40年間そのまま、から現代17インチコンプリートへ

最新の17インチ・ハイグリップタイヤを履いて楽しめるようにする。そんなコンプリートカスタムとして作られるサンクチュアリーのRCM。この車両はそのひとつの節目、キリ番となるRCM-500。大胆に現代の車両のようなシングルシートを装着した状態や塗装からは、今まで見てきたRCM各車とは少し趣が異なる感じがある。

「この車両は、アメリカのDiazさんからのオーダーだったんです。彼はRCMのファンだということでした。日本にも仕事で来る機会が多く、当社が東京・江戸川区にあった当時(’00年夏〜’15年春)から、来日のたびに来店していたんです。今では多くのバイクやスーパーカーなどを所有されているのですが、そこにRCMを加えたいとなったのが、3年少し前、2018年の話です。ベース車両は、彼がまだ若くてお金もない頃に、好きだからってアルバイトで資金を作って買ったというカタナ。1100でなく、1000Sでした。車両は今までずっと持っていて、ガレージの隅にある、と始まったんです」

サンクチュアリー・中村さんの言う製作のきっかけ。ここは他のカタナオーナー、RCMオーナーと変わらない。

車両はこの話の直後にACサンクチュアリーの北米グループ企業、RCM USAに入庫、分解される。必要なパートを日本のサンクチュアリー本店に送り、2019年秋に作業が始まった。同店で扱いの多いカワサキZ系同様、カタナのRCMにも作例はあり、手法は確立しているからその手順を踏んでいくはずだが、少し違ったと中村さん。

画像1: 40年間そのまま、から現代17インチコンプリートへ

「国内の皆さんでももちろんそうなんですけど、Diazさんはご自身の理想の車両の姿を熱く持っていらして、そこに合わせていくのが結構大変でした。日本の場合は、元々の車両の形はわりと尊重されます。Z1-Rにシングルシートカウルを作って付けようというような場合も、Z1-Rの形は極力そのままでというように。それがこの車両では、現代的な形状のシングルシートで、その形も合うのかどうか車両全体でバランスも見直しましたし、同時にそこに機能も持たせないといけない。シートレールから作り直しましたし、シートストライカーを作ってシートがキーで開閉できて、開けたらバッテリーにアクセスできるとか、収納機能もあるとかも満たしていく。そんなワンオフ的な、いわゆるかつてのカスタム的な作業が多かったのが印象的です」

メインフレームもスイングアームピボットの下げ加工を行って、リヤの車高を維持しながらもただ上げたような乗りにくさを出さないようにして、エンジンはダメになりかけていたクランクシャフトなどにGSX1100S用を用意して確認、加工した上で換装する。

Diazさんは日本に来るごとに進行具合を確認し、自分のイメージと車両が合うことに納得しつつ、追加オーダーも行う。左右出しのマフラーやステアリングダンパーは仕上げ段階に入ってからの追加だった。

画像2: 40年間そのまま、から現代17インチコンプリートへ

「絵を描いて突き合わせてみたり、いろいろ駆使してご本人の考えを形にしました。それだけでなく、先ほど言ったように機能性も、耐久性も持たせたりもしなければいけないですから、作る大変さを久々に味わいました」とも中村さん。

なお、3年の月日をかけて完成したRCM-500は、ハードの仕様のみならず、カーボン×メタル感を前面に出した塗装も合わせて、十分以上に個性的。この後クローズドコースでの走行テストを行って、2022年3月の大阪、東京の両モーターサイクルショー・EKチェーンブースに展示されたから、見た人も多いだろう。好きなものへの思いは洋の東西で変わらない。その上で、40年の時を超えて現代的に仕立てられたカタナRCMの作り込みと仕上がりにも納得がいく。そんな1台となったようだ。

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スクリーンはオオノスピード製スモークでヘッドライトは5灯LED、ウインカーもLED。カーボンモノコックボディのミラーはマジカルレーシングのNK-1ミラー。クラッチホルダーはコーケンでフロントマスターはブレンボRCM、ともにレバーはZETA RCMコンセプトに換装。

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カタナの特徴となるワンボディメーターをSTACKダッシュシステム(エンジン回転計、速度などを表示する液晶部を備える)で置き換え、メーターパネルをカーボン&アルミでワンオフ。油温計やモトガジェット製警告灯等で構成したコクピット。セパレートのハンドルはデイトナ、ステムはスカルプチャーφ43ステムキットTYPE3でオフセットは50→37mmに。オーリンズステアリングダンパーも追加した。

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燃料タンクはアルミ製でサンクチュアリーでヘアライン加工を施した上で、純正サイドカバーともYFデザインでメタル&カーボン塗装を施している。

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現代調のシートカウルは、クレバーウルフ製YZF-R1用がベース。燃料タンクに合うように、また内部を小物入れに使えるように加工。そのベースとなるシートレールも、ショックマウント以降をカットした後にアルミで精度良くワンオフ。シートオープナーも製作した。

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元々、ボアのみが小さい998ccのエンジンを積むGSX1000Sだったこの車両。クランクはGSX1100S用を改めて用意し曲がりを修正した後に組み、ピストンはヴォスナーφ74mm鍛造にWPC処理リングを組み合わせて1135ccとした。カムはヨシムラST-1で点火はウオタニSPIIだ。

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キャブレターはTMR-MJNφ40mmのデュアルスタックファンネル仕様。ファンネルはショート側にレッド、ロング側にブラックを選択した。

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フロントフォークはオーリンズRWU(φ[37→]43mm)で、フロントブレーキはブレンボGP4 RXキャリパーにRCMコンセプトφ320mmディスクと、大幅にアップデートされた。ブレーキラインはアレーグリ・ショルトシステムで、車両ごとに最適なライン/長さで組まれる。

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リヤブレーキはブレンボCNCキャリパー+サンスターディスク。排気系はナイトロレーシング・チタンだがワンオフの左右出し仕様だ。

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スイングアームはスカルプチャーワイドスイングアームに下側スタビライザーやレーシングスタンドフックを追加。前後ホイールはアルミ鍛造のO・ZレーシングGASS RS-Aで、現代標準と言える3.50-17/5.50-17(GSX1100Sノーマルは1.85-19/2.50-17)サイズを履く。

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フレームはオリジナル補強、ドライブチェーンのオフセット軌道対応やワイドレイダウン加工。またピボットの7mm下げ加工等も行われている。

取材協力:ACサンクチュアリー(SANCTUARY本店)

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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