、もうめちゃくちゃいいタイミングでしたね。

渡辺祐介との関係

たま:祐介君が畠中さんとは家族ぐるみの付き合いでっておっしゃってたんですけど、きっかけは奥様の怜奈さんなんですか?

畑中:元々…ずっと5年以上かな、渡辺祐介の広報関係の仕事をずっとさせてもらってて、その中で「あ、僕と似てるな」と。

たま:畑中さんと渡辺選手がですか?

畑中:はい。例えば渡辺祐介は男の3兄弟なんですが(祐介・環・陵)僕もそうだし。家庭環境とか子供を育てる環境とかそういうのもすごく共通する部分が多いんで、それをライダーと話してて奥さんも「みんなで仲良くしようよ」って言って、家族ぐるみで長いこと何年も付き合ってるというところですね。

たま:なるほど。何か共通するものがあってシンパシーというか親近感があって、長いこと付き合っておいでだったから、今回声がかかってきた時も「彼なら大丈夫だ」みたいな確信があったと。

畑中:そうですね。むしろ渡辺祐介だからやったというところです。あの…僕の中で能塚智寛(元Kawasakiファクトリーライダー、昨シーズン末に引退表明)の引退というのがすごく大きいことだったんですよ。2016年くらいからずっと一緒に仕事してて、その中でも…能塚と渡辺祐介って同期なんですね。

たま:はい。

畑中:それで「能塚が辞める」って聞いた時に、僕も渡辺祐介も二人とも「え?!」って思ったんですよ。で、祐介もちょっと(引退しようか)どうしようかって言ってた時だったんで、余計に「やっぱり協力したい」っていう気持ちが大きくなったっていうところですね。

たま:怜奈さんはね「畑中さん、本当に二つ返事で『じゃあ一緒にやろう』って言ってくれたんですよ」って。

畑中:そうですね、うんうん。

たま:決して小さな決断ではないじゃないですか。かなり大きなことじゃない?

畑中:そうですね、やっぱり。

たま:その決断の元はどの辺にあるんだろうって思ってたんですけど、そっか、ちー君(能塚智寛)の事があったからなんですね。

畑中:ほとんどそうですね、大きいですね。

たま:かなりショックだったんですね。今までずっと一緒にやってきたのにっていう。

畑中:そうですね。

たま:じゃあ、これからは祐介君と一緒にできるだけ長くTeam with CARRYでやっていきたいという気持ちでいらっしゃる?

畑中:そうですね。やっぱりその…1年だけやっても意味がないと思ってるんで。長く一緒にやりながらチームを育てていって、ゆくゆくはもうファクトリーにも引けを取らないっていう大きいチームにしてゆきたいっていうのが僕らの共通の目標ですね。

ファクトリーに負けないかっこいいチームに

たま:海外だとファクトリーにも負けないかっこよくて規模の大きなチームっていうのがありますからね。ああいうカンジを目指してらっしゃる?

畑中:そうですね、モロにそういうカンジです。

たま:かっこよさはね、保証されてると思っているんですよ。CARRYさんがトータルデザインされるっていうことはそういうことなんで。あとはもうライダーの走りでどれだけ目立つかって事なんだけど、そこも祐介君だったら大丈夫っていうのがあるじゃないですか。

畑中:たしかに。

たま:これはいわゆるワークスイーター、ファクトリーイーターになるんじゃないかと期待をしているんですけど。

畑中:うんうん、そう言ってもらえると。

たま:ウエアのデザインとかマシングラフィックとかをSNSで拝見したんですけど、基本はホンダのレッドとCARRYのグリーン…

畑中:CARRYはブルーグリーンですね。

たま:レッドとブルーグリーン、それと黒っていうのがコンセプトカラーなのかな?

畑中:そうですね。

たま:チームウエアとか、それこそさっきおっしゃってた椅子とか机とかもそういったコンセプトカラーで統一されるの?

畑中:はい、全部ですね。

たま:うーん、めっちゃ楽しみだし、めっちゃ映えそうですね!

畑中:めちゃくちゃかっこいいと思います。それは自信ありますね!

たま:では、そんなカンジで。「Team yuske with CARRYからは眼が離せないぞ」ていう内容で纏めさせていただきますね。開幕前のお忙しいところお時間割いていただいてありがとうございました。

畑中:いやいや、こちらこそありがとうございました。

というわけで、例によってとても長くなりましたが、年明けに発表された大型新生チームTeam Yusuke with CARRYについて、お三方のインタビューを紹介させていただきました。渡辺祐介選手の決意、渡辺怜奈さんの熱意、CARRY畑中さんの野望が合体して立ち上がったTeam Yusuke with CARRY。間違いなく今年の全日本モトクロスの目玉の一つになると思います。万全の体制に支えられた渡辺選手の走りはもちろんですが、パドックでのチームの在り方、ビジュアル面にも注目したいですね。

渡辺祐介 Instagram@w.yuske110
株式会社CARRY Instagram@carrycorporation

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