まとめ:西野鉄兵/提供:バイク王
なぜ円安で国内の中古バイクの価格が高まるのか?
日用品や食料品にはじまり、日々の生活を圧迫している円安。バイク関連でいえば、ガソリン、オイル類、パーツ類の高騰にも繋がっています。メーカーから発売される新車も仕様変更がないのにも関わらず、しばしば数万円単位での価格改定が実施され、バイク自体がどんどん高くなっている印象は否めません。
国内で流通する中古バイクはその影響を受けにくい……のかと思いきや、バイク未来総研のレポートによると、業者オークションにおける海外バイヤーの参入が増え、相場に変化がもたされているようです。
ちなみにここでいう業者オークションとは、国内の各バイクショップの仕入先としてだけでなく、顧客から仕入れたバイクの売却先としても活用されています。国内流通において重要な卸売市場であり、海外からの参加者も一定数存在します。
バイク王が独自に収集したオークション実績によれば、2020年前半に38.9%だった輸出率(海外バイヤーの落札率)は2024年前半に45.4%まで上昇したそう。コロナ禍の行動制限によって2021年後半こそ29.7%に下がったものの、コロナ明けから一貫して海外バイヤーの落札率は上昇傾向にあるといいます。

▲イタリアで筆者が2013年に撮影した写真。街中ではトップケース付きのスクーターがたくさん走っていました。
2020年~21年には1ドル110円前後を推移していましたが、2022年から始まった円安の加速で、2024年6月には1ドル160円まで下落。8月以降、140円台まで戻していますが、2011年に一時1ドル75円を記録したことを思えば、ドルに対する円の価値はピーク時のおよそ半分になってしまいました。
これだけ円が安くなれば海外バイヤーにとって、「日本のバイクはお買い得」と考えるのは当然のことです。さらにMADE IN JAPANが人気であるとともに、バイクやクルマにおいてはとくにUSED IN JAPANにも価値があるといわれています。
アジアやヨーロッパを旅行したことのある方は分かるかと思いますが、他国と比較し、日本の街中を走っているバイクやクルマは非常に綺麗に見えます。壊れたり、傷がついたりしたら修理するという発想や習慣は、万国共通ではないのかもしれません。日本はメーカーや販売店のアフターケア・サービスが充実しているのも特徴といえそうです。そのため中古美車の代名詞としてUSED IN JAPANという言葉があり、そこに価値があると海外バイヤーは考え、買い付けに来るのでしょう。
▲筆者が2016年にベトナムを訪れた際に撮影した写真。よく事故を起こさずに走れるな、と思って眺めていたら、ちょこちょこぶつかっていました。
バイク未来総研が業者向けオークションを開催している株式会社ジャパンバイクオークションに取材をしたところ、やはりコロナ明け以降、輸出される車種の傾向や仕向け地が変わってきている、ということが分かりました。
コロナ禍までは、小型・中型バイクの応札が活発だったとのこと。ある国においてはホンダのフォルツァ(MF08型)が人気だったそうです。しかし最近では、小型・中型に加え、状態の良い大型バイクを目当てとした海外バイヤーも増えてきたといいます。
仕向け地としては、カンボジアやドミニカ共和国、スリランカ、それにドバイなどの中東地域が最近活発な印象を受けているそうです。車種でいえば、ホンダのアフリカツインやヤマハのテネレは欧州向けとして人気で、BMW、カワサキZ1000、Ninja 1000SX、ヤマハMT-09、MT-07、トレーサー、スズキGSX-S750/1000、Vストローム650/1000、ハヤブサ、GSX-R1000などは中東向けに落札されている傾向にあるようです。
小排気量車から大型バイクまで海外バイヤーが積極的に応札している現在、国内のバイクショップは彼らに混じってオークションで競わなければなりません。すると当然、店頭に並ぶ車両の価格も高まってしまう、というわけです。
進む円安と国内中古バイク高騰との関係が理解いただけたでしょうか。次章では「実際にどの車種どの程度が高騰しているのか」について、バイク王への取材をもとに詳しく紹介していきます。

中古車の相場がとくに高まっているバイクを5車種紹介
ここからは、近年直販店舗を増やし、国内流通に積極的に取り組んでいるバイク王に取材した情報をもとに、オークションの落札相場がとくに高まっている車種を5モデルピックアップ。それぞれの相場上昇率と、その理由の考察を交えて紹介していきます。
ここで触れるのは、あくまでもオークション落札価格の上昇率であり、買取価格や販売価格への影響はある程度の振れ幅があることを考慮してみる必要がありますが、果たしてどんな車種が出てくるのか、見ていきましょう。
スズキ ハヤブサ 各種

業者オークションの平均落札額の上昇率:対2019年比 2024年 166.8%(状態・年式は考慮せず)バイク王調べ
写真はハヤブサ・2022年(現行)モデル
唯一無二の存在感を放つスズキの名車・ハヤブサ。初期型のGSX1300R Hayabusaは1999年に海外でデビューしました。“アルティメット・スポーツ”というコンセプトのもと開発され、市販車で初めて時速300kmの扉を開いたモデルでもあります。
現行モデルは2021年にデビューした3代目で、各種電子制御装備も充実し、安全性能を高めて扱いやすさも魅力となっています。スポーツ性能もさることながら、ツアラーとしてのポテンシャルが高く、1日に500km以上を走るようなロングツーリングも楽しみやすい一台です。
2019年のオークション落札相場を100%とした場合、2024年には166%まで上昇したとのこと。この数年は2021年以降の現行モデルを含んでいるとはいえ、その人気ぶりは陰りが見えるどころか高まり続けているようです。
もともと逆輸入車だったことからも、欧州の国境をいくつも越えて旅することを想定し生まれたモデルです。海外での評判がいいのは、当然といえば当然なのでしょう。
ヤマハ XT1200Z スーパーテネレ

業者オークションの平均落札額の上昇率:対2019年比 2024年 136.3%(状態・年式は考慮せず)バイク王調べ
写真はXT1200Z スーパーテネレ・2010年モデル
ヤマハのテネレシリーズの歴史は古く、初めてその名を冠したモデル「XT600 テネレ」は1983年に登場しました。パリ・ダカールラリーのマシンを彷彿させるスタイルと装備で、いまでいうアドベンチャー、かつてのビッグデュアルパーパスの面白さを広めたモデルともいえるでしょう。
国内では「テネレ700」が正規ラインナップしていますが、かつて逆輸入車扱いで販売されていた「XT1200Z スーパーテネレ」がいまとくに業者向けオークションでは人気を高めているそうです。
2019年の落札相場に比較し2024年には136%まで上昇。新車は2020年前後には完売状態だったため、いま取引されているのは少なくとも新車から数年以上は経った状態の車両です。
決して球数の多い車種ではありません。手に入れようと思っても「バイク王ダイレクト」をはじめとする中古車検索サイトですら、ヒットする件数がかなり少なくなってきています。このまま次々と海外へ輸出されていけば、いずれ国内の在庫は失われてしまいます。絶滅危惧車といえそうです。
ちなみに北米市場では「SUPER TENERE ES」という名称で、1200ccテネレの2024年モデルが販売されています。
ホンダ CRF1000L /1100L アフリカツイン 各種

業者オークションの平均落札額の上昇率:対2019年比 2024年 144.4%(状態・年式は考慮せず)バイク王調べ
写真はCRF1100Lアフリカツイン<s>・2024年(現行)モデル
日本でも定番のビッグアドベンチャーとなっているアフリカツインシリーズ。テネレと同じくパリ・ダカールラリーの参戦マシンをルーツに持っています。その名が付いた市販車の初代モデルは1988年に登場した「アフリカツイン」(647cc)です。
一度歴史が途切れた後、国内でアフリカツインが再びデビューしたのは2016年のこと。「CRF1000Lアフリカツイン」が発売されました。2019年には「CRF1100Lアフリカツイン」にモデルチェンジ。現行モデルは、オフロード走行性能を重視したスタンダードと、ロングツーリング時の快適性を高めたアドベンチャースポーツESが用意され、それぞれDCT車もラインナップされています。
アフリカツインはテネレとともにヨーロッパ向けとして、海外バイヤーに人気だそう。オークションの相場上昇率は2019年と比べ144%になっているとのこと。
欧州でも新車で販売されている国が多い車種だと思うのですが、USED IN JAPANは輸出のコストを鑑みても価値があるということなのかもしれません。スーパーテネレと同じく、長旅を楽しみやすいアフリカツイン。サイズ感を苦にしない欧州のライダーに選ばれているのでしょう。
スズキ GSX-R1000/1000R

業者オークションの平均落札額の上昇率:対2019年比 2024年 149.1%(状態・年式は考慮せず)バイク王調べ
写真はGSX-R1000R・2021年モデル
2022年に惜しまれつつも国内モデルの生産が終了したスズキの「GSX-R1000R」。このスズキ製スーパースポーツのフラッグシップモデルは、生産終了の発表後に国内の中古車価格が高まったことでも話題になりました。
「GSX-R1000R」と先代の「GSX-R1000」はドバイなど中東向けに輸出されることが多いとのこと。2019年のオークション相場と比べ、2024年は149%まで価格が上昇しているそうです。
排ガス規制のちがいから北米市場では2025年モデルが登場しました。ただ欧州では日本と同じくラインナップから落ちています。海外では“ジクサー”の愛称で親しまれているGSX-Rシリーズ、もしかしたら中東経由でさらにヨーロッパに送られている車両も多いのかもしれません。
ヤマハ MT-09/SP

業者オークションの平均落札額の上昇率:対2019年比 2024年 136.7%(状態・年式は考慮せず)バイク王調べ
写真はMT-09・2024年(現行)モデル
ヤマハMTシリーズの中核を担う「MT-09」は初代モデルが2014年にデビュー。新型が登場した今年、発売から10周年を迎えました。さらに9月末には新電子制御シフト機構“Y-AMT”を採用した「MT-09 Y-AMT」が発売されます。
そんなヤマハ製大型バイクの主力モデルともいえる「MT-09」と上級グレードの「MT-09 SP」は、オークションでは中東へ輸出するバイヤーの落札が目立っているそう。
2019年のオークション落札相場に対し、2024年は価格が143%まで上昇しているのだとか。新型が登場したことを考慮すると、今後この数値はさらに高まりそうです。
パワフルかつ適度なサイズ感のMT-09は、オンロードならどこを走っても、スキルを問わず誰が乗っても楽しめる一台。近年は新型が欧州で先行発表されていることからも、世界各地での人気の高さがうかがえます。

まとめ
ここで紹介した5台のほか、ヤマハのトレーサーシリーズや、スズキのVストローム1000/1050シリーズも近年、オークション相場が目立って高まっているそうです。
傾向として、長距離を快適に走れるモデルが人気だということが挙げられます。日本では持て余してしまうと考える人も多そうなサイズ・排気量のモデルが海外の特定の地域によっては需要を満たしているのでしょう。
今後この流れが加速するのか落ち着くのかは分かりませんが、これらの車両がいま海外からの影響もあって日本の中古バイク市場で需要を高めているということは確かです。

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コロナ禍では、新車の製造に遅れが出たことと合わせて、密を避けるためという理由で国内の中古バイク需要が急激に高まりました。そして現在は、お伝えしたとおり海外バイヤーのオークション参入増加の影響もあって、相場に変化がもたらされています。
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