ホンダ「CB400スーパーフォア」が長年牽引してきたカテゴリーである400ネイキッド。1980年代の終わりから1990年代終盤にかけて、レプリカブームと入れ替わるように各メーカーから様々なモデルが登場、大いに盛り上がった。CB400SF/SBが生産終了が発表された2022年、いままさにひとつの転換期を迎えている。ベテランテスター・太田安治が90年代の喧騒を振り返る。

魅力的なバイクが多かった幸せな時代(文:太田安治)

「排気量400cc以下」で区分する免許制度は日本独自のもので、1975年に現在の普通二輪免許に相当する「中型限定」が設けられた。大型車に乗るためには限定解除試験に合格する必要があったが、これが合格率ひとけたの超難関。結果的に中型限定免許の上限となる400cc車に人気が集中し、1996年の免許制度改定で大型二輪免許の取得が簡単になるまでの約20年間、国内市場では「ヨンヒャク」が圧倒的な存在であり続けた。

もう一つの流れがレーサーレプリカブーム。1980年代初めから4スト400cc、2スト250cc車のスポーツ性能が急上昇し、市販車によるレースも大盛況。メーカーは新型車を矢継ぎ早に投入したが、サーキットでの速さと引き換えに、市街地では扱いにくくなり、不満を訴えるライダーは少なくなかった。

そこに登場したのがカワサキ・ゼファー。レーサーレプリカに比べれば明らかに非力だが、空冷4気筒エンジンの優しい反応と疲れないポジション、端正なデザインで大ヒット。この成功にホンダはCB、ヤマハはXJR、スズキはGSXインパルスで対抗し、カウルを装備しないルックスから「NAKED=ネイキッド(裸)」と呼ばれる新たなジャンルが確立された。

速さ優先のレプリカとは異なり、ネイキッドの開発ではどのメーカーも乗りやすさとスポーツ性能のバランスに苦慮したと思う。当時全車種に試乗したが、ホンダとカワサキは市街地での乗りやすさ、ヤマハとスズキはスポーツ性を重視していた印象だ。

1990年代の400ネイキッドに今乗っても古臭さを感じないのは、1980年代からのバイクブームで開発・生産にコストをかけられたという側面もあると思う。免許制度が生んだ日本独自のブームとはいえ、豊富な車種の中から好みの一台を選べる幸せな時代だったことは確かだ。

1990年代のネイキッドブームで生まれたモデルたち

カワサキ「ゼファー」(1989年)

画像: 当時税別価格:52万9000円

当時税別価格:52万9000円

400ネイキッドブームの火付け役。GPZ400FⅡの空冷エンジンを、往年のZを思わせるフォルムの車体と組み合わせ大ヒット。96年には「ゼファーχ」も登場。


カワサキ「ZRX」(1994年)

画像: 当時税別価格:59万9000円

当時税別価格:59万9000円

パフォーマンスを追求したスポーツネイキッドのはしり。Z1000R「ローソンレプリカ」を思わせる角形フォルムにビキニカウルで人気を博した。


ヤマハ「XJR400」(1993年)

画像: 当時税別価格:57万9000円

当時税別価格:57万9000円

空冷DOHC4バルブユニットをスポーティな意匠のボディと組み合わせ、CB400としのぎを削った最大のライバル。14年に渡るロングセラーとなった。


スズキ「バンディット400/V」(1995年)

画像: 当時税別価格:59万9000円/63万9000円(V)

当時税別価格:59万9000円/63万9000円(V)

初代は1989年登場。GSX-R系の水冷ユニットをトラスフレームに組み合わせ、可変バルブタイミング機構搭載の「V」も登場。写真は1995年の2代目。


スズキ「GSX400 インパルス」(1994年)

画像: 当時税別価格:55万9000円

当時税別価格:55万9000円

バンディットの後を受けて登場した、王道スタイルのネイキッド。エンジン、フレームは400カタナがベースで、ビキニカウル付きのタイプSも登場。


スズキ「イナズマ」(1997年)

画像: 当時税込価格:59万9000円

当時税込価格:59万9000円

クラス唯一の油冷ネイキッド。GSF750のエンジンをスケールダウンしたユニットを、兄貴分の750・1200とほぼ同サイズの迫力あるボディに搭載。

文:太田安治、オートバイ編集部

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