2013年、JNCCで糸魚川が初めて使われた際、多くのライダーがそのスケールに驚愕した。爺ヶ岳や、鈴蘭や、様々なスキー場がXCフィールドとして使われているものの、糸魚川の爽快さは格別だ。全開でゲレンデを上りつめていき、スロットルと体が緊張の糸でギュッと収縮していくなか、突如現れる山頂、そして眼下に広がる糸魚川の街並みと日本海。

画像1: ファイナル糸魚川、18最終戦に向けて上がるJNCCのボルテージ
画像2: ファイナル糸魚川、18最終戦に向けて上がるJNCCのボルテージ
画像3: ファイナル糸魚川、18最終戦に向けて上がるJNCCのボルテージ

2018年、その糸魚川ラウンドはそれ以降開催されないことが発表された。糸魚川に惜しみない賛辞を送るため、多くのJNCCランカーが最後のフルスロットルを楽しんだのだ。

JNCC Rd.7 シーサイドバレー糸魚川
日時:2018年9月30日
会場:新潟県糸魚川シーサイドバレースキー場

小池田の不調が続く中、渡辺が連勝

とかく、2ストローク250のセル付きは、JNCCのホールショットに強い。きっかりセッティングを出して、メンテナンスされた2ストロークは、セルがまわり始めると同時にエンジンが目覚める。キュルキュル…ボボン、間を置いて始動する4ストとは異なり、キュ・ボン!くらいのフィーリング。その特性と反応速度を活かして、石戸谷蓮はKTM時代から、いまのBetaにいたるまでホールショットを欲しいがままにしてきた。

画像1: 小池田の不調が続く中、渡辺が連勝

糸魚川でホールショットを奪ったのは、しかし石戸谷ではなく皮肉なことに同じBetaのRR2Tを駆る齋藤祐太朗。自ら、エンデューロだけでは速くなれないことを悟り、モトクロス修行の期間を経て、再度Betaと契約した期待のセカンドジェネレーションだ。

画像2: 小池田の不調が続く中、渡辺が連勝

オープニングラップで気を吐いたのは、鈴木健二だった。前戦から導入してるYZ450FXは今年モデルでオールニューになり、よりドライバビリティを高めたもの。当然、450ccのパワーは糸魚川との相性は抜群でヒルクライムでは敵なしの登坂力を誇る。「1周目、「もらった!」と思ったら一瞬で消えた。ほんと周回のラストで転けちゃったんだよね…、頭打ってるのもあってペースも上げずらかった」と鈴木は言う。「今日は石がすごく滑る。全然食いつかなくて、フロントが安定しなくて、どこに行くかわからない感じです。コントロール出来なかったですね」とこの日の難しさを語る。

画像3: 小池田の不調が続く中、渡辺が連勝

鈴木の後続につけていたのは、おなじみ渡辺学と小池田猛だった。ぶっ飛んだ鈴木を確認すると、渡辺がトップに躍り出てオープニングラップを制する形。XCは、おいて行かれてしまうとその差を埋めていくことが難しい。要するに大事なのは序盤における作戦だ。何度もこのパターンに持ち込みながらも、小池田を前に出した隙に離れていき、そのまま逃がしてしまう思いをしてきた渡辺だからこそ、序盤での抑えに手は抜かない。逆に言えば、序盤で置いて行かれるようなことがあれば、それはもう敵わない相手だと思うしか無い。

画像4: 小池田の不調が続く中、渡辺が連勝

「小池田くんを前に行かせたら絶対的に速いんで、体力が無くなる前に、前に立たれないように走るのが定石です。小池田くんも、しっかりここはついてきて様子を窺いにきます」と渡辺。レースによって、小池田はスピードに自信があるラウンドであれば早めに勝負をしかけて強引に前へ立ち、引き離す作戦をとる。しかし、ここ糸魚川では渡辺の背後でじっとはりついていた。

画像5: 小池田の不調が続く中、渡辺が連勝

実力の近いものが、差し合いのバトルをする場合、ラインをつぶし合うために、ペースが落ちがちだ。しかし、今回の糸魚川では膠着状態に入ってしまった。こうした時、給油タイミングが大きな意味を持ってくる。まさに、この糸魚川では小池田・渡辺ともに同じ周回でピットイン。10秒ほどピットワークが速かった小池田の先行を許してしまった。「その時点で一気にちぎられて、これは追いつかないな〜、って思ってた。だけど、それでも小池田くんに俺が後ろから追いつけば、小池田くんもちょっと焦ったりして、ミスが出たりするんじゃ無いかなぁと想像していました。体力を温存するよりも、攻める方に切り替えたんです」と渡辺は言う。

鈴木が語っていたコースの難しさからだろうか、この渡辺の言葉通り小池田は後半に大きなクラッシュをしてしまいペースを大幅に落とさざるをえなくなってしまった。立ち上がりにも時間がかかり、7番手まで順位を落としてポイントをつなぐ作戦へ。渡辺は、余裕をつかみつつも、小池田の様子がわからないこともあってそれなりのペースを維持してフィニッシュを目指した。

画像6: 小池田の不調が続く中、渡辺が連勝

1位でゴールラインを超えた渡辺は言う。「小池田くんは、相変わらず速いし、タイトルは意識していないですよ。そりゃとれたらいいですけどね。最終戦は2ストロークで出るつもりです。まわりもそのほうが威嚇できるかなとおもって」とのこと。もちろん、この時、最終戦のAAGPにホンダファクトリー勢が大挙してくるとは、夢にも思っていない。

ラストまであきらめない、鈴木VS中島、齋藤VS石戸谷
ヤマハがCOMP-GPのホッテストアワードを独占

3位以下も面白いレースだった。

画像1: ラストまであきらめない、鈴木VS中島、齋藤VS石戸谷 ヤマハがCOMP-GPのホッテストアワードを独占

1周目で優勝争いから離れた鈴木だが、「ペースはそんなに上げずに周回してたんですが、そのうちナカジ(中島敬則)がみえたんですよね。それで、火が付いてバトルを楽しみました」と。追いつかれた中島は、2位を死守すべくペースを上げるものの、糸魚川のワイドなフィールドではラインをつぶし切れない。特に20mはあろうかという上りでは、450ccのパワーの前になすすべなく鈴木に先行を許してしまった。

画像2: ラストまであきらめない、鈴木VS中島、齋藤VS石戸谷 ヤマハがCOMP-GPのホッテストアワードを独占
画像3: ラストまであきらめない、鈴木VS中島、齋藤VS石戸谷 ヤマハがCOMP-GPのホッテストアワードを独占

その後方では、齋藤と石戸谷が差し合い、4位争いを繰り広げる。石戸谷はガス欠の恐怖と戦いながらも終始齋藤に食いつき、最終ラップゴールの手前までインを奪おうとラインを交錯させたものの、バトル時の腕前は齋藤が一歩上か。齋藤が譲らずにフィニッシュ。

画像4: ラストまであきらめない、鈴木VS中島、齋藤VS石戸谷 ヤマハがCOMP-GPのホッテストアワードを独占

各クラスの上位を、レース後に仮表彰するホッテストアワードは、なんとヤマハが全席を独占した。これまで鈴木健二が引っ張ってきたヤマハ勢は、JNCCにおけるシェア1位を譲ることなく日本のXCシーンを文字通り席巻してきたが、ホッテストアワードの独占は過去に例がなかったのではないだろうか。

AAGPの行方

すでに既報だが、最終戦AAGPはGNCCからの刺客がやってくるばかりでなく、成田亮・能塚智寛のホンダファクトリーライダーや、熱田孝高らがやってくる。JECに出たことのある熱田、そしてJNCCをかつて沸かせた能塚は想像がつくものの、成田のXCにおける実力はまったく未知数。だが、AMAスーパークロスで3位に入賞し、全米を驚かせたラウンドは、大雨のマディコンディションで、難しいコンディションではいつもよりさらに周囲と差をつける成田だけに、XCとの相性はいいはず。彼らがどこまで現JNCCトップ陣へ影響を与えるのか、それは定かではない。だが、小池田・渡辺の僅差のタイトル争いも、さらに白熱することは間違いないところだ。

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