日本が誇る二輪車メーカー4社は世界各地で高い評価を得ている。そして日本市場では正規販売されていない機種が海外では数多く展開されてもいる。この連載では、そんな知る人ぞ知るモデルをフィーチャー。今回は農業向けバイクの世界へご案内!
文:小松信夫

日本のライダーにはなじみが薄いカテゴリーのバイクたち

国土が狭くて大陸的な大平原なんてものがない日本では、北海道のごく一部を除けば農業や畜産業は一目で見渡せる程度の狭い範囲の土地で行われるもの。しかし、世界ではアメリカとかブラジルみたいな広大な国土を持つ大陸国家をはじめとして、想像を絶する広大な土地を使って大規模な農業を行っている国は数多くあります。

画像: ヤマハAG200

ヤマハAG200

そんな国々では、広い土地での作業を効率的にするためにオートバイを使うんですね。この連載ではこれまでも農業用バイクを多く取り上げてきました。1980年代からほぼそのままの姿で、いまだに世界中で売られてるヤマハの「AG200」とか。

画像: ホンダXR190L AG

ホンダXR190L AG

ホンダがこれも世界のあちこちで売ってる「XR190L AG」とか。そういえばホンダは、日本では大人気の「CT125」をニュージーランドで「CT125ファーム」として農業用に売り込んでたけど、アレはもうやめちゃったのかな?

画像: スズキDR200SE

スズキDR200SE

画像: スズキTF125

スズキTF125

スズキだと「DR200SE」とか、あと空冷2ストエンジンの「TF125」ってのもまだ売ってるのか? とにかく、農業や畜産業で使われることを前提としたモデルは、どうやら各メーカー揃って無視することはできない存在らしい。

画像: カワサキ ストックマン 2023年モデル

カワサキ ストックマン
2023年モデル

そんな密かに熱い農業用バイクですが、その狭い世界にニューモデルが登場ですよ! そう、これが2023年モデルとしてモデルチェンジした期待の新型農業用バイク、カワサキの「ストックマン」です! ついこの間、インドネシアで発表されました。

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正味の話、上の方の各社の農業向けモデルを見ても分かるように、メーカーやベースモデルが異なっても求められるのは、まず使いやすくて大きなキャリア。

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あとパワーとか良くできたサスとかじゃなく、誰でも乗れるように扱いやすくて、いつでも使えるようにとにかく頑丈で壊れないことが重要。だからちょっと昔のオフロードモデルがベースとか、そうでなくてもシンプルな空冷エンジンを積んだモデルばっかり。エンジンガードなんかも大事。

画像: カワサキKLX230S

カワサキKLX230S

そんな中でちょっと異彩、というか違和感を感じさせる新型「ストックマン」をどこかで見たことがあるな、と思うあなたは正しい。これ、ベースモデルは日本でも普通に売ってる「KLX230S」がベース。シングルカムの空冷単気筒エンジン、スリムな車体と、ベースというか、ほぼそのまんま、ですな。特殊な装備を除けば、車体それ自体は「ストックマン」のエンジンが黒いことくらいしか大きな違いがなさそう。

画像: カワサキ ストックマン 2021年モデル

カワサキ ストックマン

2021年モデル

ちなみに2021年モデルまで存在してたカワサキの先代「ストックマン」、これ4ストの250cc空冷単気筒ですが、なんと農業用モデルなのにDOHC! なんてこった、世界最速の農業バイクなのか? でも古くても2ストは速そうだな…

画像: カワサキ スーパーシェルパ

カワサキ スーパーシェルパ

な〜んてヨタ話は置いといて、これは要するにベースモデルが、昔国内でも売ってた「スーパーシェルパ」だったってだけ。軽くてスリムでシート高低くて、DOHCだけどわりと粘り強いエンジンで、当時は「トライアラーみたい」とか言われてたヤツ。考えて見れば、確かに農業用向けではあるけどね。考えてみるとこれも30年近く前のモデルだし、ユーザーから「もっと安価で壊れても直しやすいのを出してクレ!」という声が出たのかなぁ。さすがにDOHCだと原価高そうだし、メンテナンスも大変だ。

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ということで新型「ストックマン」は「KLX230S」をベースにやっつけで開発されたか? というと、ある意味それは正解だけど、概ね間違い。前述のように、農業用として要求される装備はだいたい決まってて、それを頑丈なオフロード車に組み合わせれば大体。だから少々無骨でもカッコ悪くても、必要な装備が付いてさえいればいい。でも現代的オフロードファンバイクな「KLX230S」がベースだと、農業向け装備を組み合わせると違和感が強いから、テキトーに作った感が出ちゃうんだね。

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現物はそんなことなくて、現場の声を取り入れたと思しき、使い勝手を良くするための工夫が生きてます。ヘッドライト上のミニキャリアには、おそらくバインダーとか小物なんかを一時的に固定するため、スプリングで抑えることができるようになってたり。

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シンプルな構造だけど頑丈そうなハンドガードとか、停車時にクラッチを切りっぱなしにできるロック機構付きのクラッチレバーとか。

農業用モデルのお約束として、通常のサイドスタンドにプラスして、車体右側のサイドスタンドも「ストックマン」はしっかり装備。路面の状況とか関係なく(というか道じゃない所の方が多いんだろう)、どっち向きにも止められます、ってね。左側の本来のスタンドはフレームマウントだけど、右側は構造的に簡単に追加できるスイングアームマウントだ。まあこれらの装備は、だいたい先代「ストックマン」でも装備してるんだけどさ。

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しかし昨今の状況を見てると、農業バイクも近い将来に電動になっちゃうんだろうか。ひょっとして、新型「ストックマン」が最後のガソリンエンジン駆動の農業向けバイクになるのかもね。

文:小松信夫

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