日本が誇る二輪車メーカー4社は世界各地で高い評価を得ている。そして日本市場では正規販売されていない機種が海外では数多く展開されてもいる。この連載では、そんな知る人ぞ知るモデルをフィーチャー。今回はみなさんご存じCT125・ハンターカブの海外版のお話。
文:小松信夫

日本では品薄で納車待ちの人気モデルなんですが…

ホンダのCT125・ハンターカブは2020年6月の発売から、大変な人気が続いてますね〜。スタイリングは昔のCT110そのままのレトロで無骨な感じが今でも新鮮だし、乗ってみると安定感があって力強くて、カブの使いやすさはそのままと、人気になるのが良くわかる出来の良さ。スーパーカブ110に乗ってますけど、CT125に乗るたびにちょっと欲しくなっちゃう。

画像1: ホンダ CT125・ハンターカブ(国内仕様)

ホンダ CT125・ハンターカブ(国内仕様)

で、この連載で何でCT125・ハンターカブの話なんだ? と思われそうなもんですが、CT125って海外でも売ってるんですよ。

画像: ホンダ トレール125(アメリカ仕様)

ホンダ トレール125(アメリカ仕様)

生産国のタイでは「CT125」として。あとアメリカでも「トレール125」に車名を変えて売ってる。どちらもヒートガードとか微妙に違いはあるけど、大筋で日本仕様の「CT125・ハンターカブ」と同じものと言っていいでしょう。そして、「遊べるカブ」というレジャー路線で扱われてるのも日本と同じですがね。

画像1: 日本では品薄で納車待ちの人気モデルなんですが…

だがしかし世界で唯一(?)、日本では超人気で品薄なCT125を、贅沢にも実用車扱いにしてる国があります。それが南西太平洋に浮かぶ小さな島国のニュージーランド。だいたい、ニュージーランドでの車名は「CT125ファーム」ですから。Farmですよファーム、意味は「農場、農園」ですからね。泥にまみれる農業バイクとして使い倒してるんですね。

画像2: 日本では品薄で納車待ちの人気モデルなんですが…

上の画像は公式ホームページ上でのイメージ画像ですが、日本ではCT125・ハンターカブを湖畔に止めて、タープ張って焚き火してたりするんですよ。他にもキャンプとか釣りとか、アウトドアレジャーをイメージした、なんだかカッコいい雰囲気のが並んでる。タイでもだいたいそんなイメージね。ちなみにアメリカではそういうイメージ画像がなかった。

画像3: 日本では品薄で納車待ちの人気モデルなんですが…

しかしニュージーランドでは、長靴履いた小太りなおじさんがモデルでしてね。農場の中とおぼしき所で、おっかなびっくり斜面を下ってみたり…。

画像4: 日本では品薄で納車待ちの人気モデルなんですが…

牧柵越しに牛たちを眺めてみたりと、遊びの要素なんか微塵も感じさせないんだけど、妙な脱力感に満ちた雰囲気です。もうちょっと構図考えろよ、とか言いたくなったりもしますが、こっちの無手勝感というか、緩さの方が好きですね、個人的には。

画像: ホンダ CT125ファーム(ニュージーランド仕様)

ホンダ CT125ファーム(ニュージーランド仕様)

で、このニュージーランド版「CT125ファーム」、エンジンとかフレームなどのメカニズムやCT110を想わせる独特のスタイリングなんかは、見ての通り他の国に向けたモデルとそんなに変わらないです。でも、そこかしこに、ハードな農業の現場向けの改良が施されてる。

画像2: ホンダ CT125・ハンターカブ(国内仕様)

ホンダ CT125・ハンターカブ(国内仕様)

「CT125ファーム」は、前後タイヤにオフロード向けのものを標準で装着。フロントフェンダーも形状自体は同じだけど、泥詰まりなどを防ぐために装着位置を上にしているのが目立つポイント。ヘッドライト上のキャリアも標準装備となっていて、真横からの画像ではわかりにくいけどハンドガードも付いてる。あと、センタースタンドを省略しとります。

画像5: 日本では品薄で納車待ちの人気モデルなんですが…

逆に言えば、アップマフラーとかリアの大型キャリア、ハイマウント吸気ダクト、LED化された灯火類なんかのCT125の特徴的な部分はそのままなんですが。

画像: ホンダ CT110(国内仕様)

ホンダ CT110(国内仕様)

つらつら考えるに、CT125は、ニュージーランドでもやっぱり「CT110」の再来なんだねぇ。日本国内向けにはCT110は1981年に短期間で販売終了。しかし後になって逆輸入車の個性的なスタイリングがマニア的な人気になり、CT125の復活に繋がった訳です。だけどニュージーランドでCT110といえば、使い勝手の良い「農業バイク」として、プロの仕事人の肌感覚で長年高く評価されてたんでしょう。

だからCT125が出てきても、日本みたいにバイク知らない人が「なんかレトロでお洒落!」と飛びつくんじゃなくて、現場のおじさんたちから「おっ、あの便利なバイクが新しくなったのか」という目線で注目されて、結果として「CT125ファーム」が誕生することになるワケで。ニュージーランドでルーツに近い使われ方に回帰した、ということですかね。まあ本来そういう用途のために造られたものを、これだけしっかり再現すれば、意図しなくても使いやすくなるんですかねぇ。

画像: ホンダ XRM125(ニュージーランド仕様)

ホンダ XRM125(ニュージーランド仕様)

なんせニュージーランドは輸出の3割が農業製品というんだから、主要な産業は農業。俗に「総人口より羊の方が多い」というくらいで、広大な農場や牧場がたくさんある割に、人口は日本の1/20以下の約500万人と非常に少ない。だから省力化のために昔から盛んに農業バイクが使われてたお国柄。

なんでホンダのラインナップの中に「ファームバイク」というカテゴリーがあったりする。そこではCT125ファームの他、以前紹介したXR190なんかが売られてるけど、さらにフィリピンで大人気のオフロード風アンダーボーンモデル「XRM125」を輸入して売ってたり。アンダーボーンの125っていう意味で同ジャンル内でCT125ファームと丸被りだよ、いいのかね? 一体どっちが売れてるんだろうか?

文:小松信夫

画像: 【動画】2021 Young Farmer of the Year - Celebrating 51 Years of Honda Sponsorship www.youtube.com

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