大型スポーツバイク=並列4気筒エンジン、という定番に一撃。2016年に全面新設計の並列3気筒エンジンを投入したヤマハ。MT-09として登場したニューモデルはXSR、トレーサーというバリエーションを生んで大ヒット! 2022年モデルとしてフルモデルチェンジしたMT­-09に合わせてXSR900もフルモデルチェンジ。ヤマハの考える「ヘリテイジ」の真の姿が見えてきた。
文:中村浩史/写真:折原弘之

ヤマハ「XSR900」歴史解説・インプレ(中村浩史)

画像: YAMAHA XSR900 ABS 総排気量:888cc エンジン形式:水冷4ストローク3気筒DOHC4バルブ シート高:810mm 車両重量:193kg 税込価格:121万円

YAMAHA XSR900 ABS

総排気量:888cc
エンジン形式:水冷4ストローク3気筒DOHC4バルブ
シート高:810mm
車両重量:193kg

税込価格:121万円

エンジンもフレームもそして狙いさえもまったく新しい

2014年4月、ヤマハMT-09の登場は衝撃的でした。200PSオーバーの1000ccスポーツ、最高速度300km/hオーバーもそう珍しくない時代に、ヤマハが発表した900ccのニューモデルは、出力わずか110PSの、並列3気筒エンジンを搭載したモデルでした。え? 3気筒? ヨンパツじゃなくて??

思えば1990年代あたりから、大排気量のスポーツバイクは、ほぼ4気筒エンジンだと相場は決まっていました。3気筒エンジンといえば、英国トライアンフの代名詞のようなエンジン型式で、日本の3気筒といえばカワサキトリプルがすぐに思い浮かぶけれど、4ストロークといえば、ヤマハが空冷3気筒モデルを1970年代終盤に発売していたことがあったくらい。GX750、マニアックな人気があったモデルだけれど、決してメインストリームにはならなかったモデルです。

その3気筒エンジンを搭載したMT-09、完成度が高いモデルでした。次々に発売されるニューモデル、僕らジャーナリストやベテランライダーは、姿や形、諸元を見れば、だいたいどんなバイクなのか想像がつくものなんですが、MT‐09は、その想像をはるかに超えてきました。

車両重量は188kg。これは空冷単気筒エンジンを積んだSR400の10kg増しくらいで、スズキVストローム250とほぼ同一。その軽量な車体に搭載された並列3気筒エンジンは、右手のわずかな動きにも忠実に反応する、2~3000回転から力強さを感じさせる特性。しかも回転を上げていくと、フリクションなく、シャープに良く伸びるフィーリングを持っていました。というか、むしろ力強すぎるくらいのパワーで、新しい3気筒エンジンの可能性をひしひしと感じさせるニューモデルだったのです。

845ccといえば立派なビッグバイクですが、それを感じさせない、軽量コンパクトな駿馬──それがMT-09の正体。手に負えない大馬力ではなく、速く走るものんびり走るも、コントロールしやすいちょうどよさ。エンジンも車体も、そして狙いもまったく新しい、そしてどんな他のモデルにも似ていないモデルでした。

そして、ややストリートファイター的なスタイリングのMT-09をベースに、よりトラディショナルなスタイリングを持たせたのが「スポーツヘリテイジ」XSR900。XのついたSRなのか、XSにRがついたのか──そんなモデルが登場したのです。

MT-09

画像: 初期のモデルに比べて、カウルを小型化したことで、ネイキッドモデル的立ち位置となった新型MT-09。スタイリングは最新志向、ストリートファイター的スタイリングで、独自のファン層を形作っている。価格:110万円 www.autoby.jp

初期のモデルに比べて、カウルを小型化したことで、ネイキッドモデル的立ち位置となった新型MT-09。スタイリングは最新志向、ストリートファイター的スタイリングで、独自のファン層を形作っている。価格:110万円

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TRACER9-GT

画像: MT-09をベースに高さ調整式のスクリーンつきハーフカウル、電子制御サスペンションなどを装着した、ロングツアー向きバージョンがトレーサー9 GT。エンジン/フレームともMT-09とXSR900と共通。価格:145万2000円 www.autoby.jp

MT-09をベースに高さ調整式のスクリーンつきハーフカウル、電子制御サスペンションなどを装着した、ロングツアー向きバージョンがトレーサー9 GT。エンジン/フレームともMT-09とXSR900と共通。価格:145万2000円

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3バリエーションが揃った新世代ヤマハスポーツ

XSR900の誕生を呼んだMT-09は、当のヤマハも驚くほどのヒット作となりました。4気筒絶対主義ともいえる日本のビッグバイク界にあって、並列3気筒という「異種」は、今までのどんなオートバイにも似ていないテイストで、ヤマハスポーツバイクに、いや国産スポーツバイクに新しい世界を見せてくれたのです。

ギュルギュルとうなりを上げる並列3気筒は、まず回転フィーリングが軽く、予想のナナメ上をいくパワフルさ。そのためか、3種類のパワーモードを選べるD-MODEを採用し、ただのパワフルなオートバイとしてはいませんでした。

A/B/Cモードのうち、もっともパワフルな「A」モードは、アクセルひと開けでフロントがフッと軽くなり、レスポンスもシャープ。よく言えばパワフル、悪く言えば乱暴で、普段乗りならば「B」モードが絶対おすすめ。けれど、時々ワイルドな「A」モードが恋しくなります。

車体もややモタードテイストに振っていて、やや前乗りのポジション、長めのストロークを持つソフトめのスプリングを使って、前後ピッチングを使いながら走るMT-09。けれど、もっとのんびりも走りたい、と考えたユーザーも存在したのです。

画像1: ヤマハ「XSR900」歴史解説・インプレ(中村浩史)

そして「ヘリテイジスポーツ」と位置付けられて登場したのがXSR900。ヘリテイジとは、遺産、継承物、または伝統、伝承するもの。けれど、決してレトロに振るわけではなく、目指した姿は「オーセンティック」。これまたヨコ文字だけれど、オーセンティックとは正統派、本物、本格的なものをあらわします。時期や流行に流されない、スタンダードなモデルです。

ベースとなったMT-09が、ストリートファイターやモタードのイメージを持っていたのに対し、XSR900はベーシックな、オートバイらしいスタイリング。MT-09とプラットフォームを共有しながら、ジェントルなストリートバイクでした。

エンジンは、XSRにアシスト&スリッパークラッチを追加し、走行中の加減速のつながりがスムーズになった印象でした。D-MODEにトラクションコントロールが追加されたのも、このXSRからです。

さらに車体のセッティングも専用に設定されていて、スプリングを固めに、ダンパー性能も上がって、しっとりしたハンドリングに変化していました。いわば、ヤンチャなMT-09がやや大人になった感じでしたね。これがMTとXSRの棲み分けです。

ちなみに2015年にはさらに兄弟モデルMT-09トレーサーもモデル追加され、こちらは主にアドベンチャー力、ツーリング性能を主眼において生まれたバリエーションモデルでした。

新設計の並列3気筒エンジンを使った新世代のヤマハスポーツが、これでベーシックモデルのXSR、ちょっとヤンチャなMT、そしてツーリング適性の高いトレーサーと増殖。これでヤマハの「同一プラットフォームによるモジュラーコンセプト」が完成したわけです。MT-09が発売される前、ちょっと元気のなかったヤマハビッグバイクレンジでしたが、これで一気に息を吹き返しましたね。その後、MT-09は17年に仕様変更とスタイリングに小変更を受け、2021年にフルモデルチェンジで現行モデルに。XSRは、2022年に初めてのフルモデルチェンジを受け、現行MT-09と仕様を合わせたのが今回の試乗モデルです。

MT-09が現行モデルで3代目なのに対し、XSR900はこれが2代目。それだけに、先代モデルと比べると、一足飛びに進化したように思えてしまうフルモデルチェンジ。基本は、MT-09をベースとしたストリートモデルで、先代モデルよりもはっきりとパフォーマンスを上げています。

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