1990年代、HRC=ホンダ・レーシング時代のチームメイトだった伊藤真一さんと辻本聡さん。生粋のオンロード派で、ロードレースのエキスパートのおふたりが、2台の人気オフロード車の実力をチェックしました!
談:伊藤真一、辻本 聡/写真:松川 忍、赤松 孝/まとめ:宮﨑健太郎
画像1: 伊藤真一×辻本聡 ロードレース界のレジェンドふたりがオフロードバイク ホンダCRF250L・CRF250ラリーに乗って語り合う!【ロングラン研究所】

伊藤真一(いとうしんいち)写真左
1966年、宮城県生まれ。1988年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。現在は監督としてAstemo Honda Dream SI Racingを率いてJSB1000、ST1000クラスなどに参戦中。

辻本 聡(つじもと さとし)写真右
1960年、大阪生まれ。ヨシムラに移籍した1985年、全日本ロードレース選手権TT-F1シリーズチャンピオンを獲得。翌年も活躍し2連覇を達成。1987年にはアメリカに渡り、デイトナ200マイルレースで2位を獲得。1992年からはホンダに移籍。1995年の鈴鹿八耐にはHRCから参戦し、伊藤真一と組んで2位を獲得。現在は、神奈川県の三浦半島・野比海岸で「Cafe PILOTA MOTO」を営んでもいる。

伊藤さん(写真中央)と辻本さん(同左)がペアを組んで鈴鹿8耐に初参戦したのは1992年(決勝リタイア)。1995年には見事2位表彰台を獲得! そして1996年は11位でした。 写真:赤松 孝

乗り比べた2機種は、ホンダ「CRF250L〈s〉」「CRF250ラリー〈s〉」

Honda CRF250L〈s〉
総排気量:249cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ単気筒
シート高:880mm
車両重量:140kg
税込価格:59万9500円

画像: Honda CRF250 RALLY〈s〉 総排気量:249cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ単気筒 シート高:885mm 車両重量:152kg 税込価格:74万1400円

Honda CRF250 RALLY〈s〉
総排気量:249cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ単気筒
シート高:885mm
車両重量:152kg
税込価格:74万1400円

ホンダ「CRF250L」「CRF250ラリー」インプレ対談

オンロード専科のおふたりは、あまりオフには縁なし?

伊藤真一(以下伊藤):辻本さんのお店はいつか行きたいとずっと思っていたのですけど、ようやく今回叶いました。

辻本 聡(以下辻本):いやぁ、今回一緒に走れて嬉しいよ。俺、真ちゃん大好きだから(笑)。今日はここまで自走で来たの?

伊藤:CRF250ラリーの高速道路の走りのチェックを兼ねて、東京・港区新橋のオートバイ編集部から自走しました。

辻本:メディアの撮影というと移動はバイクを車に積んで、撮影のときだけ試乗するというのが多いけど、ちゃんと「ロングラン」しているんだね。

画像1: ホンダ「CRF250L」「CRF250ラリー」インプレ対談

伊藤:今回はCRF250Lとラリーのオフ系2機種ですが、辻本さんは普段オフ車って乗ったりします?

辻本:いや、乗らないね。現役レーサーのときはトレーニングでモトクロスやったりしたけど、車両や装具が汚れてそれ掃除するのが嫌でね(苦笑)。若いころは、友達から借りたスズキハスラー400乗ったりしたなぁ…。2ストの空冷単気筒で、ケッチンすごいからキック始動が恐怖だった(笑)。

伊藤:自分もホンダFTR223は持ってましたが、オフ車はあまり所有していませんでした。18歳くらいのとき、所属してたクルーズレーシングの社長に借りて乗っていたのはホンダXL250S…フロント23インチのアレで、急に右折してきた車に遮られ、危ない目に遭ったりした経験はあります(苦笑)。

辻本:確かに、昔のオフ車はブレーキ利かなかったから、危ないときは止まるより逃げ場探していたかなぁ…。あとオフ車は、風をモロに受けて寒いし。カウル付いているオンロード車の方が、暖かくて良かった。だからオフ車乗るの、ずいぶん久しぶりになるね。

辻本:俺のイメージでは250ccのオフ車って、タン、タン、ターン! って走る、スポーツするバイクって感じ。でも250Lは6速40~50km/hで、一般道のツーリング用途でトコトコ走ることもできるね。

伊藤:ただレブル250とかCB250Rなどのオンロードのホンダ単気筒に比べると、新型CRFはモロ単気筒! という感じ。インジェクションの噴き方とかの制御も…意識してそういう味付けにしていると思いますが、昔のホンダ空冷単気筒みたいなフィーリングを思い出しました。現行のレブル250は振動ないですけど、CRFはしっかり感じられる。

画像2: ホンダ「CRF250L」「CRF250ラリー」インプレ対談

辻本:エンジンが250ccであることを忘れるくらいよく走る。250ってこんなに走ったっけ? というくらい。エンジンフィーリングにもパンチがあって、高回転域まで回すと気持ちいいね。

伊藤:レブルとかと、カムプロフィールがまったく違うのでしょうね。高回転域の吹けが良くて、レブリミットに入るまで元気良い。トルクが落ちなくて、レブってるところで吹け切って、そのまま走っちゃう感じ。

辻本:高速道路の巡航はどう? 昔のイメージだと4ストのオフ車は、高速で100km/h超えると辛いと言うか、嫌になるような感じだったけど?

伊藤:120km/hくらいまで、すぐに加速しちゃう感じですよ。100km/hで、ちょうど6速6000回転でした。初期型からCRFは高速巡航性能良いと評判でしたが、新型も直進安定性など全然問題なくて良いですね。でも、やっぱり快適なのは100km/hまでですね。それを超えると振動が増えてきて、辻本さんが言うみたいに無理している感じが出てきます。CRFラリーの場合、高速道路を80~90km/hで走っている限りは、スクリーンの効果もあって、どこまでも走って行ける気がするくらい快適です。あとラリーに付いているナックルガードは、冬場は手が寒くないからいいですね。

辻本:確かに! Lの方はナックルガード付いていないから、一般道走っていても手に風がバッチリ当たってすごく寒かった! 純正アクセサリーが別売であるみたいだけど。

画像3: ホンダ「CRF250L」「CRF250ラリー」インプレ対談

伊藤:あと高速で横浜あたりを走っていたとき、乗っている位置が高いので、景色が楽しめて良いなぁ、と思いました。あのあたり、こんなに工場が多いって、今まで何度も通った道なのに気付かなかったです。

辻本:小さな子供が、いきなり180cmの大人になったような、新鮮な眺めみたいなものかな。あとアイポイントが高くて、見通しが良いのは安全にもつながるよね。

伊藤:そうそう。先で道路工事とかやっていても、乗用車に乗っているときよりも早く気付ける。

辻本:まぁその代わり、シートが高いから足着き性は犠牲になるよね。特にCRF250ラリーの方は、地面に着くのがつま先になる。

伊藤:新型になってから、従来のローダウン…タイプLDがスタンダードになり、車高の高いバージョンが<S>になりましたが、やっぱりスタイリング的には<S>を選びたくなりますね。見た目は大事ですから(笑)。

画像4: ホンダ「CRF250L」「CRF250ラリー」インプレ対談

ダートを走ってこそ、新型CRFはその価値を発揮する?

辻本:2019年かな? ダカールラリーストの三橋(淳)さんが、日本で販売されるアフリカツインはLDが標準という「ローダウン問題」を提起したことが話題になったけど、あれ、わかりますよ。そもそも開発コンセプトが、サスペンションストロークが長い<S>に合わせているのに、セールスを考慮してローダウンを作る…。足着き性を良くしたバイクを、そこまでして乗るものなのか…と。でも、日常での使い勝手とか、一般的なツーリングでの扱いやすさとか考えると、シート高と足着き性はね…。体格が小柄な人は、シートの高いバイクにはなかなか手が出ない。

伊藤:アフリカツインなどの大型アドベンチャーみたいに、乗っていて大きなバイクに乗っている…という感じは、CRF250Lにもラリーにもないですけどね。

辻本:まぁ足着き性に問題がない人は、<S>を選んで欲しいかな。停車するときにブレーキングで上手くサスペンションを沈めれば、不安なく足を着けることができるわけだし…。細かいことを言うと、60km/hくらいで結構タイヤのロードノイズが煩いね。高めのブロックタイヤだからかな?

伊藤:新型は従来より「オフ」を強く意識しているのでしょうね。街乗りとか舗装路での評価より、オフを走ってみてどうか? と意識して、オフに特化させた印象です。新型は、モトクロスコース走らせても面白そう、と思いましたもん。

辻本:そうね、モトクロスコース走らせたら面白いかも。回したくなるエンジン特性だからね。

画像5: ホンダ「CRF250L」「CRF250ラリー」インプレ対談

伊藤:オフロード走行を撮影しているとき、薮っぽいところをゆっくり走っていて、極低速でストールしそうになったのですが、低回転域使ってゆっくり走るよりは、広いところをスロットル開けて走る方が楽しいですね。でも、オフロードで多用する半クラッチ操作とかは、すごくやりやすくて感心しました。あと、4、5、6速がすごくクロスしてますね。

辻本:昔のトレールは、1速、離れて2~5速がクロス気味で、6速が高速巡航用のオーバードライブって感じだったけど、CRFは街中でも6速が普通に使える。

伊藤:新型はやっぱり、オフロードを走らせると光る感じですよね。舗装路を走っているときは、サスペンションも踏ん張りが効かなくて、特に高速道路ではブレーキの制動力も弱く感じてしまうけど、オフロードではサスペンションもブレーキも不満がないです。ブレーキのタッチは、オフロードでは指一本でコントロールする感じで、フィーリング良かったですね。

辻本:3~6速のミッションがクロスしているから、舗装路の峠道などでも楽しめるかもね。

伊藤:ただ前までの型に比べると、新型では舗装路の峠で速く走れる気がしない。というか…。

辻本:オフロードバイクの、レーサーレプリカみたいなものなのかな? オフロードの走り優先で。

伊藤:お気楽なイージーバイク、ではないですね。ロードでいう、スーパースポーツみたいなものですね。オンロードのワインディングでも、サスペンションの反力使うと楽しく速く走れますが、オフロードを本格的に走った方が、このサスペンションはもっと高評価になるでしょう。街中の使用では、ピッチングが強すぎるとか、そういう話になってしまう。まずオフロードで評価すべきバイクなんですね。林道を走るのが、CRFを一番楽しめる使い方でしょう。

辻本:今、林道走るバイクだとヤマハのセローが人気だけど、俺の好みではCRFで林道行った方が楽しいと思う。セローもいいバイクだけど、多くの人は伝聞で感化されて、乗ったことない人にまでセローが神格化されちゃっている感じがする(苦笑)。

伊藤:Lとラリーのフロントブレーキは、ディスク径の小さいLの方が最初のタッチが良いですね。辻本さんはLとラリー、どっちか選べと言われたら、どちらを選びますか? 

辻本:よほどオフ好きじゃないと、Lは選ばないのかな?

画像6: ホンダ「CRF250L」「CRF250ラリー」インプレ対談

「オフ派はL、ツーリング派はラリー」が一応の結論!?

辻本:オンロード派としては、タイヤをチューブレスにして欲しいかな。街中やツーリング中に、チューブ引っ張り出してパンク修理するとなると、1日が台無しになるから(苦笑)。

伊藤:オフ好きの人の中にはパンクすると、ニコニコして工具やチューブ出して、パンク修理する人もいるみたいですけどね(笑)。

辻本:まぁ舗装路メインのツーリング派はラリーで、林道メインの人はLを選ぶって感じなのかな? 俺は基本的にLもラリーも、完成度についてはどっちも文句ないけど、色だけは注文つけたいね。赤だけというのはちょっと…。オジサンには派手すぎ。白とかも出すべきだね。

伊藤:でもホンダは「赤」から離れられないですよね。特にオフロードは。

画像7: ホンダ「CRF250L」「CRF250ラリー」インプレ対談

辻本:まぁスズキも黄色、ヤマハは青、カワサキは緑から離れられないよね(笑)。Lとラリーどちらか…というと、あとは価格かな? Lが59万円台、ラリーが74万円台。旧型からの値上がり率だと、ラリーの方が少ないんだね…。初代のLは50万円切っていたけど、現行のLも高くなったとはいえ未だ安い。50万円台というと、ひと昔前の250ccの価格だもんね。

伊藤:ラリーは250ccだけど、リッターバイクに負けないくらい、見栄えにこだわって作られていますね。それでいて維持費は自動二輪より安くて、ガタイ良くてカッコいい。でも、頑張ってもらってETCとグリップヒーターを標準装備にしてくれたら嬉しいですね。欲張りすぎか(笑)。

辻本:14万円くらい価格差あると、どちら選ぶか真剣に考えると悩んじゃうね。それで、自動二輪クラスのホンダGB350が55万円か…。ところで真ちゃん、GB350ってどうなの?

伊藤:あれはですね…この調子だと、話が終わらないですよ。この続きは次回?にしましょう(笑)。

辻本さんのお店「Cafe PILOTAMOTO」(神奈川県・三浦半島野比海岸)

画像3: 伊藤真一×辻本聡 ロードレース界のレジェンドふたりがオフロードバイク ホンダCRF250L・CRF250ラリーに乗って語り合う!【ロングラン研究所】

三浦半島・野比海岸にある辻本さんのお店「Cafe PILOTAMOTO」。営業時間は11~17時。不定休なので、来店前に営業日をツイッター(@PilotaMoto)で確認されたし!

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