まだまだ壁は高かった!

「悔しくて眠れない夜を過ごしてね……。昨日のレースのデータをきちんと見て、やり返せるチャンスがすぐにあったんで、100%の力で走りました!」
絶対王者・中須賀克行は、レース後のインタビューで、そう漏らしました。もちろん、深刻なノリじゃなくて、ちょっと冗談っぽく、それでも決して冗談じゃなかった、本音が漏れた瞬間だったと思います。

画像: スタート直後の1-2コーナー。中須賀、もう前に、岡本はそこに遅れじと後を追います

スタート直後の1-2コーナー。中須賀、もう前に、岡本はそこに遅れじと後を追います

全日本ロードレース第3戦・スポーツランド菅生大会。2レース制のこの開催、土曜のレース1で、絶対王者・中須賀克行は、可愛がっている後輩である岡本裕生に完敗。たとえばウェットレースやなにかのアクシデントもなく、お互いレース周回をしっかり走り切っての岡本のJSB1000初優勝は、やはり日本のレース界にとっての大事件であり、岡本には快挙、そして中須賀にとってもやはり大きなレースでした。そのレースはコチラを→www.autoby.jp/_ct/17630146

明けて日曜のレース2。スタートから早々と中須賀と岡本が抜け出してのマッチレースは、3番手以降を周回ごとに引き離しながらの一騎打ちとなっていきました。
中須賀はとにかく前へ前へ、序盤からぐいぐい。そして岡本も、そこに離されじと全開。このふたり、22周のレースだってわかってんのかな、ってくらい、序盤からブレーキングでブルブル車体を震わせて、コーナー立ち上がりではタイヤをずりずり滑らせてのレースでした。

画像: 中須賀が前、岡本が後 3位以下ははるか後方でした

中須賀が前、岡本が後 3位以下ははるか後方でした

「中須賀さんは、本当にブレーキングが強い。もう、深くて深くて、きのうのレース1で、はじめてブレーキングで前に出られたんです。だから今日のレース2も、とにかくついて行って、チャンスがあったら仕掛けようと思っていました」(岡本)

画像: 岡本迫る、岡本迫る!

岡本迫る、岡本迫る!

レース序盤も中盤も終盤も変わらないトップ争いのシーン。いつしかこのふたりの後方は10秒、15秒、20秒と差がついていました。中須賀が前、岡本がその背後にピタリ。その間隔は1周ごとに開いたり迫ったりで、それでも決して離れすぎない。タイム差で言うと、ほぼ0秒1~2前後で、決して1秒は開かない。そういうヒリヒリしたレースでした。

画像: 岡本迫る!中須賀にベタづけ!

岡本迫る!中須賀にベタづけ!

ついに岡本が仕掛けたのがラスト3周、20周目。中の人が4コーナーから登りのS字あたりに陣取っていると、岡本が前、その後ろに中須賀の順。おそらくシケインからホームストレート、1~2コーナーでなんとかかんとか前に出たんでしょう。ついにこのレースで初めてトップに立ちました。
けれど、それでも中須賀もすぐに前に出て残り2周。次にカメラの前に現われたふたりの差は、このレース最大に開いていました。

画像: 岡本、ついに中須賀をパス!

岡本、ついに中須賀をパス!

――ラス2周は何があったの?
「3コーナーでハイサイド食らっちゃいました」(岡本)
岡本の表情は、やり切ったけど勝てなかった、ってサバサバしていましたn

これで勝負あり。中須賀の、最初から最後まで途切れない集中力が、岡本の2連勝を阻んだ、そんなレースでした。
――やり返したねぇ。
「キツかったよー。最初っから最後までぜんぶ全開フルブレーキだもん」(中須賀)
中須賀の表情は、充実しきってやり返したぜ、って嬉しそうでした。

画像: けれど中須賀はすぐに抜き返しました!

けれど中須賀はすぐに抜き返しました!

これで菅生大会の2レースは1勝1敗。終わってみれば、3位を25秒も引き離す、ふたりのマッチレースショーでしたね。いやいいレースだった。岡本よくやった、中須賀よくやった!

画像: 3位には清成龍一 水野と作本の3番手争いの後方につけて、最終ラップでふたりがミス、その間に!

3位には清成龍一 水野と作本の3番手争いの後方につけて、最終ラップでふたりがミス、その間に!

「記録って、いくら気にしないでやってても付きまとうものだから、その連勝記録がストップ、2年半ぶりかな、悔しい気持ちがいっぱいで、どうやったら勝てるかな、ってことばっかり、きのうの夜は考えてましたね。このコースは、本当に岡本君もアベレージが速くて、レースは前に出て毎回フルプッシュしてフルブレーキして、それでもだめならしょうがない、って。岡本君はコース後半が速いからね、そこを僕のペースをどう上げていくか、てことばっかり。自分を信じてやってきて、いいレースが見せられたんじゃないかな、って思います」(中須賀)

「素直にうれしいでーす!」
レース後のインタビューで叫んだ絶対王者。こんなシーンも珍しい、よっぽど悔しかったレースとよっぽど嬉しかったレースでした。
さぁこれでチャンピオン争いが楽しみになってきた!と思ったら、次戦は……8月20日……だと? モウチョットナントカナランノカコノニッテイ。

画像: まだまだ壁は高かった!

写真・文責/中村浩史

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