トライアンフのミドルアドベンチャーモデルTIGER900がモデルチェンジした。Off1では先行して行われた海外試乗会に参加しインプレッションを行ったが、国内試乗会にも参加。改めてニューモデルを紹介するとともに、編集部で購入し普段使いしているTIGER1200との差別化にも着目していく

新型TIGER900のラインナップ

新型のTIGER900シリーズには「GT」「GT PRO」「RALLY PRO」の3車種がラインナップしている。わかりやすく違いを説明すると「GT」と「GT PRO」はアドベンチャーの中でもオンロードの快適性を追求したタイプで、ホイールサイズは前19インチ、後17インチを採用している。サスペンションはMarzocchi製でホイールトラベルは前180mm、後170mm。「GT」と「GT PRO」の違いは、「GT PRO」のみリアサスに電子制御機構を搭載しており、その他にもグリップヒーターやパッセンジャーシートヒーター、フォグランプ、オートシフターなどが標準装備されている。

画像: TRIUMPH TIGER900 GT PRO ¥1,895,000 ※AKRAPOVICサイレンサーとトップボックスはオプション

TRIUMPH
TIGER900 GT PRO
¥1,895,000
※AKRAPOVICサイレンサーとトップボックスはオプション

画像: 気になるシート高は820-840mmで調整が可能。身長175cmの僕が840mmの状態に跨るとつま先はベッタリ着くが、踵は浮いている。

気になるシート高は820-840mmで調整が可能。身長175cmの僕が840mmの状態に跨るとつま先はベッタリ着くが、踵は浮いている。

対して「RALLY PRO」はオフロードでの走行性能を高めたモデルで、サスペンションはSHOWA製を採用し、ホイールトラベルは前240mm、後230mm。ホイールサイズは前21インチ、後17インチ。純正タイヤはブリヂストンのBATTLAX ADVENTUREだが、オプションでPIRELLIのSCORPION RALLYを選択可能。

画像: TRIUMPH TIGER900 RALLY PRO ¥1,975,000 ※試乗車ではMETZELER KAROO STREET(前)/KAROO 3(後)を装着していた

TRIUMPH
TIGER900 RALLY PRO
¥1,975,000
※試乗車ではMETZELER KAROO STREET(前)/KAROO 3(後)を装着していた

画像: シート高は860-880mmで調整が可能。身長175cmの僕が880mmの状態に跨ると両足のつま先がギリギリ地面に着く程度で少し不安が残るが、オフロードバイクに慣れていない人であれば問題ないレベルだ。

シート高は860-880mmで調整が可能。身長175cmの僕が880mmの状態に跨ると両足のつま先がギリギリ地面に着く程度で少し不安が残るが、オフロードバイクに慣れていない人であれば問題ないレベルだ。

900か1200か……
似ているようで全く異なるキャラクター

画像1: 900か1200か…… 似ているようで全く異なるキャラクター

Off1編集部ではTIGER1200 GT PROを購入し、様々な取材やプライベートに常用している。そこで今回の取材では普段からTIGER1200に乗っている編集部員・伊井がTIGER900に乗ってみて、そのキャラクターの違いを体感してみた(付け加えておくと、購入したのはTIGER1200 GT PROだが、TIGER1200 RALLY EXPLORERも丸一日お借りして乗り込んだこともある)。

画像2: 900か1200か…… 似ているようで全く異なるキャラクター

まずはTIGER900 RALLY PROに試乗。場所は神奈川県の採石場で、試乗コースはほぼフラットダートで、高低差もあり、林道にも近いシチュエーションだ。

これから初めてアドベンチャーモデルを購入するという人の中には、TIGER900クラスとTIGER1200クラスの違いを“ちょっと排気量が大きい(小さい)だけ”だと思っている人も多いのではないだろうか。何を隠そう、恥ずかしながらつい1年ほど前まで僕自身もそう思っていた。ところが実際に乗ってみると、すぐにTIGER900とTIGER1200が全く異なる性格付けのバイクだということがわかる。

当たり前だがTIGER1200の感覚でTIGER900に跨ると、車体のあまりのコンパクトさと軽さに驚かされる。とはいえ、どちらもアドベンチャーバイクだから、できることはそこまで大きく変わらないと思っていたのだ。しかしどうだろう。僕レベルだとTIGER1200 RALLY EXPLORERでは怖くてできないようなエンジンの高回転域を使った走行や、リアタイヤのスライドコントロールが可能ではないか。

TIGER1200とTIGER900はどちらも3気筒エンジンを搭載しており、不等間隔爆発のTプレーンクランクを採用している。排気量の大きいTIGER1200ではトコトコとした低回転域からデロデロと回る中回転域までを主に使っていて、まるで単気筒のような鼓動が生み出すトラクションの恩恵を感じていたのだが、その一方で高回転域を使うような機会はなかなか訪れなかった。ところがTIGER900ではその高回転域をより身近に感じることができるのだ。回転の上昇も実にスムースで、下から上までとても素直に出力が上昇するため、スロットルが開けやすい。

なお、TIGER900は今回のモデルチェンジで最高出力が13%アップして108PSに、最大トルクは90Nmになっており、非力感は全く感じない。

画像3: 900か1200か…… 似ているようで全く異なるキャラクター

TIGER900 RALLY PROに乗っていると、ついつい“よりスロットルを開けるにはどうすればいいか”や、“もっとリアを滑らせるには”、“ジャンプはできるだろうか”といった、イケナイ考えが浮かんできてしまう。これらはTIGER1200に乗っている時にはまず出てこない思考だ。6つのライディングモードの中からオフロードモードを選択することでリアのABSがカットされ、更にオフロードプロモードにすれば前後のABSとトラクションコントロールがカットされる。すると全ての操作をマニュアルで行い、スポーツライディングを楽しむことができるのだ。エンデューロ世界チャンピオンのイヴァン・セルバンテスがTIGER900 RALLY PROでラリー「1000 DUNAS RAID」に出場し、クラス優勝しているのにも納得がいく。

とはいえ、ほとんどのライダーは林道を含むツーリングで使用するはずだ。ある一定以上のスキルを持っているライダーであれば、TIGER1200でもTIGER900でもほとんどの林道を転倒せずに走破することはできるだろう。しかし、爽快感や走り終えた時の疲労度は圧倒的にTIGER900に分があるだろうし、急な動物の飛び出しや、対向車線からのはみ出しなど予期せぬアクシデントがあった時の対応にも余裕が生まれる。

重量もTIGER1200に比べて20kg以上軽く、取り回しや引き起こしも成人男性であれば1人で問題なくこなせる。足つきは先述した通りだが、身長に合わせてシートをアジャストさせられるため、幅広いライダーに対応できる。逆に林道の爽快感を少し削ってでも高速道路の快適性を優先させたいというライダーはTIGER1200を選ぶと良いだろう。

画像4: 900か1200か…… 似ているようで全く異なるキャラクター

さらに驚かされたのは、TIGER900 GT PROだ。Off1はオフロードバイク専門メディアであるにも関わらず、TIGER1200を購入する際にオフロード向けのRALLY PROではなくオンロード向けのGT PROを選んでいる。その理由は一度記事で詳細にお伝えしているが、林道を含む公道を走ることに限定すれば、RALLY PROの長い足と大きいタイヤはオーバースペックと判断し、それよりもGT PROの持つ車高が低いことによるフレンドリーさやオンロードでの快適さにメリットを感じたからだ。

画像5: 900か1200か…… 似ているようで全く異なるキャラクター

それと同じことが、TIGER900でも言えると思う。いや、TIGER1200よりも一層顕著かもしれない。細い道でのUターンのしやすさや、足つきの良さからくる安心感、レスポンシブなエンジンに3気筒Tプレーンクランクのトルク感……。TIGER900 GT PROは初めてスロットルを捻ったその瞬間から、まるで10年来乗り込んできた愛車かのようにしっくりくるフィーリングだった。個人的にはこれに前後ブロックタイヤを装着するのが、ベストチョイスな気がする。

ツーリングで毎週のように高速道路を使って県外へ旅をするような人は、TIGER1200の圧倒的な巡航性能や高速道路での快適性を重宝するだろう。しかし林道やワインディングでの軽快性や運動性能を優先するのであれば、ぜひニューTIGER900を検討してみてほしい。

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