3人のダカールウイナー、18連勝の経験を持つトップマネージメント。どう見てもKTMが強いダカール2020、ホンダファクトリーチームにチャンスはあるのか。
第42回ダカールラリー
2008年にテロリズムの危険を理由に中止されたのを最後に、ダカールの開催地はアフリカを離れ南米大陸に移転した。それから12年、この世界最大のクロスカントリーラリーの舞台は中東サウジアラビアへと移されることになった。
前回の2019年大会では、1978年に始まるダカール史上、初めて国境を越えず、ペル一国内で完結するルートが採用された。「一国完結」のルートは、2020年のサウジアラビアでも踏襲されることになった。
75%が砂の12ステージ
1月5日にジッダをスタート、首都リヤドでの休息日を挟んで1月17日にキッディヤにフィニッシュする全12ステージ。走行距離は7500キロ、そのうちスペシャルステージは5000キロ、全体の75%がサンドという、これまで以上に「エクストリーム」なレースになりそうだ。
ゴンサルベスが脱退
南米移転からファクトリーチームとしてダカールに復帰したホンダ(HRC)は、パウロ・ゴンサルベスとジョアン・バレダという二人のエースがチームほ牽引してきたが、ゴンサルベスは2019年のラリーを最後にチームを離れ、インド企業のHEROに移籍した。HRCの期待を背負うのは、昨年、優勝争いに加わりながらナビゲーションに関係するペナルティで後退してしまったケビン・ベナビデス、また中盤のステージ7時点で総合トップに立ちながら、翌日エンジントラブルでストップしてしまったリッキー・ブラベック。もちろん、ジョアン・バレダも優勝候補に挙げられる。
アメリカのデザートレース出身で抜群のスピードを持つリッキー・ブラベックは「ラリーではどんなことが起こるか予測もつきませんが、サウジアラビアは、ほぼすべてのライダーがコースを知らない、初めての土地だということは間違いなですね。地元のライダ―に有利ということもありません。ナビゲーションはより重要で、スピードだけではなく、スマートなラリー運びが重要になるでしょう」と話す。
19連覇へ手を伸ばすKTM
KTMは今回も優勝の最有力候補という陣容を誇示する。トビー・プライス、マティアス・ウォークナー、サム・サンダーランドは、いずれも南米ダカールの勝者で、マシンの信頼性、チームマネージメントの面でもまったく不安要素がない。2019年のトビー・プライスは骨折した手首が完治しないままのスタート。中盤まではスローペースで完走狙いに見えるラリーだったが、後半徐々にポジションアップして、最終ステージで逆転優勝した。結果、KTMは1-2-3フィニッシュ。戦略面で見せる安定感は、ホンダと好対照とすら言える。
MXヒーローは「賢者のラリー」を見せる
母体をKTMと同じくするHusqvarnaファクトリーチームは、しかしレースでは小規模体制ながら打倒KTMを狙う強力なコンペティターだ。パブロ・キンタニーアは過去最高3位、前回の2019年も4位でフィニッシュ。注目されているのはアメリカのMX出身ライダー、アンドリュー・ショートだ。2018年に初めて出場し堅実な走りで17位、FIMクロスカントリーラリー世界選手権でも経験を積みダカール2019では一気に総合5位までポジションアップした。
「2シーズンに渡ってラリーに取り組んで、トップ争いに加わる準備はできたと思います。サウジアラビアは誰にとっても未知のコースで、その点、誰にでも平等にチャンスがあります。自分のようなラリーのビギナーにはプラス要素になると思っています」と、リッキー・ブラベック同様に、イコールコンディションでのラリーに期待を寄せている。
フランスの名門チーム
フランス拠点のヤマハオフィシャルチームは、アフリカ時代からの経験豊富なチームで、常にトップ争いにからむ存在だ。なかでもアドリエン・ファン・ビベレンは、過去4位入賞の経験があり、2018、2019はマシントラブルでリタイアしているが、ステージ優勝をはじめ、常にトップ争いをしているライダー。ザビエル・ソルトレートも2019年に総合5位でフィニッシュ。エンデューロ世界選手権で活躍するジェイミー・マッカニーを新たに起用するなど、チームを強化しているヤマハも優勝候補の一角と言って間違いない。
チーム力、そしてライダーの実績から見ても、KTMが連覇記録を更新する可能性が高いと見る向きが多いのではないだろうか。しかしショート、ブラベックがコメントするように、まったく新しい土地での開催という未知数がトップ争いにどう影響するか。砂漠で繰り広げられる最高峰のバトルは1月15日スタートだ。