一般的にモビリティの電動化というテーマは、先進国がメインと思われていますが、じつは発展途上国が多いアフリカ大陸でも推し進められていたりします。1月1日付のウガンダ・ナイルポストの報道によると、ウガンダ政府は全バイクユーザー対象に、ICE(内燃機関)搭載車と電動バイクを無料交換する政策を実施するため、投資家たちと契約を結んだそうです。一体どのようにして「無料提供」実現の目処を立てたのか? とても気になりますね・・・。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2023年1月12日に公開されたものを一部編集し転載しています。

"将来の利益"を見返りに、投資家からの資金で「無料提供」を推し進める

2050カーボンニュートラルに向けて、今世界では多くの国の政府がEVへの補助金などの制度で、EVへの乗り換えを促しているのは周知のとおりです。その試みには多大な「公金」がかかる、というのが世の常識ともいえるでしょうが、ウガンダ政府は投資家たちの資本という「民間」のお金で、それを成し遂げられると考えたようです。

報道によると、ウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領はいくつかの投資家たちと合意し、ボダボダ(東アフリカで普及しているバイクタクシー)を含むすべてのバイクユーザーに、ICE搭載車と電動車の無料下取り交換を行うと、年末の全国向け演説で発表したそうです。

画像: ウガンダの街中を走る"ボダボダ"。ウガンダでは多くの若者たちが、ボダボダライダーになることで生計を立てています。またウガンダでは、ボダボダは人口の60%に交通手段を提供している、といわれています。ちなみにボダボダという名称は、バイクの排気音の「オノマトペ」(擬音語)から生まれたという説があります。 en.wikipedia.org

ウガンダの街中を走る"ボダボダ"。ウガンダでは多くの若者たちが、ボダボダライダーになることで生計を立てています。またウガンダでは、ボダボダは人口の60%に交通手段を提供している、といわれています。ちなみにボダボダという名称は、バイクの排気音の「オノマトペ」(擬音語)から生まれたという説があります。

en.wikipedia.org

一体どうやって、無料でICE搭載車と電動車を交換するのか? ムセベニ大統領の説明によると、投資家たちはこの事業の資金を投資することで、電動車ユーザーが利用する充電ステーションを運営するライセンスを取得することができるそうです。つまり電動車運用インフラの許可を与えることで、将来の長期的な利益により投資家たちは資金を回収できる・・・というわけです。

またムセベニ大統領は、既存のボダボダライダーたちは政府の無料下取り交換に応じることで、事業コストを50%削減できるとアピールしています。これはガソリンを消費するよりも、電気を使ったほうが燃料代を大幅に抑えることができるということで、できるだけお金を節約したいという人々の心理に訴える作戦といえるでしょう。

首都カンパラでの移動の40%!! を占め、約200万人にサービスを提供しているという調査結果が示すとおり、ウガンダ経済の重要な要素になっているボダボダの「電動化」は、投資家たちにとっては魅力的な投資対象でしょう。環境対策とインフラ政策を、民間の力を頼って「一石二鳥」的に成し遂げてしまおうというウガンダ政府のアイデアは、目の付け所が素晴らしい!! といえるのかもしれませんね。

目論見どおり計画が進めば、大幅なCO2削減も夢ではありません!?

じつはウガンダ政府は昨年・・・2022年10月から、電動車を国内で普及させるための取り組みを始めていました。この政策実行を担うモニカ・ムネセロ博士(科学技術大臣)によると、政府はボダウェルク・インターナショナル・リミテッド社や、ゼンボ社などの民間企業と提携して、電動車のボダボダをすでに提供しているそうです。

彼女は、ICE搭載車からの乗り換えによって電動車オーナーが受ける事業コストカットのメリットは、大統領の見積もりよりちょっと多い60%と説明しています。なお政府と提携しているゼンボ社は2021年3月に初の電動ボダボダを発表しましたが、同社の製品はPayGo(レント・トゥ・オウン)方式を採用しており、毎週レンタル料を払うことを2年続けることで、その電動車のオーナーになることが可能なことが、多くのボダボダユーザーたちから好評を博しています。

画像: 2017年創業のスタートアップ企業、ゼンボ社の電動ボダボダ。航続距離は70kmと短いですが、太陽エネルギーを使った市内の充電ステーションでは3〜4時間でフル充電が可能です。またバッテリー交換ステーションを使えば、2分以内で充電済みのバッテリーに積み替えることもできます。 www.zem.bo

2017年創業のスタートアップ企業、ゼンボ社の電動ボダボダ。航続距離は70kmと短いですが、太陽エネルギーを使った市内の充電ステーションでは3〜4時間でフル充電が可能です。またバッテリー交換ステーションを使えば、2分以内で充電済みのバッテリーに積み替えることもできます。

www.zem.bo
画像: ボダウェルク社のE-ボダは、インドのバジャジ・ボクサーをベースに作られた電動車です。E-ボダは2タイプが用意されており、E-ボダ・コミューターはシングルギアで最大積載量150kg、Eボダ・ワークは4速変速機を採用して最大積載量250kgというスペックです。なお両タイプとも、航続距離は最大100kmです。 bodawerk.com

ボダウェルク社のE-ボダは、インドのバジャジ・ボクサーをベースに作られた電動車です。E-ボダは2タイプが用意されており、E-ボダ・コミューターはシングルギアで最大積載量150kg、Eボダ・ワークは4速変速機を採用して最大積載量250kgというスペックです。なお両タイプとも、航続距離は最大100kmです。

bodawerk.com
画像: ボダウェルク社はE-ボダのほか、4輪のE-トゥクトゥク、船外機のE-アウトボードなどを販売していますが、それらの動力源となるのが同社製のスマートバッテリーです。最大4.6kWhの電力を保持するこのスマートバッテリーは、内蔵バッテリー管理システムを利用することで、Bluetooth経由でオン/オフ切り替えや、充電状態などの確認が可能です。 bodawerk.com

ボダウェルク社はE-ボダのほか、4輪のE-トゥクトゥク、船外機のE-アウトボードなどを販売していますが、それらの動力源となるのが同社製のスマートバッテリーです。最大4.6kWhの電力を保持するこのスマートバッテリーは、内蔵バッテリー管理システムを利用することで、Bluetooth経由でオン/オフ切り替えや、充電状態などの確認が可能です。

bodawerk.com

ウガンダでの電動車の価格は、およそ500万ウガンダ・シリング ≒17万8,890円です。 ウガンダのボダボダライダーたちにとっても、電動車はICE搭載車よりも高額な商品ですが、最も高額なパーツである「バッテリー」はリース方式となっていて、ステーションでの交換の際にいくらかのお金を支払うことで済むようになっています。その額は近年高騰しているガソリン代金に比べればかなり割安で、その事実こそが大統領やムネセロ博士の主張する、50%または60%の運用コスト削減の根拠となります。

2輪のボダボダだけでなく、ウガンダ政府はバスなどの輸送システム全体をICE駆動から電動へシフトする計画を進めています。東アフリカの輸送量の70%は、ガソリンICE搭載2輪および3輪車が担っているという調査結果がありますが、目論見どおりに電動化が進めば大幅なCO2削減も夢ではないでしょう。無論ウガンダ政府の試みは、その成功が必ずしも約束されたものではありませんが・・・万人にとって物事が良い方向に進んでいくことを期待したいです!

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

This article is a sponsored article by
''.