2023年シーズンから、世界選手権として運営される電動車のロードレースシリーズ「FIM エネル MotoE」ですが、そのワンメイク車両として今年度から新たに供給されるドゥカティV21Lの生産が、イタリア・ボローニャの、ボルゴ・パニガーレ工場でスタートしました!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2023年1月17日に公開されたものを一部編集し転載しています。

2月中旬までに、スペア車両含む23台が完成する予定とのこと

プレスリリースによると、ミサノ・ワールドサーキット・マルコ・シモンチェリにて、テストライダーのミケーレ・ピッロによってV21の初走行テストが行われてから1年余の時を経て、ついに2023年シーズン実戦投入用のV21の生産が2022年12月より開始されたそうです。そして、V21Lを使用する各チームの技術者たちに対する、技術講習も開始されたとのことです。

今年度のMotoEは、5月13日のフランスGPが開幕戦となりますが、プレシーズンテストはヘレスとバルセロナ(ともにスペイン)の合計2回が予定されています。2月中旬までにはMotoE参加各チームに配車される18台、そして5台のスペア車両が完成する予定です。

画像: ボルゴ・パニガーレの、MotoEレーシング部門のスタッフたち。MotoE参加各チームに配車される「V21L」は、ドゥカティMotoEレーシング部門の専門技術者によって、MotoGPバイクの製造に用いられる高度なクラフトマンシップと同じプロセス、精度、細部へのこだわりを持って組み立てられているとのことです。 www.ducati.com

ボルゴ・パニガーレの、MotoEレーシング部門のスタッフたち。MotoE参加各チームに配車される「V21L」は、ドゥカティMotoEレーシング部門の専門技術者によって、MotoGPバイクの製造に用いられる高度なクラフトマンシップと同じプロセス、精度、細部へのこだわりを持って組み立てられているとのことです。

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ドゥカティにとってV21Lプロジェクトは、レースの世界で「技術」を試し、R&Dしたものを世界中の2輪愛好家のための量産市販車開発に活用する・・・という、ICE(内燃機関)を搭載する既製のドゥカティ製品と同じフィロソフィー(哲学)で進められています。

そのためV21Lの開発はドゥカティのR&D技術者と、MotoGPなどのレース活動を担うドゥカティ・コルセの共同作業で実行されています。いわばV21Lは、ドゥカティ・コルセがMotoGP開発でノウハウを蓄積した電子制御技術やシャシー設計技術と、ドゥカティR&D部門の公道用量産車特有の設計プロセスおよびプロジェクト管理の経験が、融合して生み出された電動車といえます。

画像: ドゥカティV21Lは、ドゥカティ製スポーツバイクの創業時以来の伝統である「軽さ」にこだわった、電動ロードレーサーに仕上がっており、総重量は225kgにおさまっています。2022年シーズンまで使用された、エネルジカのエゴ・コルサとの比較で大幅に軽量化されたV21Lのパフォーマンスに期待したいです。 www.ducati.com

ドゥカティV21Lは、ドゥカティ製スポーツバイクの創業時以来の伝統である「軽さ」にこだわった、電動ロードレーサーに仕上がっており、総重量は225kgにおさまっています。2022年シーズンまで使用された、エネルジカのエゴ・コルサとの比較で大幅に軽量化されたV21Lのパフォーマンスに期待したいです。

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レースについても、生産についても、ともに強く意識して開発されているというV21Lの、量産公道版が世界へリリースされるのは、思いの外近い将来だったりするのかもしれませんね(強い願望含みの予想?)。

ドゥカティは電動とともに、e-フューエルを使ったICEの可能性も追求!?

昨年お伝えした過去記事にあるとおり、優れたエンジニアでもあるドゥカティCEOのC.ドメニカリは、2050カーボンニュートラルに向けての戦略は電動化だけでなく、あらゆる可能性を検討すべき・・・と考える人物です。

この度のV21L生産開始に関するコメントのなかでも、C.ドメニカリはMotoEプロジェクトと並行してe-フューエルを使ったICEの研究について言及しています。この先も、ICEを搭載するドゥカティ車を楽しみたいと考える人にとっては、電気だけに「集中と選択」するわけではないというドゥカティのトップの発言には、ひと安心・・・といったところでしょうか?

クラウディオ・ドメニカリ(ドゥカティCEO)
「ドゥカティMotoEマシン生産開始は当社にとって歴史的な瞬間であり、このプロジェクトを通じて、モーターサイクルの世界における将来のテクノロジーを徹底的に研究していきます。これは重要な実験分野であり、そのノウハウを蓄積するために私たちは投資をしていますが、バッテリー技術によっても愛好家たちがドゥカティに期待する重量、性能、航続距離を備えた、エキサイティングな電動ロードバイクを開発できる準備をしています。私たちは将来のドゥカティ電動ロードバイクの特徴を形作るために、そして社内の人材とスキルを育成する目的のために、この新たな冒険に乗り出すことになるのです。MotoE プロジェクトは、ドゥカティが製品面での CO2 排出量の削減に貢献するための決定的なステップであり、ICEの総CO2排出量をゼロにすることができる合成燃料 (e-フューエル) の研究と並行して進んでいます。

C.ドメニカリは、環境の持続可能性は地球の微妙なバランスを維持するために、すべての個人とすべての企業が優先事項として考慮しなければならないもの・・・とも述べています。ドゥカティは産業レベルでもこの課題に取り組んでおり、"フィニトゥラ・エ・デリベラ・エステティカ"(仕上げと美的承認)ビルディングを、2022年12月に完成させていますが、この施設は環境の持続可能性とエネルギー効率を最大限に配慮して建設されている「nZEB」(ゼロエネルギーに近いビルディング)に認定されており、業界の注目を集めています。

この最新の拠点はその名が示すとおり、ドゥカティ生産工程の最終段階となる「仕上げと美的承認」が行われる場所であり、生産ラインでは傷をつけるおそれのあるフェアリングやカバー類など外装部品を、細心の注意を貼って装着する工程と、美的に完全であるかを管理することが行われます。

画像: 「フィニチュラ・エ・デリベラ・エステティカ」ビルディングは、2022年4月着工で同年12月に完成した、総面積4,400㎡のドゥカティ最新の拠点です。屋上には170kWpの太陽光発電システムが配置され、年間200MWh以上の電力を生産することができます。また大きなガラスおよびポリカーボネートを壁面として多用するとともに、建物内に大きな中庭を作ることで自然光を最大限に活用し、電力の使用を抑制(照明類はすべてLEDランプを使用)。さらに約150㎥の地下雨水タンクによって、敷地内に降る雨水の90%を回収。そして建物内で再利用しています。 www.ducati.com

「フィニチュラ・エ・デリベラ・エステティカ」ビルディングは、2022年4月着工で同年12月に完成した、総面積4,400㎡のドゥカティ最新の拠点です。屋上には170kWpの太陽光発電システムが配置され、年間200MWh以上の電力を生産することができます。また大きなガラスおよびポリカーボネートを壁面として多用するとともに、建物内に大きな中庭を作ることで自然光を最大限に活用し、電力の使用を抑制(照明類はすべてLEDランプを使用)。さらに約150㎥の地下雨水タンクによって、敷地内に降る雨水の90%を回収。そして建物内で再利用しています。

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C.ドメニカリは、「フィニチュラ・エ・デリベラ・エステティカ」ビルディングの建設こそドゥカティの方針に基づく最新の例、と誇らしげに語っています。環境保護とその活動に伴う消費量の削減は、ドゥカティの発展と継続的な成長を考える上で基本的なテーマというだけではなく、ドゥカティが属するフォルクスワーゲングループの環境戦略にも沿った戦略でもあります。

画像: V21Lの組み立て、完成検査に励むスタッフたち。3月6、7、8日にヘレスにて、4月3、4、5日にはバルセロナのモンメロ・サーキットでそれぞれ3日間のプレシーズンテストが予定されていますが、そのときにV21Lのポテンシャルの一端が明らかになるでしょう。 www.ducati.com

V21Lの組み立て、完成検査に励むスタッフたち。3月6、7、8日にヘレスにて、4月3、4、5日にはバルセロナのモンメロ・サーキットでそれぞれ3日間のプレシーズンテストが予定されていますが、そのときにV21Lのポテンシャルの一端が明らかになるでしょう。

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なお2023年のMotoE世界選手権のカレンダーは8つのグランプリで構成され、1週末に2レース(いずれも土曜日)が開催されます。5月13日(土)の開幕戦フランスGPの後、ミサノGPまでの欧州大陸のすべてのレース、そして6月11日のムジェロ、翌週末のザクセンリンク、6月25日のアッセンで開催される予定です。

そしてサマーブレイク後、MotoE初の欧州から海を渡ってのレースとなる英国シルバーストーンのGPが8月5日に開催。再び欧州に戻ってレッドブルリンク(8月20日)、カタルーニャ(9月2日)、ミサノ(9月10日)でラスト3つのGPを戦うことになります。

ドゥカティV21Lの導入により、新時代を迎えることになる今年のMotoEを制覇するのはどのライダーなのか? MotoGPより開幕が遅いMotoEですけど、5月のおとずれを楽しみに待ちたいです。

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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