特性さえ掴んでしまえば刺激的な遊びの相棒に！
なんとも面白そうなバイクが登場した。このFX110は、アメリカのクリーブランド・サイクル・ワークス(以下CCW)製トレッキングバイクだ。見ての通り、自転車的な取り回しやすさを魅力にする、新ジャンルのオフ系軽量バイクといっていい。
特徴的な前後同サイズの21インチホイール・タイヤに、独自に製作したのだろうか、カブ系リメイクの110㏄エンジンを搭載。見て解るとおり自転車チックな華奢な造りだが、その車重はなんと85㎏以下。この軽さとタイヤ選択による最低地上高の高さこそが最大の魅力であり、このバイクの武器だ。
では、と、ちょっとしたダートに持ち込んでみたんだが、予想どおりの走りもするし、意外な癖もある。
まず、この細いタイヤをリアに使ったことの影響から。装着タイヤはエンデューロ用の、ブロックが比較的まばらに生えているタイプだ。そのため、少しスロットルを開けすぎるだけで簡単に滑り出す。ぬるっとした傾斜地の走行では、普通のトレールモデルよリも滑りやすいように思う。タイヤの内圧も多少落してみたのだが、タイヤ自体のボリュームが少ないので、それによる衝撃吸収力は少ない。だから破綻するのも早く、凸凹した斜面を横断するような場面では特によく滑った。たぶん、同サイズでもトライアルタイヤのように粘りあるタイヤを装備するとトラクション性能もかなり変ると思うのだが……このままの状態ではバイシクル・モトクロスコースのようなハード路面との相性の方が良いだろう。
サスもトライアル車のようなしなやかなものでなく、安定指向ダンパーにソフトなバネが組み合わされている。もう少しサスストロークが欲しいところだが、残念、大きめの衝撃ですぐにフルボトム寸前までストロークしてしまう。それゆえ、段差を登るような走行では、かなりの衝撃で跳ね上げられることがある。それにカブ風のエンジンだ。クラッチは自動遠心式。どんな場所でもエンストはしないが、瞬発力は無いから、ある程度勢いをつけてヒルクライムしないと失速したりもする。また極低速からの駆動力発揮にはタイムラグがある。その取り扱い方のコツを掴むのには慣れが必要。
だが、こんな特性さえ覚えてしまうと、全てのネガを軽さでフォローできる。また細い前後タイヤが場所によっては強烈な走破性を生む。30㎝もあろうかという、ぬかるみを掻いてその下の路面を噛み前に進む。また車高の高さから、深い流水にもハンドルを取られにくい。
とはいえ、軽いからとコミューターとして使うには酷だ。ギヤリングの関係で街中ではノイジーだし、50㎞/hほどのコーナングでも、安定性はあまりよくない。
屈強さを基にしたタフな走りではなく、そのか弱さで様々な難敵をいなしてクリアする走りだ。それに何処かでスタックすれば引っぱりあげればいい、持ち上げればいい、ひとりでも何とかなる……だから何処にでも入り込めるぞ、と、そんな誘惑をしてくるオフロードギアなのだ。
SPECIFICATION
全長×全幅×全高 2100×850×1180㎜
シート高 860㎜
乾燥重量 83㎏
エンジン形式 水冷4ストOHC2バルブ単気筒
総排気量 106.7㏄
ボア×ストローク 52.4×49.5㎜
燃料供給方式 キャブレター
燃料タンク容量 3.2ℓ
ブレーキ形式 前・後 ディスク・ディスク
タ イヤサイズ 前・後 80/100-21・80/100-21
価格 27万円（税込）
PHOTO：関野温
公式サイト
