現代スポーツモデルにも近い構成と手の入れやすさを合わせ持つ“ニンジャ”GPZ900R。このモデルを専門とし、認定中古車両やコンプリート車両の販売も行うスペックエンジニアリング。代表の瀬尾さんは、車両整備の実績から要所を教えてくれる。
※本企画はHeritage&Legends 2020年11月号に掲載された記事を再編集したものです。

正しい状態を知りそれに近い状態がいい

「前提として、ニンジャは古いモデルであることを意識する。最終、つまり最新型となるA16でも2003年、つまり19年は経ってます。それだけ経過した機械ですから劣化もしますし、消耗もする。その上でちゃんとした状態、正しい状態を知っておくと、車両選びがやりやすくなると思います」と、スペックエンジニアリングの瀬尾さんは言う。

画像: ▲1991年(A8)から国内販売もされてきたGPZ900Rは2003年のA16が最終モデル、つまりニンジャとしての最新モデル。街中でも見かけることなどからまだ新しめ……と思うこともあるが、じつは19年経っている。そこを意識した上で走行距離の多少も考えたいと瀬尾さん。

▲1991年(A8)から国内販売もされてきたGPZ900Rは2003年のA16が最終モデル、つまりニンジャとしての最新モデル。街中でも見かけることなどからまだ新しめ……と思うこともあるが、じつは19年経っている。そこを意識した上で走行距離の多少も考えたいと瀬尾さん。

中古車両の不具合はその“正しい状態でない”ことに起因するからだ。

「分かりやすいところから言いますと、カスタムされていろんなパーツが付いている。何だかお得な感じで見た目もいいでしょうけど、危険です。好きにいじられて、基本のメンテナンスよりもいじる方優先という可能性大。それで売りたくなって『これだけ付いてて××円、お得!』というパターン。これはかえってちゃんとした状態にする手間がかかり、ユーザーは苦労します。

ひどい場合は元に戻せないこともあるんです。ボルトオンのシートレールが溶接されて無理矢理テールアップしているとか、フレームが削られているとか。前者は、バイクの姿勢を見れば怪しいことが分かるはずです。明らかに車高が低いとか、よく分からないけどテールアップしている、カウルが大きく上がったり下がったりしているような車両は避けましょう。それも含めて、見た目が地味なもの、明らかにカスタムされていないものを選ぶといいでしょう。あまり手が入っていない方が後からの費用がかからない傾向です」

内容の分からないカスタム車を避けるのは他機種でも聞かれたが、姿勢での判断が出来るのはニンジャ特有のポイント。瀬尾さんはこうした大きいところに加えて、細かい箇所も指摘してくれる。

画像: ▲GPZ900Rノーマル(A16)の左横姿。

▲GPZ900Rノーマル(A16)の左横姿。

「フレームのアッパーカウルステー基部も見た方がいいでしょう。ここは割れたり折れたりすることが多いので対策するのですが、素人作業であらぬ位置に溶接されていることがあります。他部分に干渉したり、元に戻せなかったりしますから注意です。こうした、元に戻せないものを手にしてしまって『仕方がないからこのまま乗って……』という方も多いようです。ですから、カスタム車や見た目のおかしいものは避けましょう」

よく動いていた車両を選ぶのも好結果に

外観から見える“正しい状態”は分かった。その上で見えない部分にも盲点があると、瀬尾さん。「よく言われる走行距離ですが、少なければいいというものでもないんです。『あまり乗ってなくて程度がいいかも』と思いがちですが、考えてみてください。ニンジャは最初にお話したように最終A16で19年前の車両。なのに数千kmしか走ってないとしたら、そのバイクは動かないか、動かしてない。そのことで起こる弊害があります。

タンクのサビ。クラッチマスターが詰まりで動かない、走り出したらフロントフォークからオイルが漏れるというのはまさにそれです。ハーネスも電気を通していないと白サビが出たり抵抗が増えたり、接触不良が起こったりします。ゴム類も当然、経年で固くなります。固くなったらゴムの役割はしません。動いてないものではなおさらです。

画像: ▲動かしていない車両ではフォークシールやタイヤなどゴムの硬化や油脂切れが進みやすい点が要注意だ。

▲動かしていない車両ではフォークシールやタイヤなどゴムの硬化や油脂切れが進みやすい点が要注意だ。

そんな、距離が少なく乗らない期間が長いものは、動かして初めて出てくるトラブルも多いんです。しかも、その症状の元を何とかしたと思っても、安定するまでに半年や1年かかって、また?! が続くようにたちが悪い。当社でも1990年式、2万kmでワンオーナー、ちょいちょい乗っていたという車両を整備し、100kmのテスト走行で不具合なしを確認したものが、納車後にセルが回らないというものがありました。電気です。

動いていた車両でもこういうことが起こりますから、本当によく見ておきたいです。先ほどのタンクのサビはキャブをオーバーホールしても不安定ということにつながりますし、キャブインナーパーツの摩耗は不調を招きます。冷却系のゴム、ウォーターポンプのメカニカルシールがダメになって水が回らず、その場に滞留して腐食したゴミが、動かし出した時に回り出して思わぬトラブルになる。

機械だから放ってて大丈夫ではなく、機械だからこそ使わないと動かなくなるんです。その意味で、走行距離が少ないのがOKという先入観は改めた方がいいです」

スペックではこうした多くのニンジャでのトラブルを見つけ、解決してきた経験を“認定中古車両”や“コンプリート車両”に反映している。もし車両選びに悩むなら、問い合わせすることを勧めておこう。

過去のトラブル例から見るGPZ900Rの注目ポイント

画像1: 過去のトラブル例から見るGPZ900Rの注目ポイント

ロングラン途中で急に雨に降られて冷やされる、料金所で止まってエンジン熱が上がった後に冷える。すると吹けない、止まる……。これはタンク内圧の急変にタンクキャップ下のエアバルブ(写真中央の小さなパーツ)が劣化/固着して対応できずに燃料が十分行かないため。なかなか見つからない不具合だが、スペックではエエアバルブ アバルブを新作して対処している。

画像2: 過去のトラブル例から見るGPZ900Rの注目ポイント

冷却水路は中が見えない分、やっかい。サーモスタットが入るケースも腐食の激しい箇所で、右側はOリングが固まり崩れてダメになった例(左はスペックによるリビルド品)だ。

画像3: 過去のトラブル例から見るGPZ900Rの注目ポイント

左右ともノーマルCVK34キャブ用のメインジェット(MJ)とジェットニードル(JN)で、同じ番手。右は中古品で、左の新品よりも深くJNがよりニードルのテーパー径が太い部分まで入っている、つまりMJの穴が大径化している。同じものなのに使用にともない隙間が変わり、余分に燃料が吸い出されて燃費が悪化していると分かる。気筒間でも均等でないとエンジン不調につながる。

画像4: 過去のトラブル例から見るGPZ900Rの注目ポイント
画像5: 過去のトラブル例から見るGPZ900Rの注目ポイント

サーモスタット部につながる冷却系配管も劣化が多い。写真はその例で、外観も冷却水(LLC/ロングライフクーラント)で浸食されている。このような状態を見たら内部も浸食と錆びが進んでいると考えたい。

画像6: 過去のトラブル例から見るGPZ900Rの注目ポイント

クランクケースカバー類のように塗装剥がれや劣化の大きな箇所がある(左側)。こうなっているとオイル漏れなどの症状も分かりにくくなる。手に入れたらリフレッシュしたい部分だ。

限りなく新車に近い状態を目指すコンプリート

GPZ900R 3Series

画像: GPZ900R 3Series

スペックエンジニアリングでは、今は新車販売されていないGPZ900Rをいつまでも楽しくそして安心して乗れるようにと、900㏄(1シリーズ)、1000㏄(2シリーズ)、1100㏄(3シリーズ)と3種類のエンジンをベースに新たに車両を構築するコンプリート車。フレームやエンジンなどすべてのパーツを塗装及びリビルドし限りなく新車時の状態に近くする。220万円~、問い合わせを。

GPZ900R 1Series

画像: GPZ900R 1Series

GPZ900Rが本来持つ最大の長所=素直でオールラウンドな資質を極力引き出し、どこまでもライダーの意思に忠実に応えることに集中した「1シリーズ」。2シリーズ、3シリーズは排気量拡大に合わせた足まわり構築もされる。中古車両を元にスペックでの基準に基づいて再構築した「認定中古車両」も用意し、販売する。

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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