なんなんだFUNAI RACINGって!
そのキャラクターと活きの良い走りで、いま関東ハードエンデューロ界で急速に知名度を増しているチームが「FUNAI RACING」だ。
その設立は2014年頃、一緒にオンラインゲームで遊んでいた気の合う仲間たちが、オンロードバイクでツーリングするところから始まった。それが徐々にトレールマシンで林道に行くようになり、オフロードにハマりこんでいったという。
「オフロードバイクで走れるコースってのがあるらしい」
そのうち仲間の誰かが、そんなことを言い出して、2016年の12月に初めて走りに行ったのが偶然にも「オフロードパークSHIRAI」。茨城県にあるトライアル場で、エンデューロマシンでも走行できる。もちろんトライアルのために作られた場所だから、関東屈指のハードコースとして名が知られているほどオフロード的に言うとテクニカル。ガレとロックばかりのところだ。
しかし、SHIRAIの常連ライダーに熱烈な歓迎を受け、すっかりSHIRAIの魅力にハマってしまったという。
そこで難コースを攻略する面白さに目覚めてしまったFUNAIのメンバーたちは、ずるずるとハードエンデューロにのめり込んでいった。CGCやCROSS MISSION、HINO HARD ENDUROといったレースで経験を積み、オンロードバイクを売却してマシンもパワーアップし、いまやほとんどのメンバーがエンデューロレーサーを所有している。
SNSで注目され、一躍人気チームの仲間入り
彼らのキャラクターはTwitterで垣間見ることができる。ここでFUNAI RACINGの魅力をほんの少しだけ紹介しよう。
練馬エンデューロハウスでの共同生活
練馬エンデューロハウス本日の食卓です pic.twitter.com/6KBCrGOg5c
— 男中田 (@knzcht) 2017年11月8日
FUNAI RACINGの中心メンバーは「練馬エンデューロハウス」と呼ばれるシェアハウスで同居し、鍋中心の食生活や、共同風呂などまるで昭和の大学生のような私生活を送る。
マジモンのYって?
CGCひなまつりエンデューロで鈴木健二氏がYZ125Xを駆り、優勝する姿を見て彼らが生み出したYZ125Xの代名詞が「マジモンのY」。これに乗れば鈴木健二氏のように速くなれると信奉されている。
ハードエンデューロ最強マシン「ドラゴン」
ベータ教に入信しました。これが俺の新しいドラゴンです pic.twitter.com/SRC0eK7ZGO
— タケル (@dopenrm) 2018年3月31日
近年、ロッシこと高橋博、AD tacこと和泉拓が選んでいることもあり、ハードエンデューロでシェアを拡大しているのが、BETAだ。その中でもX-Trainer 300は低速トルクが厚くて扱いやすく、ヒルクライムに特化したようなパワー特性がハードエンデューロ「最強」と言われる。
HINO HARD ENDURO 春の陣、目標は「魂の一周」
2018年4月29〜30日、群馬県日野カントリーオフロードで開催されたHINO HARD ENDURO 春の陣にFUNAI RACINGがエントリーした。彼らが目指すのは「魂の一周」。ミドルクラスはトップライダーでも一周30〜40分かかるというコースで、そこを仲間と助け合いながら2時間30分(+30分)のレース時間内で一周することがハードエンデューロの醍醐味なのだ。
こちらはFUNAI RACINGがレース前にアップした動画と、前日に下見する様子。「4段ヒル」は通常2段目まで登頂すれば良いセクションだが、4段を登りきることで大幅なショートカットになる特別セクション。入り口には彼らのチーム名が入った案内ポップが立てられていた。
「魂の一周ぶちかましました!」
#16 タケル 67位(1周)
「HINO HARD ENDUROのミディアムクラスは2回目の参戦で、前回出た時はDNF(一周できず)だったのですが、魂の一周ぶちかましました。最初の4段ヒルも登れて最高の気分でした! 一周できてよかったです! BETAのクロストレーナー300通称「ドラゴン」で、次は入賞目指して頑張ります!」
水玉ウエアは男の証「男中田」
#32 男中田 51位(1周)
「2周目のダートフリークヒルで時間切れでした。トンネル沢がとにかく辛くて全身が攣ってしまい、体力的にキツかったです。タイヤは今回、シンコータイヤの540DCを選びました。これまでレースでキャンバーで落ち続けてきたのに、おかげで今回は一回も落ちませんでした」
プリンス似の江戸っ子、石田トシユキ
ゴール直前でガス欠して最後の最後まで出し切った。エンストしながらのゴール。魂の1周 pic.twitter.com/dNunXcA7Fz
— 振動ゆり子@日野HED MID (@1shiyuki) 2018年4月30日
#51 石田トシユキ 69位(1周)
「勝沼のCROSS MISSIONに出た時にタイヤ越えでRMX250Sを投げてしまい、調子が悪くなったので、石戸谷蓮さんのマシンを中古で購入させてもらったんです。昨日SHIRAIで練習中にラジエーターホースを破損してしまって、レース直前まで修理していましたが、無事に完走できてよかったです。ゴール直前でガス欠になりましたが、なんとか滑り込みました!」
「僕はレースというか、山になりたいんです」
#44 HOLYススム 12位(3周)
「YZ125Xにカーボンパーツいっぱいつけていて、これで100馬力くらいアップしてます(笑)。おかげでダートフリークヒルも登れました。全体的にちょうどいい難易度のコースで「絶対いけない」ところもなく渋滞も少なく、とても楽しいレースでした。3周目になるとさすがに疲れも出てきてつまらないところでミスも出てきてしまいました」
ハードエンデューロこそ、若い情熱を燃やせる最高の舞台
ハードエンデューロ界ではFUNAIレーシングのようにSNSを通じて仲良くなり、毎週のように仲間で集まって練習し、メキメキと実力をつけてきている若手チームがいくつか存在する。
今回のレースは「ミドルクラス」とはいえ、実質ハードに近い難易度のコース。そこをきっちり一周できるのはかなりのスキルが求められる。しかし、経験が浅くても彼らのように若さと情熱を持っていれば、ハードエンデューロは最高の達成感が得られる修行の場となるのだ。