長年オートバイに乗っているライダーならば、事故で障がいを負い、オートバイに乗れなくなってしまった仲間がいないだろうか。でももし、ともに青春を過ごした仲間と、もう一度一緒にツーリングできるチャンスがあるとしたら……。今年もアネスト岩田ターンパイク箱根にて、第2回となるSSP「やるぜ!! 箱根ターンパイク2023」が開催される。8月31日までクラウドファンディングを実施中だ

SSP(Side Stand Project)とは?

近年オートバイ業界の中で着々とその知名度を上げてきている「SSP(Side Stand Project)」をご存知だろうか? 事故などで脊髄を損傷した、片足を失ったなど、いわゆる障がい者になってしまったライダー(SSPではパラモトライダーと呼称)たちを、健常者のスタッフがサイドスタンドのように支えになることで、もう一度オートバイに乗る喜びを味わってもらいたい、という活動だ。

画像: SSP(Side Stand Project)とは?

一般社団法人SSPの代表を務めるのはロードレースの世界では知らぬ人のいない青木三兄弟の三男・青木治親。1995〜96年ロードレース世界選手権GP125の年間チャンピオンであり、現在はオートレースを生業としている。プライベートでは趣味としてオフロードバイクを嗜んでおり、実は日野ハードエンデューロにも出場した経験がある。

SSPが始まったきっかけは2019年7月の鈴鹿8耐のこと。テスト中の事故で下半身不随となってしまった青木三兄弟の次男・拓磨(2009年には4輪でダカール・ラリーにも参戦)をもう一度バイクに乗せよう、と「Takuma Rides Again」という企画が立ち上がり、下半身不随でも走行可能なように改造したCBR1000RRでデモランを行ったのだ。このニュースが多くの障がい者の目に留まり、問い合わせが殺到。それならば、と治親が一般社団法人SSPを立ち上げた。

ホスピタリティあふれるイベントを毎月開催

現在SSPでは月に一回ほどのペースで教習所やサーキットの敷地を借りてイベントを開催している。7月10日、三重県鈴鹿サーキットの交通教育センターで開催されたSSPには、全盲の青年が参加していた。

画像1: ホスピタリティあふれるイベントを毎月開催

山田翔太さん(19歳)だ。山田さんがSSPに参加するのは約1年ぶり2回目。

SSPとして、視覚障害のパラモトライダーというのは経験がないわけではない。しかし、山田さんの場合は先天性の全盲、つまり生まれた時から全く目が見えていない。これが何を意味するかというと、オートバイという乗り物を見たことがなく、その形すら認識していないということだ。

画像2: ホスピタリティあふれるイベントを毎月開催

多くのパラモトライダーと違い、下半身は動かすことができるため、オートバイに乗せるための補助はあまり必要ない。その代わり最初は山田さんの手を取り、オートバイのパーツを一つ一つ触ってもらい、オートバイの形を認識してもらうことからスタートした。

画像3: ホスピタリティあふれるイベントを毎月開催

青木宣篤に操作を教わる山田さんの隣で心配そうに見守るのはスタッフとして参加したお父さん。

「たまたまインターネットでSSPの活動を知って、視界障害の人も乗っていたので翔太も応募させてもらったんです。初参加の時は右も左もわからず、息子のことだけで精一杯だったのですが、スタッフの皆さんのすごく手厚いフォローがあったので、今回はお母さん一人に息子を任せて僕はボランティアスタッフとして参加し、少しでも皆さんのお役に立てたらと思いました」と語る。

画像4: ホスピタリティあふれるイベントを毎月開催

ブレーキの感覚がわからず、フロントブレーキを急激にかけてしまい、ジャックナイフ気味になる山田さん。

少し進んでは止まって、また進んでを繰り返し、オートバイの操作を身につけていく。目の見えない山田さんの課題は「真っ直ぐ走ること」。目標を視認できない山田さんにとって、進行方向を認識することはとても難しい。

画像5: ホスピタリティあふれるイベントを毎月開催

そこで考えたのは音を頼りに進む方法。先導するスタッフが笛を吹き、その音のする方に向かって進んでもらおう、というもの。そうして少しずつだが、一人で進めるようになってきた。このようにSSPでは様々な理由でオートバイに乗ることができないパラモトライダー一人一人に合わせたレッスン内容を考え、試行錯誤しながら取り組んでいる。

画像6: ホスピタリティあふれるイベントを毎月開催

笛の音がスピーカーと二重で聞こえてしまったために真っ直ぐ進むことができず、それを上手く伝えることもできないためにナーバスになってしまった山田さん。それでもSSPスタッフは「それでいい」と言う。安全面に考慮し、可能な限りサポートするのは当然だが、パラモトライダーが抱える障害は一人一人違うし、その全てに最初から100%対応することはとても難しい。反省点を共有することで、少しずつ山田さんとの距離を縮めていき、共に前進していくことが大事なのだ。

画像7: ホスピタリティあふれるイベントを毎月開催

山田翔太さん
「SSPに参加させてもらう以前も、両親がバイクでツーリングする時に後ろに乗せてもらったりしていました。初めて一人でオートバイに乗った時はドキドキとワクワクが入り混じって、スタッフの皆さんが大歓声で迎えてくれて、とても達成感があったのを覚えています。同じ視覚障害を持つ友人たちに僕がオートバイに乗ったことを伝えると、みんなすごく驚いてくれて、自分も乗ってみたいと言っていました。

スタッフの皆さんがすごく優しくて楽しい人ばかりですし、順番待ちの時間もたくさんの人が声をかけてくれて、そういうコミュニケーションも楽しめています。今日は暑くてちょっと疲れましたが、オートバイに乗るという目標を達成できて良かったです。明日会社に行ったらみんなに自慢したいと思います」

クラウドファンディングでSSPの活動を支援できる

SSPでは2023年9月10日にアネスト岩田ターンパイク箱根を貸し切って「パラモトライダーがかつてのツーリング仲間と一緒に公道を走る」ことができるイベント「やるぜ!!箱根ターンパイク2023」を開催する。

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