ヤマハ・テネレ700といえば、アドベンチャーバイクの中でも特にオフロードでの性能と信頼性に定評があるモデルだ。今回は、モトクロスをはじめ、BAJA1000やダカール・ラリーの参戦経験がある風間晋之介が自らタイヤ交換を行い、林道での実走を通して新型テネレ700の魅力に迫っていく。

風間晋之介:2017年、2018年とダカール・ラリーを完走。BAJA1000やモロッコラリーへの参戦経験も持つライダー。俳優としても活躍中。
アドベンチャーバイクのタイヤ交換って自分でできるの?
ガレージに持ち込まれたテネレ700。よりオフロード走行を楽しむためにオンロード主体のタイヤからオフロードを楽しむためのブロックパターンのタイヤへ交換を実施。アドベンチャーバイクのタイヤ交換って自分でできるの?という不安もあるかもしれないが、バイクの理解を深める意味でもセルフ交換に挑戦してみるのもいいかもしれない。林道などのオフロード走行ではパンクなどのリスクも通常より上がるし、こうした作業を出来るようにしておく事は、万が一の時に備える意味でも覚えておくと良い作業だ。
タイヤチェンジャーなどがあるとより交換も容易に出来るので、頻繁に交換作業などをする人は揃えておくのもいいかもしれない。車体からホイールを外し、ビードブレーカー(UNIT製)を使ってリムからタイヤを外していく。


モトクロスやエンデューロの愛好家にとって21インチのフロントタイヤは慣れ親しんだサイズなので交換作業も朝飯前だが、問題はリアタイヤ。150/70R-18という太さのあるタイヤはダカール・ラリーの車両に装着されていたものよりも太い。少々不安に思いながらも、作業をすると極太の太さが逆に作業のしやすさを産んでかなりスムーズに脱着完了。極太な分柔らかさ(曲がる余裕)が出来るので、想像を裏切る呆気なさだ。こうした作業を覚えておけばどの程度の工具が必要なのか、用意していくべきかの判断もつくので、林道などの山に入って行きたい人は一度試してみるのもいいだろう。そうしてテネレにブロックパターンのタイヤが装着され、林道への準備は整った。


※今回タイヤは前後ともにミシュランANAKEE WILDを装着。
自分でメンテナンスを行うことで、マシンへの理解はより深まり、点検の役割も果たす。さらには不測の事態にも対応できる力を身につけるためにも日々のメンテナンスを自分でこなしていくのは大切だ。
テネレ700のオフロード走破性
翌朝、早速林道へと繰り出す。
当然舗装路を走っている方が長くなるが、新型テネレはオンロードでの快適性も向上している。変更点は多いが、特にタンク周りが細身になったことで、前モデルでは若干股関節が開き気味になったポジションが改善、これはロングツーリングの疲労軽減にも、オフロード走行時のマシンのホールド性、コントロール性の向上にも役立つ嬉しい変更だ。
車体バランスもより良くなり、オンロードでのコーナリング性能の向上がみられる。ブロックパターンのタイヤを履かせた車体でも舗装路面にしっかりと食いつき、安定した思い通りのコーナリングを実現してくれる。
前モデルから定評のある並列2気筒のCP2エンジンは非常に扱いやすいうえに、電子スロットルになったことでライディングモードの切り替えも可能に。これはオンロードのロングツーリングからオフロードや好みに適した切り替えができるので非常に嬉しい変更点。
オンロードでのスムーズな加速や、扱いやすさを向上させ、オフロードでの鋭いレスポンスやパワーデリバリーをより良い状態で発揮できる様になったことは真に「アドベンチャーバイク」としての価値をぐっと上げたに違いない。
フロント21インチ、リア18インチのホイールサイズはガレ場や轍でも安定した走破性を見せる。前モデルでもオフロードの走破性には信頼があったが、新型ではその走破性能と安定感が格段に上がった。これは車体バランスとサスペンションの性能が非常に良くなった事に起因する。200kgオーバーの車体でギャップを越える際に車体が跳ね上げられる様なアクションが極端に減ったし、前後、左右の振れが減り、コントロールが容易になったという印象を持った。

岩や木の根が露出する林道でもしっかりとグリップを確保し、ライダーをサポートしてくれる安心感が非常にある。これこそがテネレの強みだろう。
アドベンチャーモデルの殆どが「ロングツーリングの快適性にオフロード機能を付け加えたバイク」と表現できると思うが、テネレの場合は「ダカール・ラリーなどから培ったオフロード走破性能に、ロングツーリングでの快適性を付け加えた」と言うのが相応しいだろう。ただ、この付け加えは決して付け焼き刃の物ではなく、数百キロのロングライドを難なくこなす快適性を持っているとお伝えしておきたい。
次は林道を繋ぎながらキャンプでもしてみようか。
どんなツーリングに連れて行ってくれるか楽しみだ。

