シティトライアルジャパン実行委員長であり、トライアルIAスーパークラスライダー、そして近年ではエルズベルグロデオのチャレンジャーとして知られる藤原慎也がダカールラリーへの参戦を発表

松尾製作所との強力なタッグ、藤原慎也 Road to ダカール・ラリープロジェクト

現代のダカールラリーは20年前のそれとは似て非なるものだ。思い思いの仕様に仕立て上げたバイクでパリからダカールを目指す大冒険の時代はとうに過ぎ去り、よりソリッドでストイックな競技性の高いラリーへと進化している。特にトップライダーの走りは、2週間ぶっ続けでエンデューロを走るようなもので、巨大なモトクロスジャンプをもこなせる450ccのレーサーを振り回しながら、サウジアラビアの砂漠をかっ飛んでいく。今のダカールラリーは、スロットルをカチっと奥まで回して思い切り身体を伏せ、160km/hのスピードリミッターを効かせながら死の恐怖と戦う競技である。ある意味、20年前よりずっとタフでずっとリスキーだ。2024年、日本人で初めて池町佳生がサウジアラビアでのダカールラリーをバイクでフィニッシュ。あまりに厳しいルーティングはOff1.jpでデイリーレポートを展開させていただいた通りである。

この凄まじくタフなレースを目指して今回手を挙げたのが、トライアルライダーの藤原慎也。国内最高峰のIASクラスライダーであるだけでなく、シティトライアルジャパンという街中でのトライアル競技大会を立ち上げ、その他にもビジネス領域でその才覚を余すところなく発揮してきた。また近年ではエルズベルグロデオの日本人2人目のフィニッシャーを目指して毎年チャレンジを続けていて、オフロードバイクファンに限らず広くファンを増やし続けている。

画像1: 松尾製作所との強力なタッグ、藤原慎也 Road to ダカール・ラリープロジェクト
画像2: 松尾製作所との強力なタッグ、藤原慎也 Road to ダカール・ラリープロジェクト

現代のダカールラリーに参戦するには、スキルやタフさだけではなく経済的な問題も解決しなくてはならない。高額なエントリーフィーや、マシンの調達、準備費用……なにせ参戦資格を得るためにはFIMのラリーで成績を残さなければならず、その参戦費用だけでも数百万円が必要となる。ざっくりと試算しただけでも、この円安時代ではゆうに1600万円ほど必要となる。7ケタ台で済んでいた昔は家のローンに混ぎれ込ませて一生に一回のダカールラリー参戦、なんて話もよくあったのだが、それすらもはや通らない。数々の夢を形にしてきた藤原をもってしても、夢の頂にあったダカールラリーは相当に高い位置にあった。そこで藤原の背中を押したのが、元々ビジネス上のクライアントであった自動車部品メーカー松尾製作所の松尾基社長だったとのこと。「最初は選手だということも知らなかった」そうだが、会話を重ねるうちに松尾氏は藤原に惹かれていき「ダカールが夢なのだったら、出たらいい」とサポートを申し出たのだという。「その時は、こんなに大変なことだとは思ってませんでしたけどね」と松尾氏は笑う。

画像3: 松尾製作所との強力なタッグ、藤原慎也 Road to ダカール・ラリープロジェクト

藤原は発表会の冒頭で「ダカールラリーに参戦することは、昔からの夢でした。手の届かないような立ち位置にあるのが、ダカールラリーです。このレースに挑戦することができる人は限られている中で、私の挑戦が松尾製作所様によるサポートのお陰で実現でき、とても嬉しいです。松尾製作所様にはメインスポンサーという枠組みを超えて、私の人生を応援してくださる姿勢にとても感謝しています。松尾製作所の社員の皆様と共に”思いの火”を感じ起こし、完走を果たしたい」と語った。

画像4: 松尾製作所との強力なタッグ、藤原慎也 Road to ダカール・ラリープロジェクト

トライアルライダーのダカールにおける強み

近年の先鋭化するダカールラリーでは、モトクロスやエンデューロの素地を持つライダーが活躍する傾向にある。スピードを持っているライダーが、長距離のスキルを身につけて参戦するパターンだ。アンドリュー・ショートなどAMAスーパークロスの引退組もトップランカーに名を連ねている。

ではトライアルはどうなのだろうか。有名なところだと、恵まれた体格でトライアル、エンデューロのウィメンズクラスを総なめにしたライア・サンツがいる。すでに四輪へ移行してしまったが、サンツはホンダからKTMへ移籍しながら数年トップランカーとしてダカールラリーを戦った。藤原は「たぶんトライアルライダーがラリーに挑戦するのは、日本人初になるのではないかと思います。トライアルというのは究極のモータースポーツと言われていて、オートバイを操る基礎的な部分がすべて詰まっています。だから世界的にロードレースや、モトクロスのライダー達もトライアルでトレーニングをしています。7歳からオートバイに乗り始めて培ってきた技術、いわゆる繊細なクラッチワークやスロットルワーク、そして体幹によるバランス感覚などがラリーに活かせるのではないかと思っています。それと僕はトライアルライダーの中でも筋力を使わずに乗ることができている方だと思っていて、これを活かしながら、なおかつ基礎体力を増強していくことがダカールに向けてのフィジカルの課題になっています」と話す。

画像: トライアルライダーのダカールにおける強み

日本では本格的な競技ラリーや、ダカールラリーのようなフィールドがないことから「行けるだけ海外に行ってトレーニングしないといけないですね。折りをみて様々なレースにチャレンジするつもりです」という藤原だが、まず待ち受けるのは今年で3回目の挑戦となる宇宙一困難なエンデューロ「エルズベルグロデオ」だ。また、スピードを身につけるため、エルズベルグの前にフランスのトレフルエンデューロへ参戦する予定も控えている。加えて10月には、ダカール参戦への権利を得るため(FIMラリー世界選手権で一定の成績が必要)、モロッコラリーに挑戦する。2025年の1月には、ダカール同等の距離を走るアフリカエコラリーでロングディスタンスへの対応力を磨く。

これまで挑戦してきたエルズベルグロデオの完走も、非常に困難な道。ダカールラリーの完走は、しかしまた別の意味でとても困難な道だ。だが「やってないことをやるのが大事、違う景色が見えてくるはず」と藤原の息は荒く、きっとこの高い壁もあっさりと乗り越えていくのだろう。残された時間は実質1年半。今年からの藤原の動きにぜひ注目を。

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