スズキ株式会社は、2024年11月の「EICMA 2024」で発表した新型デュアルパーパスモデル「DR-Z4S」とスーパーモトモデル「DR-Z4SM」を、2025年10月8日から日本で発売すると発表しました。両モデルのメーカー希望小売価格(税込)は1,199,000円で、スズキがこのカテゴリーに投入するニューモデルとして注目を集めています。年間販売目標は、DR-Z4Sが400台、DR-Z4SMが800台です

画像1: 119.9万円。スズキ、DR-Z4S/SMを国内で正式発表、10月8日からオンセール

SUZUKI
DR-Z4S
¥1,119,000(税込)

画像3: 119.9万円。スズキ、DR-Z4S/SMを国内で正式発表、10月8日からオンセール

SUZUKI
DR-Z4SM
¥1,119,000(税込)

デュアルパーパスとスーパーモト、それぞれの個性

「DR-Z4S」はオンロードとオフロードの両方を楽しめるデュアルパーパスモデルで、街乗りやワインディングから本格的な林道まで幅広く対応します。一方の「DR-Z4SM」は、同じ基本構成を持ちながらも、舗装路を主体とした日常使用からサーキットまで対応するスーパーモト仕様に仕上げられています。両モデルにはスズキインテリジェントライドシステム(S.I.R.S.)が搭載され、トラクションコントロールにはグラベルモードを含むSTCSを採用。さらにスロットルレスポンスを3段階から選べるSDMSや、解除モード付きABSも備え、ライダーのスキルや走行シーンに応じた調整が可能となっています。外観はLED灯火類やLCDメーターを採用したアグレッシブなデザインが特徴です。

装備と走行性能

デザインは水平基調のラインを基調にシャープなシルエットを描き、コンパクトなバイファンクションLEDヘッドランプが存在感を際立たせています。装備面では、3種類のスロットルモードを持つSDMSや、電子制御スロットルとフューエルインジェクションによる始動性と加速性の向上が大きなポイントです。クラッチ操作を軽減するスズキ・クラッチ・アシスト・システムも導入されました。タイヤはDR-Z4SにIRC製のTRAIL WINNER GP-410(前21インチ・後18インチ)、DR-Z4SMにはダンロップ製のSPORT MAX Q5A(前後17インチ)が装着され、それぞれのキャラクターを引き立てています。

エンジンは398cm³の水冷4サイクル単気筒DOHCで、最新の排出ガス規制に適合しながらも低速域の扱いやすさと高回転域での伸びやかさを両立しました。新設計のシリンダーヘッドやデュアルスパークプラグ、さらに新しいピストンとクランクケースによって、燃焼効率や出力特性、燃費性能が高められています。車体には新設計のスチールパイプ製セミダブルクレードルフレームが採用されました。

価格と販売計画

両モデルのメーカー希望小売価格は税込1,199,000円です。価格には保険料や税金(消費税を除く)、登録諸費用は含まれていません。年間販売計画は、DR-Z4Sが400台、DR-Z4SMが800台となっています。

DR-Z4SDR-Z4SM
エンジン形式水冷4サイクル単気筒DOHC水冷4サイクル単気筒DOHC
総排気量398cm³398cm³
フレームスチールパイプ製セミダブルクレードルスチールパイプ製セミダブルクレードル
ホイール前21/後18インチ(IRC GP-410)前後17インチ(ダンロップQ5A)
電子制御STCS(グラベルモード付)、SDMS(3モード)、ABS解除モードSTCS(グラベルモード付)、SDMS(3モード)、ABS解除モード
価格(税込)1,199,000円1,199,000円
国内販売目標400台/年800台/年

編集長稲垣のコラム「ベースが何か。競合を考えるには、まずそこから」

かつてのスズキDR-Z400Sは2000年代前半に約65万円台で流通していたモデルである。排気量398 ccの水冷DOHC単気筒は、39PS前後を発揮しつつも構造はシンプルで、オフロード~トレール用途において多くのライダーに愛されてきた。唯一無二のミドルクラスのトレール/モタードであることから、いまだに信奉者は少なくない。時を経て今回登場した「DR-Z4S/4SM」の価格は、スズキ公式発表で税込み1,199,000円。20年の時を経てほぼ倍となったこの価格をどう受け止めるべきか。

現在の競合モデルを見渡すと、その価格帯や性格によって棲み分けが見えてくる。まず、KTMの新型トレールである390 ENDURO Rは、メーカー希望小売価格 859,000円(税込)。READY TO RACEで知られるKTM発のトレールモデルだが、ベースになっている車輌は390DUKEでエンジンは一般的なオフロード車と違ってフレームで囲われず吊り下げ式。オフロードのために一から作られたマシンではなく、特にオフロード性能をあまり重視しない層に390 ENDURO Rは向いていると言える。もちろん、林道は無難に走ることができる程度にオフ性能をしっかり持っている。時々コースやややこしいトレイルで遊びたい、という要求にはあまり向かない。同じようなカテゴリーでBetaのALP 4.0も視野に入ってくるだろう。こちらも390 ENDURO Rと同様にエンジン吊り下げ式のロードテイストが強いモデルで¥999,900。トライアル・エンデューロに特化したブランドBetaの手がけたバイクではあるものの、ロードよりのオフロードマシンとみるべき。ただ、ここで忘れてはいけないのは、DR-Z4S/SMが400ccクラスのトレールであることだ。250ccクラスのトレールとは明確に棲み分けが異なるカテゴリーで、たとえばホンダXR250でハードなルートを楽しむ層は多かったが、DR-Z400Sでそのようなルートに分け入っていくのは変態かマッチョだけであった。そもそも新型DR-Z4Sも、そんな使い方をされるとは考えづらく、実際の使用用途から考えるとこれらロードに近いオフロードバイクとそう守備範囲が変わらないかもしれない。

少し昔に目を向けると、もう幻の名車となりつつあるモトクロッサーベースのホンダCRF450Lがいた。税込み1,296,000円、2018年に登場したこの車輌は価格の高さで敬遠された向きがあるものの、今となっては破格の価値を持つバイクと言うことができる。エンデューロマシンに準ずるオフロード適性がありながらも、トレールとして運用可能なこのバイクの存在価値は唯一無二だ。もし、この時代に新車が出るとしたら200万円は下らないのではないだろうか。

公道登録できるエンデューロモデルをここに入れるのは公平ではないかもしれないが、一応並べてみよう。トライアンフのTF450-Eは¥1,296,000(税込)、BetaのRR X-PRO 4T 390は1,551,000(税込)。これまでに並べた競合車種に比べると比較にならないほどオフロード性能は高いが(レーサーなので当たり前)、ツーリングにはまったく向かないし、ナンバー取得に別途費用がかかる。覚悟が必要なレーサーとして捉えるべきだが、なにげに昔から400オーバーのエンデューロバイクを公道向けに乗る需要はあるので一応触れておいた。

蛇足になってしまうかもしれないが、テネレ700は¥1,452,000(税込)。快速オフロードツーリングマシンとしてDR-Z4Sに期待する層には、テネレ700がライバルとして視野に入ってきてもおかしくはない。

400クラスの公道適合車両は、トレールベースなのか、ロードベースなのか、あるいは競技エンデューロベースなのかで性格も価格も大きく変わってくる。新DR-Z4S/SMはかつてのDR-Z400S/SMや既存の国内トレールとは少し路線が異なっているのが特徴で、単純な価値判断はできないと考えたい。新DR-Z4S/SMは電子制御を現代的に多用することで、モードセレクターやGスイッチ(オフロード特化するためのスライドしやすいモード切り替えスイッチ)が搭載されている。これまでのトレールより、圧倒的に電子制御分野の先進機能を備えている。旧DR-Z400S/SMも他社にはない排気量を選択したことで唯一無二の存在だったわけだが、新型はそれに輪をかけてオンリーワンの地位を確立している。ここに119万円の価値を感じることができるかどうか、それはこれから出回るメディアやユーザーのインプレッションにかかっていることだろう。

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