オフロードバイク用に通常ラインナップされているタイヤの中でも最も特殊なのが、サンド・マディ用のタイヤ。今年デビューしたばかりのダンロップMX14を編集部がインプレッションしてみた

画像: ジャンキー稲垣

ジャンキー稲垣

モトクロスヴィレッジでラップタイム1分を切れず、JNCCではFUN Dクラスで後ろから数えた方が早い程度の万年ビギナー。口だけは達者

エルズベルグロデオで鈴木健二が履いたタイヤ

オフロードタイヤのカテゴリーは年々複雑になりつつある。モトクロス用、オフロード用、FIM規格エンデューロ、トライアル用、ハードエンデューロ用(ガミータイヤ)と大きく分類できるが、このいずれもがクロスオーバーしはじめているのが昨今のオフタイヤ界隈の状況である。たとえばブリヂストンのFIM規格エンデューロタイヤであるE50は、フロントタイヤのグリップ感を好んだライダーが全日本モトクロスのIAクラスで使うことがある。またハードエンデューロ用に開発された、極端にコンパウンドの柔らかいガミータイヤの中では剛性感のあるダンロップAT81EXは、舗装路に近いカチカチのハード路面と相性がよくJNCCのプラザ阪下などでも利用されることがある。JNCCではスキー場において路面を保護するためにFIM規格のエンデューロタイヤを義務化(COMP GPのみ)した。

モトクロス用タイヤの事情はどちらかというとシンプルになってきたと言えるかもしれない。全日本モトクロスのようなレースでは、コースを思いっきり掘り起こすことが多くなったため、ミディアムソフトを選ぶことが多いからだ。車両メーカーも出荷時にミディアムソフトを標準で装着するほどだ。

画像: エルズベルグロデオで鈴木健二が履いたタイヤ

今回インプレッションしたMX14は先代のMX12を進化させたサンド・マディ用のタイヤである。ブロックパターンを見てもわかる通り、非常に特殊なタイヤで、パドルのような形状が柔らかい路面をかきむしりながら進む。柔らかい土相手なのでいかに路面に対してブロックが刺さるかが大事。だからサンド用タイヤのブロックには、従来とても固いコンパウンドが使用されてきたが、最近では名阪スポーツランドのようにサンド層の下にハード路面が隠れていることを想定して実はハード路面も走れるようなレンジの広いコンパウンドが採用されている。能塚智寛は全日本モトクロスの開幕戦HSR九州の予選でドライコンディションなのにこのMX14をチョイス、スタートで前に出るための作戦だったそうだがIA1のトップライダーがそう思えるほどレンジが拡大している。特殊なタイヤであるにも関わらずオールマイティなのだ。

画像: 全日本モトクロスの開幕戦予選では能塚がMX14をチョイス

全日本モトクロスの開幕戦予選では能塚がMX14をチョイス

このレンジの広さに目をつけたのが先だってエルズベルグロデオに参戦した鈴木健二。日本で実戦テストを繰り返し、木の根やウッズなどでもグリップ感がよく、さらには「上る」ことに対してガミータイヤよりもアドバテージを持っていることを確認した。鈴木は「赤土のキャンバーだけはグリップしない。それ以外ならどこでも対応できるタイヤです。自信をもってエルズベルグに履いていきます」と豪語した。

画像: エルズベルグのガレセクションをアタックする鈴木健二

エルズベルグのガレセクションをアタックする鈴木健二

サンド質のモトクロスコースでは味わったことのない推進力

画像: サンド質のモトクロスコースでは味わったことのない推進力

まず持ち込んだのは福島県のモトスポーツランドしどき。サンド質とハード路面がいりまじるMX14格好のテストの場である。110幅のMX14をYZ125に履かせて走ってみたが、まずスタートから延々続くサンドの登りは味わったことのない推進力を感じた。タイヤが路面をかきむしりながら走るような通常のモトクロスタイヤの感覚ではなく、タイヤがほとんど無駄なスリップをすることなく食いついている。これはサンド質のセクションでは異常なほどの気持ちよさだった。コーナリングの脱出時などもほとんど滑ることなく走って行くため、走り方を若干変える必要を感じたほどだ。

また下りのブレーキングでも好感触だった。ブレーキングギャップではしっかりタイヤがギャップに刺さりながらタンタンと弾かれていく感触がある。特に斜め横方向のグリップが好感触で、ミディアムソフトとそう大差ないなという感想を得た。MX12も同じような感触があったが、それ以前のサンド用タイヤは横方向に弱くていつ滑り出すのかつかみづらかった。そういった怖さはMX14には感じない。

では固い路面ではどうか。しどきの後半セクションにはある程度ハードな路面があるが、これもミディアムソフトと同等だろうという感触だった。こじるように曲げていこうとするとずばっと一気に滑りそうな嫌な感触が残るものの、若干気を遣う程度で素直な側面が見えてくる。

画像: サンド質には当たり前だけど最高の感触

サンド質には当たり前だけど最高の感触

画像1: ダンロップMX14レビュー「サンド・マディ用なのにカチパンでも走れる不思議タイヤ」

画像2: ダンロップMX14レビュー「サンド・マディ用なのにカチパンでも走れる不思議タイヤ」

クロスカントリーにおける有用性

次にJNCCの神立FUN GPにこのMX14を履いて参戦してみた。鈴木が言っていた通り、キャンバーは若干の苦手を感じることがあった。無理だと思うほどではないがリアタイヤのキャンバーに対するグリップ感をあまり信頼できず、少しずつ下がっていってしまう感触がある。

画像: PHOTO/のふ@nofpekex_12 JNCC神立にて。特にヒルクライムでその威力を発揮。路面が難しくなればなるほど、MX14のメリットが出てくるはず

PHOTO/のふ@nofpekex_12
JNCC神立にて。特にヒルクライムでその威力を発揮。路面が難しくなればなるほど、MX14のメリットが出てくるはず

だがおおまかに、ほとんどの路面で好印象だ。特にサンドではなくハード路面のヒルクライムでも路面をかきむしりながらも思い切り前に進んでいく。ゆるいスピードでヒルクライムに入ってしまったような場面で、ここから加速は難しそうだと感じても、ぐいぐいタイヤが路面をかいてくれるためマシンをまっすぐに保っていれば安心感をもって開けていくことができる。

ガレでは、弾かれる感触をある程度強めに感じたものの、無理なく前進できるフィーリングだ。ガミータイヤのような安心感には及ばないが、しっかりコントロールできればちゃんと前に進む感触がある。

90分のFUN GPで6周した僕の場合は、MX14にはほとんど摩耗がみられないほど耐久性があることも付け加えておこう。

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