誰も見たことがないニンジャ・カスタムでTOTを走る

「ナナハンニンジャ、GPZ750Rのカスタム」と書き出したのを見て、「違うんじゃないの?」と思う人もいるかもしれない。それもそのはずだ。まとっているのは1980年代初頭のカワサキ・ファクトリーレーサーKR1000の形を再現したカウルだし、前後ホイールは18インチ。シリンダーヘッドも隠れているから、無理もない。

でも、それはある意味でこの車両の成り立ちを象徴している。テイスト・オブ・ツクバ=TOTのZERO-1クラスに参戦する。そのベース車にGPZ750Rを選ぶ。製作者にしてライダーを担当するのはカスタムショップであるスビードテックの代表、上田さん。そしてニンジャ用パーツも含めて多くの製品を送り出すパーツメーカー、ケイファクトリーの代表、桑原さんがそれをサポートする……。

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そもそものこのGPZ750RでのTOTへの参戦経緯は以下の通り。ふたりは仲が良くてともにニンジャ好きというところから、「誰もが見たことのないニンジャ・カスタムを作ろう」と参戦テーマを掲げた。それを聞いたドレミコレクションの代表・武さんが好意で、かつてZRX1200DAEG用として試作したカワサキKRスタイルの外装(未発売品)とモーリス・マグの前後18インチホイールを提供してくれたという流れだった。

車両をよく見れば、追加されたアルミダウンチューブやステップまわりの造形、エンジン左右に装着されたビレットカバーから、ニンジャ・カスタムの雰囲気もきっちり感じ取れるはずだ。

ところでZERO-1への参戦を考えれば、ホイールはまず17インチを選ぶところだろうが、「TOTはサンデーレースだから、まずは楽しんでなんぼ。成績なんて二の次でいい。やっぱりKRルックなら18インチで」というのが、3人の総意だった。最近のTOTはコンペティティブな部分ばかりに注目が集まりがちだが、元々、誰もが楽しめるイベントレースのはず。それを思い出せたらいいねと。

’22年春SATSUKI-STAGE出走に向け、余裕を持って’21年末に製作はスタートしたはずなのに車体完成はレース前日。シェイクダウンは特別スポーツ走行の1回で、後はぶっつけ本番。当初は「(1分)5〜7秒あたりのラップで後の方を走れれば御の字」(上田さん)、「それよりパドックで話題をさらおう」(桑原さん)というくらいの気持ちはそのまま、決勝ベストタイムは1分4秒679、6位に入賞して表彰台にも乗ることができた。

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「当初セットしていたTMRφ38mmキャブレターが不調で急遽FCRφ41mmに入れ替えたらさすがに大き過ぎたり、ギヤレシオがショートだったりと見直すべき点はありますが、パッケージとして見れば良い感じ。走りに慣れて作り込めばこの18インチ仕様でも、17インチ車に遜色ない走りができるはずです。具体的にはまだ2秒ぐらい詰まるかな」とレース後に上田さんは感想を言う。短期間でここまで仕上げた実績をみれば、その言葉にも現実味があるけれど、「思い切り楽しんだから、まずはここまで」と、上田さんと桑原さん。

またレース後にこの車両をドレミコレクションブースで展示したところ、「また新しい外装キットを作るんですか? って聞かれたよ」と武さんも満足げ。間違いなく注目も集めたのだ。

サンデーレースはやっぱり楽しまなくちゃ! というノリを車体にも外装にも貫き、カスタムの自由さを思い起こさせてくれる1台。その上でしっかりと走れて成績を残す点にも、注目しておきたい。

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ステアリングステムはケイファクトリー製で、セパレートハンドルをトップブリッジ下にマウントしている。中央にアナログエンジン回転計を置き、その手前にヨシムラ・プログレスメーターを加える。マスターシリンダーは右がブレンボ・ラジアル、クラッチが同RCSだ。

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KR風の外装はドレミコレクションによる試作品で、KR風外装は残念ながら一般市販はされていない。タンク部はカバーで、内側にアルミインナータンクを備える。このインナータンクやカウルステー、フィッティング類はスピードテックがワンオフ製作している。

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シートレールやシングルシートカウルのマウントステーもスピードテックのワンオフ。こうしたレーサー製作に関わるワンオフパーツ製作は上田さんの得意とするところで、その人柄もあってか、近隣からは多くのサンデーレーサーたちがその腕を頼ってくるという。

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ヘッドライト上(この車両ではフロントゼッケン上)のダクト後ろにオイルクーラーを置くスタイルはKR1000でも採用されていたものだ。

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エンジンはGPZ900R用に販売されたポッシュ製φ74.5mmピストンとGPz750R用クランクを組み合わせた847cc仕様。カムとカムスプロケット、スプリングはWEB、クラッチはTSS製スリッパークラッチ、オイルポンプはZZR1200流用という構成だ。クランクケースはレギュレーションに合わせてGPz750R用を使っているが、ケース内は圧力損失を抑えるベンチレーションホール加工も行われている。

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サブフレームやステップ、オイルバイパスキットなど削り出し製品すべて、およびマフラーとチタンウォーターパイプはケイファクトリー製だ。

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キャブレターは当初装着しセットアップしていたTMRφ38mmが不調のため、FCRφ41mmに交換されている。エアフィルターはラムエアー。

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フロントフォークはオーリンズφ43mm。フロントブレーキまわりはブレンボラジアルキャリパー+サンスターディスクを組み合わせる。

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スイングアームもケイファクトリー製アルミで、リヤショックはYSS。ホイールはドレミコレクションが扱うモーリス・マグを履き、サイズはフロント2.75-18インチ、リヤ4.50-18インチという前後18インチ仕様。タイヤはピレリ・ファントムのスポーツコンプRSを履いた。

取材協力:スピードテック

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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