Vストローム650は、輸出モデルとして2004年にデビュー。使い勝手の良いミドルツアラーとしてヨーロッパなどで人気を集め、2013年からは国内でも発売。
 
現行モデルは2017年のモデルチェンジで登場、初代から受け継がれるSV系の水冷Vツインなどの定評のある基本メカニズムと、独特なクチバシ状ノーズが目立つフロントマスク、そしてツアラーとして使いやすく快適な各部の作りを受け継ぎながら、トラクションコントロールの採用などでより快適で安全な走りを可能とした。
 
また、アクセサリーへの電源供給用の12Vソケットも用意。兄貴分の1050と同じく、ワイヤースポークホイール採用の上級版・XTもラインナップ。2022年の春に排ガス規制対応のためエンジンが小改良された。
文:濱矢文夫、アドベンチャーズ編集部/写真:柴田直行

スズキ「Vストローム650 ABS」インプレ(濱矢文夫)

画像: SUZUKI V-Strom 650 ABS 総排気量:645cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブV型2気筒 シート高:835mm 車両重量:212kg 2022年モデルの発売日:2022年4月27日 税込価格:95万7000円

SUZUKI V-Strom 650 ABS

総排気量:645cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブV型2気筒
シート高:835mm
車両重量:212kg

2022年モデルの発売日:2022年4月27日
税込価格:95万7000円

角を落とし乗りやすさを追求、馴染みやすさは別格!

すぐになじんで、以前から自分が所有しているバイクのような感覚になる。ミドルサイズと呼ばれるVストローム650ABSの魅力は、大きすぎず、小さすぎない車体サイズと、ストリートでは申し分のないパワー。とにかく「ちょうどいい」という言葉がぴったりと当てはまる。

スズキの645ccVツインエンジンの歴史は20年ちょっと前に始まった。2つのピストンがクランクを共有し、90度と一時振動を理論上ゼロにできる、バランスのとれた前後シリンダー間の角度。登場当時の日本では大型二輪免許の区分になってしまったのもあり大ヒットにならなかったけれど、欧州では人気となって多くのライダーに受け入れられた。

その後、スズキが作った水冷DOHC4バルブV型2気筒エンジンは進化を続け、目に見えて洗練されていった。現代ではSV650ABSとこのVストローム650ABSに使われている。

画像1: スズキ「Vストローム650」インプレ(2022年)ミドルアドベンチャーのロングセラーモデルを徹底解説
画像2: スズキ「Vストローム650」インプレ(2022年)ミドルアドベンチャーのロングセラーモデルを徹底解説

アドベンチャーツアラーのVストロームは、最高出力がSVより3PS低い69PS。最大トルクはSVより2Nm下げた61Nm。その発生回転数はSVより低い。ねらいは低中回転域でのトルク特性を大切にしたこと。

実際に乗って走り出してみると、低回転からはっきりと進ませる力が出てきて、スムーズなフィーリングは高回転まで途切れない。これが実に心地よくスキップするようにスピードを上げていく。気難しさやクセを乗っていて意識するシーンがない。

画像1: スズキ「Vストローム650 ABS」インプレ(濱矢文夫)

コーナーでは横置きのVツインゆえの単気筒プラスαくらいナローな車体からなるヒラヒラとした身軽さ。バイクの中心に乗っているような感覚でフットワークの軽いコーナーリング。このエンジンレイアウトの初期モデルは、スロットルを閉じたら回転数がストンと早く落ちて推進力が弱くなり落ち着かない印象を持ったけれど、それは大昔の話。

今ではまったくそういうのがない。身軽でありながら、曲げるためにリーンしていても実に安定しており怖くない。旋回の終盤にスロットルを開けていくと気持ちよい加速で立ち上がっていく。その場合も波乱はおきにくい。エンジンパワーもハンドリングもいたってフレンドリーなコントロール性。

画像2: スズキ「Vストローム650 ABS」インプレ(濱矢文夫)

これによってもたらされたのは、誰でも、どこでも使いやすくストリートを駆け抜けられる間口の広さ。

ちょっとコンビニまで、といった場面でも、走り出すまで億劫にならない。気軽に使えれば行動力は高まる。田舎道では舗装が途切れて突然ダートなる場面も多い。

フロントは19インチ、リアは17インチのキャストホイール履いて、突っ張ったところのない前後サスペンションと、打ちとけた操作性で、タイヤ的な限界になるよっぽどの泥濘でないかぎり、スイスイと通過できてしまう。初めて行くツーリング先で道幅が細くなっても気がねなく入っていける。

前後の車輪にある速度センサーとスロットルポジションセンサー、ギアポジションセンサーによってリアタイヤがスピンしているのを感知してエンジンの出力を抑制する、3段階とオフの4つの選択が可能なトラクションコントロールシステムを装備しているのも助かる。さらに極低回転でエンストしないようにしてくれるローRPMアシストもあるからUターンをするのも躊躇しない。

シートの高さは835mmと、足つき性にこだわったモデルが多い最近では〝低い〟と表現できるものではないけれど、車体に合わせてシートも前側を細くしているおかげで、とっさに足を出しやすい。バランスをくずして倒れそうな側の片足でも素早く出せたら結果は変わる。

グリップ位置が低いセパレートハンドルじゃないアップされたバーハンドルだから、力を入れると車体を保持しやすいのも味方だ。

画像3: スズキ「Vストローム650 ABS」インプレ(濱矢文夫)

これにABSを加えたもの以外に高度な制御技術は使われていない。プリミティブだけど、乗っていて困らない。事が起こってから対処するのではなく、最初からミスをおこしにくい親和性の高い仕様。バイク本来の基本パフォーマンスがいい。

「Vストローム650って乗るとなんだか良いよね」という感想になるのは多くの項目でバランスがとれているからだ。何かが強すぎても、どこかが弱すぎてもいけない。Vストローム650ABSは足りないと思わせず、だけど持て余さないジャストなアドベンチャー。

問題は同サイズながらワイヤースポークホイールになって、ナックルガード、エンジンアンダーカウルが付いたVストローム650XTもあり、価格差がわずか4万4000円で悩ましいところ。

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