まとめ:西野鉄兵
静かなバイクブームのなか、中古車落札額の平均値は急速に高まる
ここ1年ほど、バイク店を取材するたびに「車両が全然入ってこないんですよ」という言葉を耳にしてきた。新車を扱うディーラーはもちろん、中古車ショップでも成約済の札がついた車両が目立つ。また販売されている中古車の価格も数年前と比べ、全体的に上昇している気がする。

需要と供給のバランスで、需要がだいぶ勝っている状態なのだろう。過去のバイクブームでは、北海道ツーリングの流行やビックスクーターの急速な普及、夜間の集団走行による騒音問題など、社会現象といえるほど目に見えて分かるものがあった。
いまは、長年バイクに乗っていてかつ、つい最近に売買を経験した人以外は気づきにくい「静かなバイクブーム」といえるかもしれない。
実際に中古車市場の場合、どのような値動きをしているのか。業界大手のバイク王に尋ねたところ、興味深い最新データが得られた。
●業者オークションでの平均落札価格の推移
区分 | 2018年9月~2019年8月 の対前年比 | 2020年9月~2021年8月 の対前年比 |
---|---|---|
126cc~250cc | 105.8% | 133.5% |
251cc~400cc | 104.1% | 154.1% |
401cc~ | 98.9% | 124.7% |
全排気量 | 107.8% | 126.1% |
この表は、業者オークションでの平均落札価格を元にしてバイク王が算出したものだ。直近1年とその前年が、対前年比でどのくらい推移したかを示している。
2017年9月から2019年8月までは、特段目立った動きはなかったとことが分かる。大型バイクに関してはマイナスとなった。
しかし直近1年の対前年比は、どの区分を見ても、平均落札価格に一定の伸びが見られ、全体の相場が上がっている。わずか1年の間に1.2倍から1.5倍以上の値上がり率を記録。今年と去年では、状況がまったく異なっているというわけだ。
とくに高騰している車種は? 高値がつく絶版車に動きが!
この1年間、排気量を問わず値上がりを続けるなかでも、とりわけ400ccクラスのネイキッドバイクが顕著な動きを見せているという。下の表をご覧いただきたい。同じく業者オークションでの平均落札価格を元にバイク王が算出した車種別の値上がり率だ。
●業者オークションでの「400ccネイキッド」の平均落札価格の推移
区分 | 2018年9月~2019年8月 の対前年比 | 2020年9月~2021年8月 の対前年比 |
---|---|---|
カワサキ Z400FX | 132.6% | 219.5% |
スズキ GS400 | 87.3% | 205.4% |
ホンダ CBX400F | 113.8% | 213.4% |
カワサキ ゼファーχ | 104.1% | 208.5% |
ヤマハ XJR400R | 100.7% | 201.3% |
カワサキ ZRX400 | 104.3% | 222.6% |
スズキ GSX400インパルス (GK79A) | 105.9% | 207.7% |
ホンダ CB400Four (NC36) | 100.0% | 189.9% |
Z400FX・GS4000・CBX400Fは、言わずと知れた名車中の名車。1970~80年代に発売された車種となり、10年以上昔から定価をはるかに上回るプレミア価格で取引されている。それがこの1年は前年の2倍を超える価格で落札されたことになる。

ホンダ CBX400F(1981)

スズキ GS400(1976)
さらに注目したいのは、ゼファーχからCB400Four(NC36)までの車種だ。

ホンダ CB400FOUR(1997)
1974年に登場した「ホンダドリームCB 400 FOUR」ではなく、世紀末に登場したモデル。少し前までは手ごろな価格で手に入った印象だが、いまはこの復刻モデルも人気の旧車となっている。

スズキ GSX400インパルス(1994)
インパルスの名がつくモデルは1982年に「GSX400FSインパルス」が登場した。いま高値で取引されだしたのは、1994年に発売されたこの3代目インパルス。その後、2004年に4代目となる「インパルス400」も登場。

カワサキ ゼファーχ(ファイナルエディション・2009年)
ゼファーχは、新車販売当時から高い人気を誇った。最終型は写真のファイナルエディションで、2009年に発売された。約12年落ちとなるいま、中古車価格は高騰。1970~80年代の本格的な旧車と比べると、所有後のトラブルで困ることもだいぶ少なそうだ。
これらは主に1990年代に誕生。2000年代後半まで生産されていたモデルもある。いずれも新車が販売されていた当時は人気を博し、生産台数は決して少なくない。
10年くらい前までは、程度がよく値段も手ごろな車両が数多く出回っていたという印象がある。現在34歳の筆者も学生時代に周りの仲間がよく乗っていた車種ばかりだ。そのためか旧車という印象はない。言ってみれば買いやすく、学生たちにもちょうどいいモデルだった。
それが突然2020年~21年に、1年前の2倍前後の価格で落札されるようになったというのだから驚く。「え、毎日のように見かけたあのバイクたちが?」といった不思議な感覚だ。
要因として、新車の供給不足が関わっているは間違いないと思う。旧車を得意とするバイク店やカスタムショップなどでは「70~80年代の車両の球数がいよいよ少なくなってきた」という話もよく聞く。平成から令和となり、従来の旧車と呼ばれていた枠が広がりつつあるようだ。私の同世代や少し年上の世代が「青春時代のバイク」を求めだしている、なんて話を聞いたこともある。
もちろん新型コロナによって生活のスタイルが変わったということも影響しているだろう。

▲バイク王公式サイトの在庫一覧ページで試しに「XJR400R」と検索してみた。
XJR400Rのメーカー希望小売価格は年式にもよるが60万~70万円といったところ。状態のいいものは軽く当時の新車価格を超えている。
www.8190.jpいまが売り時、来年のことは誰にも分からない
今回ご覧いただいたデータから分かることは、約1年前までと比べて、業者オークションでの落札価格の値上がりに応じ、中古車販売価格も確実に上昇している、ということ。
そして、もし近いうちにバイクを手放そうと思っているなら、いまは高値買取が期待できるチャンスだということだ。とくに400ccクラスのネイキッドやレプリカ系の買取価格が上がっている、とバイク王はいう。
市場にバイクが「足りていない」現状がいつまで続くかは誰にも分からない。対前年比の値上がり率が200%を超えることもあれば、逆もしかりと考えられる。

バイク王では、電話一本もしくはウェブ予約で自宅まで出張してくれる無料の買取サービスを実施中。また公式ウェブサイトでは、愛車の相場が即座に分かるお試し査定も24時間無料で行なえる。
自宅で眠らせていたバイクが思わぬお宝に化けているかもしれない。少なくともいまは、ここ数年でもっとも売り時なのは間違いないだろう。
まとめ:西野鉄兵